ふしぎだなぁ。
空はすごくきれいなお星さまが輝いている。いつもおさんぽするお昼にはみえないのにね。
今日はいつものおさんぽはなくって、夜のおさんぽになったからぼく、初めてきがついたよ。
ねぇ、ますたー。どうしてだろう。
ぼくが振り返ったときには、ぼうしのかげでますたーのかおはみえなかった。
なんだか今日のますたーはヘンだね。ぼくを見て、それからお財布をみて、はぁって息をつくの。
そのときのますたーはさびしくみえて、ぼくはとってもせつなくなるんだ。
ごめんね。ぼくはなにもできなくてごめんね。はげましてあげたいのに、それもできない。
ああ!そうだ、ますたー。このお星さまをみてれば、きっとげんきになれるよ。
ねぇ、みんなでみようよ。ぼくのきょうだいたちといっしょに。きっと楽しいよ!
つぎの子もまたうまれるって、いってたよね。つぎの子はどういう子なのかな?
ねぇ、ますたー ...? あれ?
ぼくがますたーをみあげていたら、急に雨がふってきたみたい。
それはひとつぶ、ふたつぶとだんだんふえてきてぼくのほっぺにおちてきた。
たいへん。ますたー、はやくかえらないとかぜをひいちゃうよ。もっとげんきがなくなっちゃう。
ますたーはわらっているほうがすてきだよ。ぼく、わらってほしいよ。
どうしたらますたーはいいおてんきになれますか?
ますたーがそっとぼくのあたまをなでた。それがいつもよりずっとやさしくて、ながくて。
ぼくはなんだかむねがぎゅってしめつけられるみたいで、体じゅうがざわざわするの。
どうしたんだろう。いつもならとってもうれしいのに、今日はすごくざわざわってするの。
ますたーはもっていた小さなリュックから、ひとつのきのみをとりだした。
ぼくのだいすきなチーゴのみ。にがいのがだいすきだったぼくのために、
ますたーがそだててくれただいじなきのみ。それをぎゅっとぼくの手に握らせると、
ますたーはちいさくつぶやいた。
『ごめんな。ほんとうにごめんな』
そうつぶやいて、ますたーはかけだしていきました。ふりかえらずに。
――――いかないで そうさけぼうとおもったぼくのくちから声は出ませんでした。
ああきっとこれでよかったんだ。おほしさまが雲にかこまれて、すこしかげりました。
うすぐらいあかりのなかで、ぼくはぼんやりおもいました。
そだてるのが苦手なマスターががんばって作ってくれたチーゴのみは、ぬれていました。
ごめんねますたー。ぼくがもっとやくにたてればよかったんだよね。
ねぇますたー。ぼくがおおきくなってあなたのやくにたてるようになったら、
またぼくをひろってくれますか。みつけてくれますか。ぼくはぜったいにみつけます。
こんどはきっとやくにたって、あなたがはれぞらになるのを見守りたいから。
作 初代スレ>>828,830
最終更新:2007年10月20日 15:19