それは神の悪戯か、悪魔の導きか。
夕暮れの森の中、二人は出会ってしまった。

「は、はぐりん?」
「あ、あやのん?」

02:綾乃と14:hungryusunは、お互いのことをそんな名前で呼んだ。

「何であやのん、学ラン着てるの?」
「……誰かの悪意だよ。はぐりんだって、どうして今更セーラー服とか着てるの?」
「……」
「……」

無意識に、お互いの傷を付き合ってしまう二人。
油断無く銃を構えながら、二人は出方を探り合う。

「はぐりんは村人だよね?」
「そういうあやのんは?」
「えーっと、カード見せてくれるかな」
「あやのんが見せてくれたら見せるよ」
「……」
「……」

二人に緊張が走り、冷や汗が肌を伝う。

「それじゃあ、一緒に出すってのはどう?」
「一緒に弾が出そうだから怖い」
「うん、私もそう思った」
「ですよね」
「……」
「……」

気不味い沈黙。
このままでは、共倒れも有り得る。
綾乃はそう考えた。

「じゃあ、私が先にカードを見せるから。それでどう? ね」
「……それじゃあ、とりあえず見せて下さい」
「はい」

綾乃はポケットから村人と書かれたカードを取り出すと、それを見せる。

「でも、人狼はhumaさんを殺して村人カードを既に奪ってると思います」
「……いや、それは私も考えたけど」
「だから、あやのんは信用出来ません。むしろ誰も信用出来ません。信じられるのは自分だけです」
「私は、今の反応からはぐりんが村人だってことは分かったよ……」
「そうやって油断させて、taraさんや提督さん、xiwongさんやeuroさんを殺した可能性もありますよね?」
「その推理は間違ってるよ」
「……いいんです、私はポンで!」
「開き直った!?」

hungrysunは、身を翻して走り出す。

「ああ、もう……仕方無いな」

そして辺りに銃声が響いた。

【残り14人】


酒場で、男爵は酒を飲んでいた。
一真は、あり合わせの材料で夕食を作ろうとしている。

「……焼き肉のタレをご飯にかけたらむっちゃ美味いかと思ってやってみたんですけど、不味いです」
「……。飯を足して胡椒を振って、水を加えて中華鍋で炒めろ。油の代わりにマヨネーズを敷いて」
「分かりました」

男爵は呼吸をするように一真を顎で使い、ちびちびと酒を舐める。

「さっき、まとめて三人死んだだろ」
「あ、はい」

中華鍋を振る一真に、男爵は話しかける。

「マシンガンだとか、ショットガンとか、その手の大物を持つ奴には気を付けろ。まず人狼と思って間違いない」
「その人が、三人を殺したんですか?」
「乱戦の末、そうなった可能性もあるが……相打ちとかも有り得るが。普通に考えたら、人狼はそういう殺戮兵器を持ってると思って間違いない」
「ほむ」

一真はじゃーじゃーと具無しチャーハンを炒め、皿に盛る。

「出来ました」
「ご苦労」

それを肴に、男爵はちびちびと酒を舐める。

「おお、むっちゃ美味い」
「まあまあだ」

一真はそれを食べながら、カクテル用のオレンジジュースを飲む。
そして皿が空になる頃、アナウンスが入った。

『14:hungrysunが死亡しました。残り、13人です』

「……うわぁ」
「一人は伯爵で、一人はマシンガンかショットガンを持った奴。最後の一人は普通に短銃を持った奴かな。人狼は大体絞れた」
「それなら、そろそろ動きますか? このまま何もしないと、俺達の首輪も爆発する可能性が」
「そうだな」

男爵は考えるようにして、一気にグラスの中身を空にする。

「……メンドイ」
「……ですよねー」

男爵は村人と印刷されている上に、油性マジックで狩人と上書きされた自分のカードを見ながら氷を噛み砕いた。
やがて日が落ち、夜になった。

【残り13人】

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最終更新:2008年10月11日 00:42