【まなんだんてを偲ぶアナザーストーリー】


 唐突に、保健室の扉が開いた。
 そこには、馬の顔をした学生が立っていた。

「ヒヒーン!」

 その馬面学生は両手を挙げていなないた。

「きゃああぁー!」
「に゛ゃうううっ! げぼっ……」

 まなはありったけの声で叫び、ありったけの力でandanteを抱きしめた。

「あははー。驚いたか。倉庫でおもろいもん見つけたから試してみたんやー」

 geminiは馬面のお面を外しながら笑って見せた。

「もうー、ばかっ!」

 まなは目に涙を浮かべて抗議した。あんまり騒ぐのはよくないと言いつつ、ネタを見つけたらやらずには居られないgeminiを心底恨んだ。andanteは、まなの胸の中でぐったりしていた。ぐったりというより、ぐっちゃりとしていた。

「なあ、まな……。そのandante、生きてるか?」
「え、ええ?!」

 andanteはムンクの叫びのような表情のまま、凍りついたように動かなかった。

「あんだんてが死んでんでー! いやー、コレは、不幸な事故やなあ。あはは……。もったいないから、晩飯は猫鍋にしよか……」

 geminiの不謹慎なシャレが、打ちのめされたまなの心をずたずたにした。
 まなは躊躇無く、geminiをリボルバーで打ち抜いた。

「andanteさん、ごめんね……」

 そしてまなは、リボルバーをくわえ、最後の力を振り絞ってその引き金を引いた。

                                 【残り10人】



「……うわあっ!」

 まなはベッドから飛び上がった。

「どうしたにゃ? だいじょうぶにゃ?」

 まなの横で寝ていたらしいandanteが、目をしぱしぱさせながらまなを気遣った。

「ひどい夢、見た」

 はらはらと泣くまな。
 そんなまなの涙を、andanteは自分のおでこで拭いてあげた。
 まなはandanteをきつく抱こうとしたが、背中をなでるだけにしておいた。

「gemini遅いにゃあ。どこまで見回りにいったんだろ」

 andanteがつぶやくと、放送スピーカーのスイッチが入る音がした。

『07:geminiが死亡しました。残り、12人です』

 まなとandanteは目を合わせたまま、微動だに出来なかった。

                                 【残り12人】

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最終更新:2008年10月11日 00:13