カリコリ・・・ガリッ・・・。
今日も何とか食い繋げたか。
薄暗い闇の中で、俺はそれに貪り付く。
俺はコイキング、人間にそう呼ばれる魚ポケモンだ。
俺がこの小さな池に放されたのはいつの事だったか。
人間は俺の個体値がどうこうと言っていた。
それが何なのか、俺の知った事ではなかったし、その時はただ自由になれた事に喜びを感じていた。
しかし、それは地獄の始まりでしかなかった。
俺が池に放された時、既にそこには先客達がいた。
見渡す限り犇く、無数のコイキング。
俺は抵抗する術もなく、その空間に放り込まれた。
皆、殺気立っていた。
これだけのコイキングが生きるためには、この池は明らかに狭すぎた。
酸素濃度の低下に食物の不足。
次から次へと迫る同属達の口。
いつしか俺も、彼らと同じ様に大きく口を開いていた。
ガリ・・・ゴリ・・・。
ほとんど鱗と骨でしかないそれを、俺は今日も貪っていた。
あれからどれだけ月日が流れたのか。
池のコイキングは大分減っていた。
それでもここは、俺達が住むにはまだ狭すぎる。
それだけの数のコイキングがここに放されていたのだ。
骨と皮、栄養価の極めて少ない同属達を食べ続けた結果、
生き残った者達の腸等の消化器官は栄養吸収率を上げるために肥大化した。
それらを収納するため、体の大きさも通常のコイキングの2倍、3倍、4倍と大きくなっていった。
そんなある日、奴は再び俺の前に現れた。
俺をここに放した『あの人間』だ。
『あの人間』の隣に一人の少年がいる。
彼の手には俺達を捕獲するのに使うボールが握られていた。
「いけ!ピジョット!」
少年はそう叫ぶとボールを投げ、一羽の鳥ポケモンが飛び出した。
ピジョットという鳥ポケモンは池に急降下すると、水面近くで跳ね回る同属に爪を立て、
再び空高く舞い上がっていった。
「素早さの努力値を伸ばしたいなら、コイキングは雑魚だから丁度良い」
「努力値を稼ぎたいなら不思議な飴は使わない方が良い」
「ここのコイキングは通常のより大きいから、倒した後ピジョットに食べさせれば餌代が浮く」
『あの人間』は少年にそんな風な事を話していた。
俺の周りで、同属達は一匹、また一匹と空へ連れ去られていった。
数日が経った。
あれから毎日、少年はピジョットを引き連れて俺達を狩りにきていた。
あれだけ沢山いた同属の数は目に見えて減っていった。
栄養価の低い獲物なのだから、それなりの量を獲らないと体の維持ができないのだろう。
その事に関しては俺達と何ら変わりがない訳だが、
決定的に違うのは俺達は生きるために食べるのに対し、奴は道楽で食べているという事だ。
しかしどう足掻こうとも、俺達の力ではあの鳥には勝てない。
俺は、いつ自分の番が来るのか、そんな事を考えながら同属を喰らっていた。
いつしか、俺が最後の一匹になっていた。
作 初代スレ>>733-734
最終更新:2007年10月20日 15:14