ショットガンが吹き荒れ、酒場は西部劇のような惨状を呈していた。

「おい一真、なめねこ」
「はい」
「なんですか」

男爵はグラスの酒を名残惜しそうに舐めながら、言う。

「なめねこがボウガンで動きを止めて、一真があれを当てろ。解るな」
「はい」
「まあ、やれと言うならやりましょう。それで男爵は?」
「酒飲みながら幸運を祈ってる」
「……」
「……」

なめねこと一真は、目と目で「この大人は駄目な大人だ!」と会話した。

「それじゃあ、撃ち終わった瞬間にやれ。ポンプアップの隙を少しでも拡げてやるんだ。出来るな」
「バルログ使いの私からすれば、タイガーショットの隙を縫うなど造作もないこと」
「それじゃあ、行け」

壁にしたカウンターが、ゴリゴリと削れて行く。このままでは、近い内に壁を貫き蜂の巣にされるだろう。
その時、なめねこが動いた。

「!?」

その一射はxiwongの動きを一秒止めた。
そしてその一秒の間に、一真は火炎瓶をxiwongへと投げ、足下に炎が広がった。

「やべえ、外した!」
「オイ、どうすんだよ」
「このボウガンって、装填に十秒以上かかるというか、ちょっと座ったままで装填するのは難しいんだけれど」
「あ、あれ?」
「どうした」

しかし、銃撃音は止んでいる。
何が起こってるのかと、一真はカウンターからそっと顔を出す。

「あ、xiwongさんの髪に炎が燃え移って、消そうとしてます」
「それを早く言え」

男爵はアイスピックを取り出すとカウンターの影から躍り出る。

「あ……」
「悪いな」

それだけで、魔女の心臓にアイスピックを深々と突き刺した。

【残り8人】

「どうして、死亡の放送がなかったんでしょう?」

 有理は、疑問に思ったことを訊ねる。

「それはやっぱりアレじゃないか。学校使って放送してたから、燃えてしまったので誰もアナウンス出来なくなったとかそういう」

「そう考えるのが妥当ですね」

 うんうんと、snoweはAICEの仮説に頷く。
 その時。

 がさがさと、何かが近付いて来る音がした。

「snoweさん、有理さん!」

「はい、二人とも私の後ろに」

 snoweがジュラルミンシールドを構えると、茂みの中から疲れた様子の綾乃が現れた。

「あやのん!?」
「……三人の内、誰が人狼ですか。それとも、三人とも人狼ですか?」
「いや、私達は全員」
「有理さんは人狼の可能性があります。けれど、私とAICEさんは村人です」

「ってあれー!? snoweさん、それは」

 綾乃は、注意深く判断する。
 自分の推理を信じた方がいい。
 人を信用するな。

 そう自分に言い聞かせて、怪電波銃を構えたまま三人を見据えた。

「綾乃は、自分が人狼でないと証明出来ますか?」
「……出来ません。村人カードならありますけど。でも、それを言ったら三人が人狼ではないという証明も出来ませんよね」

「マア、確かにそういうパラドックスみたいなのはソレ、とりあえず落ち着いて話し合いませんかあやのん」

 綾乃は考えた。
 二人の言うことはどれだけ信用出来るのか。
 何も言わない有理はどれだけ信用出来るのかを。

 そして。

「二人が人狼だ!」

 綾乃は引き金を引いた。

 ピロピロピロという間抜けな電子音と共に発生した怪電波はsnoweのジュラルミンシールドを無視し、snoweを黒こげにした。

 

【残り7人】

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最終更新:2008年11月14日 21:43