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 無題



 ゼロスがコレットを抱くとき、彼はいつも臆病になる。
 ひどく何か追い詰めたような、逆に追い詰められたような顔を無表情に仕立てて、コレットを抱く。
 全てが終わったあと、衝動の抜けた彼は呆然としている。ただ、呆然と。
 コレットが寄って慰めると、ゼロスはほんのすこし安堵して、それから悲しそうな顔を見せる。
 またやってしまった。そんな顔だ。
 抱きしめて、キスをする。それだけでは何も埋められない。埋まらないのだ。なにも、埋まらないのだ。
 いっそ傷つけるのが自分なら、ゼロスは自身を責める。しかしコレットは、聖女の如き微笑で彼を許してしまうのだ。
「大丈夫」
 そっと甘く囁いて、コレットはゼロスの髪を指に絡ませる。
「大丈夫だよ」
 ぜんぶゆるしてあげる。囁くと、ゼロスは今にも泣き出しそうに顔をゆがめる。
 コレットは、全てわかっていた。
 自分が優しくすればするほどに、ゼロスは自分を責め苛む。
 知りながら、知っていながら甘くする。そうして崩壊する彼を愛しく感じる。とても、いとしく。
 幾度目かの夜が来た。
 ゼロスはまた、呆然とそこにいる。
 だから、コレットは手を差し伸べる。最終的にどうなるのだろうと、答えを知りながら無邪気に楽しむ。
「どうしたの、ゼロス?」

 聖女の如き、微笑み、で。
最終更新:2006年10月07日 21:32