最愛の元ご主人様、サトシへ
サトシさん、お久しぶりです。
君はもう、僕の事なんかとっくのとうに忘れていると思うけど、覚えていてくれているかな。
僕がご主人様とトキワの森でお別れしてから、もうすぐ17年になるね。
今から16年以上前の寒い冬のある日、御主人様がマサラタウンからオレンジ諸島へ旅立つ事が決まって、
僕はピジョンからピジョットに進化した。
僕はあの時、僕も生まれ故郷のカントー地方を離れて、新たなる冒険の旅に出られると
楽しみにしていたのに、君は僕をトキワの森に住む沢山の弟達を
オニドリル達から守らせるために「俺は用事を済ませたら直ぐ帰ってくる。お前はここに残れ。
必ず迎えに行くからなピジョット!」言い残して別れた・・・。
僕はこの悲しい出来事がつい昨日のことのように思い出されるよ。
ねえ。ご主人様。僕は君とお別れしたあの日から毎日朝から日が暮れるまで、
トキワの森やマサラタウンを飛び回っては、今日まで君が帰ってくるのをずーっと待ち続けているんだ。
勿論、ご主人様に言われたとおり、沢山の弟達をオニドリル達から守るという
大事な仕事は果たしているんだけど、僕は毎日ご主人様のことが忘れられなくて、
毎日涙が止まらないんだよ。辛いよ。悲しいよ。
君がまだ駆け出しトレーナーだった頃、僕と出会ってから毎日いろんなことがあったよね。
辛い事も沢山あったけど、僕は君の仲間になれて本当に幸せな気持ちで一杯だった。
あの突然のお別れの日が訪れるまでではの話だけど。
ねえ。ご主人様。僕とお別れしてから、もうすぐ17年も経つのに、どうして
いつまでたっても迎えにきてくれないの?
あの時、必ず迎えに来るって僕と約束したよね。どうして約束を破るのかな。
こんな僕でもご主人様に手塩にかけて育てられた大切なポケモンの1匹なんだから、
仲間との約束を守らないなんて、僕は最低だと思うな。
ここでお話は変わるけど、君は「忠犬ハチ公」っていうかわいそうな犬の話を知っているかな。
ハチ公はね、ある日ご主人様だった大学の先生が病気で急に死んで、ハチ公は
彼の死後も亡くなった事がずっと信じられずに、ご主人様の生前に毎日迎えにいっていた
渋谷駅を毎日訪れては、死んだはずのご主人様の帰りを十年間も待ち続けて、
とうとう死んでしまったんだ。今の僕もまさに同じような感じで、ご主人様もいつか
死んでしまうかもしれないんだよ、人は誰でもいつか死んでしまうんだよ。だけど
僕がご主人様より先に天国に行ってしまうかもしれないんだけどね。
僕がこのままトキワの森で死んでしまったら、メガシンカの夢も叶わない。
だから、一生に一度のお願いです。こんな僕を一日も早く、トキワの森まで
迎えに来てほしいんだ。ご主人様もご主人様で忙しいだろうから中々そんな事は
難しいかもしれないけど、僕は今でも、ご主人様とまたお会いできる日を楽しみにしています。
又ね、バイバイ
ピジョット