パリン、という音がしたかと思うと、
『わぁ・・・!遂に念願のこいつをゲットしたぞ!』という声が辺りに響いた。
生まれてきたポケモンはラプラス。このトレーナーはずっとラプラスが欲しくて、
友人に頼み込んでタマゴを一つ譲って貰い、今まさにそのラプラスが生まれてきたところだった。
『やった!俺はお前を絶対に大切に育てるからな!』
そう言うと、トレーナーはラプラスの頭を軽く撫でた。

ラプラスは知能が高く、人の言葉が理解できる。
そのことを知っていたトレーナーは、ラプラスに自分の知っている歌を教えた。
理由は無く、ただ、なんとなく。ラプラスはその歌を理解し、覚えたのだろうか。
そのことは分からないが、ラプラスは沢山の愛情を受けて、見る間に成長していった。

数年が経った頃、ポケモンを悪用するギンガ団という組織の活動が活発になっていた。
他人のポケモンを盗み、悪用する・・・その組織の被害は色々な町へと急速に広がっていた。
盗まれたポケモンがどうなるのかは・・・考えたくも無い。
いつ、その組織が自分のいる町にやってくるか分からない。もしかしたら明日の可能性だってある。
そう思ったトレーナーはある決意をした。

トレーナーは大切なパートナーであるラプラスを連れて、海へ来ていた。
『出てきてくれ、ラプラス。』
ポンッ、という音がしたあと、ラプラスは砂浜の上にボールから出た。
『聞いてくれ・・・今、ポケモンが盗まれて悪用されるという事件が起きているらしいんだ・・・』
ラプラスは話を聞いているらしく、軽く目を伏せてトレーナーの話を聞いている。
『いつそいつ等がこの町へ来るか分からない・・・
俺は、お前をそんな目に逢わせたくないんだ・・・。だから、』
ラプラスは意味を理解したらしく、俯いてしまった。
『俺だってお前とは離れたくないんだ・・・!俺がもっと実力のあるトレーナーだったら・・・』
長い間ずっと一緒だったパートナーと別れるのは辛い。
だけどそれ以上に、大切なパートナーが自分の知らない人間に、知らない土地で
悪用されてしまう可能性があることの方が辛かった。
ラプラスは、大好きなトレーナーを困らせたくなかったし、
自分のことを想っての行動だと分かっていた。
何より、自分も辛い分、トレーナーも辛いことを知っていた。
そして、ラプラスは静かに海を沖へ向かって泳ぎだした。
浜辺ではトレーナーが静かにラプラスを泣きながら見つめていた。


私に愛情を注いで、大切に育ててくれたトレーナーさん、本当に有難う御座いました。
あの辛い別れの日からどれ位の時間が流れたのでしょうか。
あの辛い日のすぐ後に、その組織が町を襲ったそうですね。
私は今、広い海を宛ての無いまま漂っています。
いつの日か、また何処かで大好きな貴方に逢える事を祈り、
貴方が教えてくれた歌を、歌いながら。


作 初代スレ>>650-651

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最終更新:2007年10月20日 15:09