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 題未定



「諸君、この日をしかと脳髄に刻みつけよ!」
 はぁ、今日はなんとなく朝から興奮しているとは思ってはいたが……。
 なにかと思えばご存知ハルヒである。
 しばらく団長席とやらにふんぞりかえっていたハルヒはとってたつけたように今思い出したかのような素振りで立ち上がった。
 「団長」と手書きで書かれた三角錐が揺れたかと思うと、(部員の困惑をよそに)団長席とやらに勢いよくハルヒが手を叩きつけた…らしかった。
「……今度は何だよ?」
「今日は特別な日なのよ!」
 偉そうに置かれた左手を華麗に胸元に移動させると、ハルヒは頭でも悪いみたいに叫んだ。
 またなにかやらかすつもりなのは、もはや明白だった。少女マンガみたいな目をしたハルヒを止められるやつは誰もいないのさ。
 俺もよほどがない限り今回も仕方なく巻き込まれてやるつもりだった――――だから、つい言っちまったのさ。

「なんだそれは。お前の誕生日とかか?」

 …………………………………。
 沈黙の要請、いや沈黙の妖精リターン。
 ハルヒは数瞬黙ったかと思うと、なんでわかったの?とかそんな顔をしていた。
 しかし高まったテンションをいきなり下げられるほど涼宮ハルヒは冷静じゃないんだぜ。固まったままの左手で空を切ると、スピーカーいらずにまた叫んだ。
「それでこそSOS団団員よ!」
 その後もハルヒはなんやら叫んでいたがなかったことにする。


「そうよ、誕生日…。一年に一回ポッキリの、ドキドキワクワクイベント。ううん、超ビッグイベンツ!クリスマスにも匹敵する、いやもしかしたらそれ以上かもしれないわ!それを今まで疎かにしていたなんて……あたしもまだまだ、なのよね……」
 妄言をひととおり吐いて、ハルヒは憂鬱な溜息をついた。
 もはやSOS団とは何なのだ。なんらかのイベントに朝比奈さんを更に麗しくするだけの集まりになっている気がする。
 ハルヒもそんなに退屈がいやならいっそ、他人の誕生日を勝手に祝う団(略してTTK団)でも設立すればいい。全校生徒を手当たりしだいに祝っていけばあいつも満足するだろうか。
 いや、それは確実にない。なぜなら涼宮ハルヒである。平凡なお誕生日会などすぐに飽きて世界を滅亡させようとするやもしれん。
「ねえ、そういえば」
 ハルヒはいつのまにか朝比奈さんの後ろに瞬間移動していた。
「ひゃ?!…す、涼宮さん?な、なんですかぁ?」
「みくるちゃんの誕生日っていつ?」
「……えっ?」
 あからさまに動揺しておられます、朝比奈さん。しばらくしどろもどろと「ええと」とか「ううんと」など可愛らしく悩んでおられたが、(時々「禁則事項」と、聞こえた気もする)なんとか適当な日にちを口にした。…ああ、冬が過ぎ去り春の息吹のおとずれ真っ盛りな季節ですね。貴女にぴったりな日です。俺は嘘でもハルヒの誕生日よかむしろその日を心に刻みたい。
「ふぅん。ねえねえ、有希は?」
 ハルヒは朝比奈さんの首に腕を回したまま、部室の隅の長門に呼びかけた。陰謀は読めてきた。陰謀でもなんでもない気がするが。
 長門はぴくりとほんの僅かに反応して、そしてセンチ単位かもあやしい細かな動作で顔をあげた。そして表情を変えずにでたらめを呟くと、また活字の世界に戻っていった。…冬、か。長門らしいといえば長門らしい。
「ほーほー。じゃ、次古泉くん!」
 ああ、そういえばいたね、こいつ。俺の眼前で小憎らしい笑みを浮かべる古泉一樹は、まるで悪びれもせずに嘘をついてみせた。なぜ嘘だとわかるのかというとそれは邪推である。
「あら、秋生まれ?あたし的には古泉くんは夏って感じがするんだけどね」
 んなこたどーでもいい。というか、古泉自体がどうでもいいんだな。ハルヒはいつのまにかメモを手にしていた。誕生日を記録したらしいそれを勢いよく閉じると、ハルヒは晴れ晴れと言った。
「じゃ、これからは団員の誕生日を祝っていきましょ。じゃ、まずはあたしからね!キョン、買出し行ってきなさい!」
 諦めにも似た憤慨をしつつ、俺は部室を出ることを余儀なくされた。



 つづいたらいいんですが…。
最終更新:2006年10月07日 21:33