孵化して、逃がして、その繰り返しでかなりの数のポケモンを逃がした。
逃がしたポケモン達がどうなったかなんて知らない。
LV1だったし、野生界の厳しさに耐えられずもしかしたら・・・
なんてことも稀に思ったが、そいつらがどうなった、とかは正直どうでもいい。
ただ自分の望むポケモンさえ生まれてきてくれれば。
そう思いながら孵化して、やっと自分の望み通りのポケモンが孵った。
やっと生まれてきたそいつを大切にボールに入れ、俺はズイの町を去った。
―それから暫くして、俺はノモセにいた。
大湿原があり、海も近いこの街の雰囲気がどことなく気に入ったからだ。
そして、あのやっとの思いで生まれてきたポケモンは立派に成長していた。
この時、逃がしたポケモンの事は完全に忘れていた。
ある真夜中のことだ。なんとなくテレビをつけて、
チャンネルを変えていると、一つの番組が目にとまった。
『シンオウ・ナウ!現在シンオウで起こっている様々な事をお伝えします!
えー・・・今、213番道路では・・・』
「え・・・」この番組を見て、最初に出た言葉がこれだった。
ズイの町からノモセまであいつ等が来たっていうのか・・・?俺を追って・・・?
「嘘だろ・・・!?」そう言うと、俺は慌てて外に飛び出し、
シンオウ・ナウで報じられていた213番道路へと向かった。
誰でもいい、嘘だと言ってくれ!そんなことを考えながら。
213番道路は、ひっそりとしていた。・・・やっぱり何かの見間違いだったんだ。
そう自分に言い聞かせて、落ち着こうとするが、何故か震えが止まらない。
―帰ろう。そう思った時だ。ガサり、と草むらが揺れた。
…恐る恐る振り向く。そして、見たものは。
俺を取り囲む、沢山の赤い眼、だった。
それが、俺の逃がした大量のアブソルの眼だとすぐに分かった。
「ひっ・・・!」思わず悲鳴をあげる。アブソルは少しずつ俺に近づいてくる。
「やめろっ!近づくな!!」そう言っても、尚もアブソルは近づいてくる。
「頼むから・・・」もう殆ど泣き声になっている。赤い眼はすぐ目前に見える。
「ごめん・・・俺が悪かったか・・・」言い終わらないうちに、何だか意識が遠くなった。
大量のアブソルは、俺が眼を閉じる最後まで、冷たい眼で俺を見据えていた。
その鋭い鎌を、光らせて。
作 初代スレ>>618-619
最終更新:2007年10月20日 15:04