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「まあ、スタート地点に戻ってる奴は他にも居るだろうな、とは思ってはいたが」

伯爵はクイ、とサングラスのずれを直して紅茶に口をつける。

「まさか最初から校舎から出てない連中がいるとは。灯台最も暗し作戦か」
「ハハハ、何か成り行きでそんなことに」

伯爵、有理、AICE、snoweの四人は家庭科室で紅茶を飲んでいた。

「ところで伯爵さん、人狼は誰だと思いますか?」
「一人はhumaだった」

snoweの質問に、伯爵は涼しい顔で答える。
偽りの和やかさが、一気に凍り付くのを三人は感じていた。

「俺は村人だぜ! とカード見せたらじゃあ死ね! と突っ込んできたので返り討ちにした。そうしたら奴のバックパックからこれが出てきたな」

伯爵は、ゆっくりとした動作で人狼と書かれたカードを放る。

「いや、マサカhumaさんが……」
「まあ、人狼は後二匹だ。何か既に結構人が死んでるから、もしかしたら残り一匹かも知れないな」
「そうだったんですか。……humaさんが村人で、伯爵さんは人狼で、伯爵さんはhumaさんの村人カードを奪ったということも当然考えられますよね?」

snoweは、油断なく聞く。テーブルの下には、いつでも取り出せるようジュラルミンシールドが用意してあった。

「俺が人狼なら、とっくに有理を殺してるんじゃないか。と言うか、のんびりお茶なんて飲んでないよね。もし俺が人狼なら、最低でも六人まで人数を減らさなきゃいけない。最悪の場合、自分を含めて二人までだな。とても、誰かを生かす余裕なんてないと思うんだが」
「有理さんが人狼で、手を組んでいるのかも知れません」
「はっはっは、まさか。俺はともかく、有理まで人狼に見えるかい?」
「確かに、伯爵は人狼でもおかしくはないけれど、有理さんはなんかそんな気はしないなーという気もしなくもないようなあるような」

AICEは、乾いた笑いをしながら言う。

「まあ、どうせ俺が信用されないであろうことは解ってたからいいけど。二人が村人だって解って良かったよ。後は男爵、右、なめねこ、一真、まな、andanteだけかな。俺視点の人狼候補は」
「……? geminiさんや綾乃さん、xiwongさんには会ったんですか?」
「ああ、序盤にちょっとね。多分その三人が人狼って事は無いと思うよ」
「そうですか。どうしてその三人と一緒に行動しなかったんです?」

伯爵は、ぐいっと紅茶を一気にあおってから答える。

「……誰一人として、俺を村人と信用しなかったんだ。信じてくれたのは悲しいかな、有理だけだ。こう、伯爵だからこそ何でもやる、と思われて本気で全然信用されなかった。悲しいよな」
「気持ちは分かる気もします。……それで、他には誰に会いました?」
「ハングリーサンと、死体となったtaraだけかな。ハングリーサンはこう、脱兎の勢いで俺から逃げて行ったよ。ありゃ、間違いなく村人だったな。taraは、何か人狼カード握って死んでたぞ」
「え?」

がたん。snoweが思わずテーブルに乗り出し、紅茶が揺れる。

「多分、人狼がtaraをぶっ殺して、カードを交換したんじゃねーかな。だから正直、村人カードを見せたぐらいで信用しないってのは正しい。人狼は、村人の中に潜伏してる」
「……だったら」
「だからこそ俺は、多くの人間と接触して、そいつが人狼かどうか確かめてる。俺は、人の嘘ぐらい見抜けるからな。隠し事がある奴はすぐに解るんだよ。知ってるだろ?」

snoweもAICEも、何も言えずに伯爵を見る。
この男を、信用していいのかどうか。

「まあ、いいけどよ。此処に篭もってりゃ、俺が人狼を見つけ次第ちゃんと殺しておくから。ああ、俺が死んだという放送が流れたら、後は宜しくな。それまでは、隠れてるだけでいい」

そう言うと、伯爵は立ち上がる。

「あれ伯爵、どこ行くんですか?」
「トイレ」
「あ、行ってらっしゃい」

そして後ろを見せ、無警戒に歩き出す。

「伯爵さん」

それを呼び止めるsnowe。

「ん、何だ?」
「どうして有理が、AICEさんの制服を着ているんですか?」
「あ、言われてみれば」

AICEは、有理の着ているセーラー服をしげしげと眺める。

「更衣室にあったから、拝借したんだが。そうか、AICE野郎のだったか。いや、有理が途中川に落ちてな。此処には、着替えを探す目的で来たんだよ。そうしたら丁度良く制服があったもので、まあ、サイズは少しばかり大きいみたいだったけど着て貰ったんだ」
「……そうですか」

伯爵は家庭科室の扉を開けると、出て行った。

「……ねぇ、有理。今の伯爵さんの話、本当?」
「はい、本当です」
「……うん、そっか。ごめんね、疑って」
「いいえ、こんな状況ですから仕方ありませんよ」

 【残り13人】

 


「にゃー」
「ごろごろー」
「にゃー」
「ごろごろー」
「もふもふにゃー」
「ごろごろー」

一人と一匹はくつろいでいた。

「何か、こうしてると余り綾乃のことを言えないにゃんね」
「そうだにゃー」
「真似するにゃあ」
「にゃー♪」

まなは、andanteを抱きしめてすりすりする。

「……このまま、誰かが人狼を全部倒してくれればいいのにね」
「にゃー。多分世の中そう甘くないにゃ」
「うー」
「唸っても甘くないものは甘くないにゃ」

そんなことを話してた時、保健室のドアが開き、誰か入って来た。

「geminiさんお帰りー」
「あ、gemi……にゃっ!?」

そして銃声が二回響く。

『03:andanteと16:まなが死亡しました。残り、11人です』

人影はバックパックを一つ担ぐと、物言わぬ死体となったまなからコルトパイソンを抜き取り、保健室を後にした。

【残り11人】

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最終更新:2008年10月11日 00:45