空を飛んだゆっくり

「ゆっくりしていってね!!!」


誰も答える事のない我が家での起床
もう家族とは二度と会う事はないかもしれない
住み慣れた木は雷で焼けてしまった
家族は散り散りになり新天地を探す旅に出てしまった
家族が旅立った後も焼け跡から焦げてしまった餌を引っ張り出して食べていたが底を尽きてしまった
もうここは家族で住んでいた場所ではないと実感させられる
今彼女は家との最後の時間をすごしていた


「ゆぅ・・・きさん、いままでありがとうね・・・」
ギシッ!!・・

「ゆゆ!?いたいの?だいじょうぶ?」
ギシッ!!・・ギシギシッ!!

「ごめんね!!れーむはもういくね!!」
メリメリッ!!・・・ズズーン!!

「ゆゆぅ・・これからどうしよう・・・れーむもみんなみたいにゆっくりぷれいすをさがしにいくよ!!!」

「ゆゆ~♪もりのなかならきっとすぐにみつかるよ!!!・・・あのきなんかよさそうだよ!!!」

「ゆっくりはいるよ!!!ゆゆ~♪なかもひ・ろ・・い!?」

『ゆっくりしていってね!!!』
『『『ゆっくちちていってにぇ!!!』』』

「ゆ?れーむのゆっくりぷれいすでなにしてるの?」

『ここはまりさたちのおうちだよ!!!さっさとでていってね!!!』
『『『いっちぇにぇ!!!』』』

「ゆゆ~・・・ここはあきらめるよ・・・」


しかしどこに行っても同じだった
よさそうな木の洞や洞窟にはもうすでにゆっくりが住んでいたのだった
そして餌場探しも似たようなものだった


「おなかすたからごはんをみつけにいくよ!!!」

「ゆ~♪むしさんみーつけた♪むーしゃ♪むーしゃ♪しあわ・・せ?あれ?」

『むーしゃ!!むーしゃ!!しあわせーー!!!』

「ゆっ!!それはれーむがさきにみつけたんだよ!!!ゆっくりかえしてね!!!」

『はやくたべないほうがわるいんだよ!!!ゆっくりりかいしてねっ!!!』

「ゆぅ~・・・ひどいよ・・ゆっくりしたいだけなのに・・・」


こんな調子で過ごしていたある日の事、れーむはかつての家族の一人と偶然再会した
しかし、再び会った姉の姿は変わり果てていた
目は血走り、頬はこけ、髪や皮にも汚れや傷が目立った


「ゆゆっ!?おねーちゃん!!!ひさしぶりだね!!!」

『れーむ?・・・・・まだいきてたんだね』

「みんなはいまどうしてるの?ゆっくりあわせてね!!!」

『どうしてるかなんてしらないよ・・・それよりれーむ、どこかいいえさばでもしってるの?』

「ゆゆ?しらないよ!!どーして?」

『だって、そんなにぷっくりしてるし・・・かみやかわのつやだって・・・』


そんなやり取りの後彼女は今までの自分の暮らしを姉に話した
姉は終始興味無さげに聞いた後ただ一言『ゆっくりがんばってね』とだけ言い残しどこかに行ってしまった
体の丈夫な姉でさえあの有様だ、もう妹や赤ちゃんとは会えないだろう
その現実が今の彼女には重過ぎるものだった


「ゆっくりしていってね・・・」

『ゆっくりしていってね!!!』
『『『いっちぇにぇ!!!』』』

「ゆゆ?おかーさん?みんな?どーしてここにいるの?」

『ゆ~?なにをいってるの?ここはみんなのゆっくりぷれいすでしょ?』
『『『ゆっくちぷれいしゅだよ!!!』』』

「じゃあ、れーむもここでゆっくりするよ!!!」

『れーむにはまだはやいよ!!!ゆっくりもどってね!!!』
『『『もどってにぇ!!!』』』

「・・・・・おかーさん!!!・・・・ゆめだったの?」

「みんなとあいたいよ・・・おうちかえりたい・・・」

「さむいよ・・・あめさん、はやくやんでね・・・」

「おなかすいたよ・・・おみずのむよ・・ごーく、ごーく、しあわせ・・・」

「ゆっ・・ゆっ・・・さみしいよぉ・・・」

「あめがはれたらゆっくりぷれいすをめざすよ・・・がんばるよ」


姉と別れた数日後の朝、森の広場の枯葉の中で彼女は目覚めた
ゆっくりプレイスとはいえないが雨風が凌げるだけましである
今は目だけ隠れないようにして枯葉に埋まっている、外敵と餌を見逃さないためである
常に辺りを見回し、少しの物音にも敏感になり、精神的に磨り減っていった
数日前に見た姉の姿が今の自分と被る、その現実から逃れようと力を振り絞る


「ゆっくりねたらすこしうごけそうだよ!ゆっくりぷれいすをさがすよ!!!」

「ゆゆっ!!にんげんのさとにでちゃったよ!!どうしよう・・・」

「しょうがないね!!あそこでゆっくりさがすよ!!!」

「だれでもいいよ!!!かわいいれーむをひろってね!!!」

「れーむにはおうちがありません!!!だからたすけてね!!!」

「ごはんでもいいよ!!!なにかたべさせてね!!!」

「ゆ~♪ゆゆ~♪、おうたもうたえるんだよ!!!すごいでしょ!!!」

「むししないでね!!ひとのはなしをきいてね!!!」

「おねがいしますぅぅぅ!!!むししないでくださいぃぃぃ!!!」

「ゆぅぅぅ!!!だれもいいからおへんじしてね!!おはなししようね・・・」


物乞い等で里の人間に声をかけること数刻、辺りには夕闇が下りてきていた
夜になれば妖怪の時間が来る、いつゆっくりできなくなっても文句は言えない


「ゆゆっ!!おそらがくらくなってきたよ!!ゆっくりできなくなるよ!!!」

「ゆっ!!ここならだいじょうぶだね!!・・・ゆっくりぷれいすみつからないかな」

「おかーさん、おとーさん、みんなどこにいっちゃったの・・・・」


「ゆっくりしたいよ・・・」

「きょうこそゆっくりぷれいすみつけたいよ・・・」

「ゆゆ?おいしそうなにおいがするよ!!!ゆっくりさがすよ!!!」

「ゆ?ゆっ?ゆゆっ??ここ・・かな?」

「わからないけどゆっくりはいるよ!!!おなかぺこぺこだよ!!!」

「ひろいよ~!でもくらいよ!!まんまりみえないよ!!!」

「ゆっ!!たべものがおちてるよ!!!むーしゃ!むーしゃ!・・・しあわせぇ・・・」

「ゆぅぅぅぅん!!やっどゆっぐいでぎるよぉぉぉぉ!!!」

「いっぱいたべるよ!!!むーしゃ!むーしゃ!もっとたべるよ!!!」

「こんなところにかいだんがあるよ!!!ゆっくりのぼるよ!!!」

「ゆっ!ゆっ!ゆっ・・っと、ゆっくりついたよ!!!」

「うえにはなにがあるの『う~?』か・・な?」

『なんでゆっくりがそとにいるんだどぉ~?』

「れ、れ、れみりゃーー!!!」

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最終更新:2011年07月06日 01:33
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