俺はgeminiの死体から防弾チョッキを剥ぎ取ると、それを纏い、AICE野郎達三人の後
をこっそりとつけた。と言うか、geminiが防弾チョッキも無く此処まで生き延びられる訳
が無いのに、geminiの死体を漁らないとは。注意力が足りない連中だ。
何だか綾乃が出て来て、snoweを殺し、そしてAICE野郎がその綾乃を殺すという激動
の展開が起こった。AICE野郎はご丁寧にも自分の武器の弾が尽きてる事も教えてくれた。
チャンス到来。
俺は躍り出ると、AICE野郎の武器を狙って引き金を引く。この轟音、そして反動が心
地良い。狙い通りに弾が当たったが、俺は笑いながら言う。
「やべえ、外した! ちょっとこの距離はきつかったか。と言うか、或る意味狙い過ぎに
狙ってるような部分に当たってしまったな。はっはっは」
「やっぱり伯爵が人狼じゃねぇか!」
「いや待て、それだと俺が有理を殺さなかったのがおかしいだろ!」
いや、全然おかしく無いんだけど。ただ、二人を殺すと俺にとっても色々と都合が悪い
と言うか。何と言うか。
「じゃあ何か! まだ見ぬ男爵やなめねこ君、右さんやらが人狼だとでも言うのか! な
らば何故あの時私とsnoweさんのお茶会空間を燃やして逃げた!」
「どうせAICE野郎とか男爵とかが人狼なんだろ! 俺には解る! 俺と男爵が同じ陣営
になった事なんてねぇんだよ昔から! そして俺は確かにあの場に有理を置いて逃げた
が、別に校舎は燃やしてねぇ! マジで燃やしてねぇ! andanteとまなはちょっとこう
殺したんでそれ、色々こうあれがあれで逃げただけで!」
「何だよ! あれがあれって! 最早言葉になってねぇよ!」
「うるせぇ! 俺が人狼だと全て説明がつくかも知れないが、俺は村人なんだ! そうい
う訳で死ね、AICE野郎!」
「イヤだ、逃げる!」
よし、AICE野郎を追い払う事に成功した。
後は……。
「……さて、有理。お前は誰を信じる?」
「私、私は……」
と、その時。
「おい、銃声こっちの方だよな?」
「大分近いと思います」
「私に任せて下さい」
ああもう。本当、思い通り行かねぇよな……。

                                  【残り6人】

 

 男爵のディス・マシンガンが、既に弾倉が空だった。
使えない奴め。
「この人狼め! 殺すなら殺せ! しかしここでなめねこを殺そうとも、第二、第三のな
めねこが……」
「お約束のセリフを有り難う。ほらよ」
俺は胸の痛みを我慢しながら、手帳を取り出して放る。
「これは……?」
「そこには、今まで起こったであろう事とこれから起こるであろう事が書かれている。も
しお前が生き延びたら、お前、それで漫画を描け」
「ええ……?」
「お前なら行ける!」
俺はそう言うと、ラストシーンを迎える為歩き出す。
「一体どういうことだ」
「さあ。まあ、一人で無理だったらAICE野郎にでも手伝って貰え」
「何が何だか」
解らないだろうな。解る方がおかしいんだ。
俺は最初から狂っているし、気紛れだ。
別にこういうのも悪く無いだろう?
「それじゃ、あばよ」
返事は無い。
こうして俺は、決着をつける為に歩き出す。
有理と、一真を殺す為に。

                                  【残り5人】

 

 naviaが運転するヘリコプターに乗り、生存者は全員帰ることになった。勿論、爆弾内
蔵の首輪はとっくに外されているし、傷の手当てもされた上、賞金として二億五千万円ず
つ渡されていた。
「しかし、どうにも色々腑に落ちないことがあったのですが」
AICEが、重い沈黙の機内で、頑張って発言する。
「私には、何となく全てが読めて来ました。まあ、帰って落ち着いたら話すとしましょう」
「ええー。本当ですか、なめねこさん」
「本当ですとも。私は全てお見通しだったのです」
「……そうですか」
AICEは、なめねこに疑わしげな視線を向けながらそう言った。
「ねえ、一真君」
「……なに?」
有理はそんな二人を無視して、一番年の近い少年へと話しかける。
「どうしてこんなことが、起こったのかな」
「……。それは、僕にも分からないよ。でも、一つだけ確かなことがある」
有理は、黙ってその言葉の続きを待つ。
「僕達は生きている。生きているからこそ、その意味をこれから探して行ける。例え今は、
何も分からないとしても……」
そう言いながら、一真は一筋涙を零す。
つられるようにして、有理は泣き始めた。声を殺して。

 こうして人狼バトルロワイヤルは終わりを迎える。
幾つかの真実、謎は語られないまま。
けれど、それでいいのだろう。どうせ誰もが、全てを知ることなく終わりを迎えるのだ
から。

 ただ、忘れないで欲しい。
物語はエンドマークと共に終わるが、四人の人生はこれからも続いて行くということを。

 強い風が吹き、輸送用のヘリが大きく揺れた。

 

                                 【THE END】

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最終更新:2008年10月17日 00:51