「いやー、マサカsnoweさんと合流出来るなんて」
「何でAICEさん、芋ジャージなんです? セーラー服じゃなくて」
01:AICEと08:snoweは和やかに家庭科室で談笑していた。
机の上にはクッキーとティーカップが二つ載っている。
「こう、正直自分でも無いなと思ったんで、更衣室で見つけたんで着替えました」
「成る程。似合ってますよAICEさん」
「snoweさんそれ褒めてませんよね」
「いや、えーっと。何となく言っただけです」
「そうですか、何となくですか。snoweさんは白いなあ」
二人は和やかに喋りながら、クッキー食べ食べ紅茶を飲む。
「それにしても、何でsnoweさんはここに?」
「普通、みんな急いで校舎から離れようとしますよね。だったら逆に、しばらく校舎で身を隠す方が安全だと思ったんですよ」
「ナルホド」
「AICEさんはどうして校舎に?」
「正直この格好はないので、何か着替えないかなーと探して見つけて着替え終わったら、丁度snoweさんと鉢合わせしたって言う」
「大丈夫、提督さんよりは似合ってましたよ、制服」
「あれはあれで凄く似合ってると言うか何と言うか、snoweさんは白いなあ」
AICEは乾いた笑いを誤魔化すよう、紅茶を飲む。
「しかし、ここで隠れている内に上手いこと終わらないかな」
「流石にそれは都合がよすぎるでしょう。まあ人数減ったらアナウンスがあるみたいなんで、残り8人とかになったら動き出さないと不味いと思いますよ」
「逆に言うなら、残り8人ぐらいになるまでは隠れていても大丈夫ですよね」
「まあウン、そうだけど。と言うかsnoweさん、humaさんが殺されたって言うのによくそんなクッキー食べられますね」
「甘い物は別腹ですから。と言うか、AICEさんも結構食べてるじゃないですか」
「いやマア、別にhumaさんを忍んでクッキーを食べないでいても、それでhumaさんが浮かばれるかと言えば別にそんなことはねえよなと言うか」
「AICEさんは白いですね」
「snoweさんは白いなあ」
こうして、家庭科室では平和なお茶会が続いていた。
【残り18人】
02:綾乃は一人、森を行く。
信じられるものが誰もいないからだ。
左手にはバックパックを持ち、右手には怪電波銃を携え。
「……これ、射程距離とかどんなもんなんだろ」
『20mぐらいかな』
「あ、どうも」
綾乃は心臓を押さえながら、お礼の言葉をどうにか口に出す。
「そっかー、20mかー。……そしてこれ、無線機能とかついてたんだ」
『じゃないと、変なことしようとしてた時爆破出来ないじゃん』
「……naviaさんこえー」
『こわくねー』
いやいや怖いですから。綾乃は心の中でそう呟きながら歩く。
「もしかして、humaさんは変なことしたんですか?」
返事はない。他の人の状況は教えられない決まりになっているのか、そもそも武器に関してのことだけ答えることになってるのだろうか。
ぼんやりと考えながら歩いていると小川を見つけたので、近くに腰を下ろし休む。
「さて、どうしようかな」
ポケットから自分のカードを取り出して、綾乃は一人ごちる。
「あの人なら、やるしかないことはやるんだろうな、きっと」
脳裏に浮かぶのは、死を畏れずに手を挙げたその姿。
「いや、むしろ死なないことが分かってたから手を挙げた――?」
バックパックをクッション代わりに、もふもふしながら綾乃は考える。
「何にせよ、やらなきゃいけないから、やるしかないか」
溜息。そして、怪電波銃を見つめる。
「まさか、精神耐性があるエイリアンとかいないよね?」
『いないよ』
「……ありがとうございます」
綾乃は鼓動を早める心臓に手をあてながら、何とかそう言った。
「やっぱり武器に関することだけなのかな」
その答えは、首輪からは返ってこなかった。
【残り18人】