――捨てられてからもう3週間。
いきなり放り出された野生の世界にも慣れてきた。
今の家、森のなかにある洋館にきたトレーナーのポケモンからエネルギーをすいとりながら思う。
孵してくれたトレーナーは、今どこにいるだろう。
最初は地獄だった。
なんとかほかのノーマルや格闘タイプのポケモンを怪しい光で混乱させて倒し、
死なない程度に生命エネルギーを吸収して生き延びることはできた。
僕は、不思議な子だった。
なぜか色々な技を使うことができる。
卵を孵してくれたトレーナーが、技がなんとかと言っていたから、
多分父が覚えていたのだろう。
顔もみたことない、父が。
僕が生まれてすぐ、僕の性格をみて捨てたトレーナー。
寂しがりだと知っていながら、慈悲もなく捨てたトレーナー。
それでも、理由があるんだ、そう思って頑張ってきた。
試されてるんだ、そう思って生き延びてきた。
一緒に捨てられた子達の大半は、そのまま風に流されたり、
他のポケモンにやられたりして居なくなった。
それでも諦めずに、自分を磨いて、進化もした。
強くなった姿を見せようと思い、親のトレーナーを探して夜外をうろつくこともあった。
見つかることはなかったが、それでも何度も探しにいった。
どうやらこの辺りに来ているらしいと聞いたとき、正直笑いたかった。
でも皆の深刻そうな顔をみると、そんなことはできなかった。
次の日、トレーナーはきた。
見つけたと僕に報告が入る。既に最後まで進化しきっていた僕は皆の頼りだったみたいだ。
嬉しさ一杯に、彼の前に飛びだす。
強くなった僕の姿をみたら、トレーナーも捕まえてくれるだろう。そう思っていた。
「いけ、ゴース」
昔の僕と同じポケモン。
しかし姿形が良く、さらに言えばどこか強そうだった。
なんとなく腹が立ったので、シャドーボールを投げたが、すぐに交換され、意味がなかった。
出てきたキュウコンに攻撃が当たる。手加減していたせいもあるのかほとんど効いていない。
「キュウコン、火炎放射」
トレーナーが問答無用で攻撃をしかけてくる。
まさか攻撃されるとは思っていなかったので、避けられない。
火に巻かれ、身を焼かれて。
それでも、最後に一目みようとトレーナーを見ると。
こちらを全く気にせず、ポケッチを操作していた。
……今更、僕は気付いた。
――ああ、僕はいらない子だったんだ……
最終更新:2007年10月19日 20:07