4:由実系、屋外の足洗い場で放尿。
体育の授業が終わったばかりのことだ。用具の片付けを押し付けられた慎一系と由実系が最後まで校庭に残っていた。
彼は最早歩きたくもない程なのに、由実系はまるで疲れている様子を見せない。
(何やねんこいつは)
そんなことを思いながら二人は足洗い場にまでやって来た。慎一系がよろめきながら足を洗い始めると、あらぬ方向から水が飛んで来るのに気付いた。
嫌な予感がして右側を見ると、由実系がニヤニヤしながら小便を飛ばしていた。
「何しとんねんお前」
「おしっこ」
「それは分かってるわ」
何故彼の足にかけているのか、という話だが、無理もないだろう。どうも、由実系が故意にそうしているわけではなさそうなのである。偶然彼女が慎一系の方を向いているに過ぎない様子だ。ただ、彼女の小便の勢いが強過ぎてあらぬ高さに飛躍しているだけらしい。
仕方なく由実系を睨むと、彼女は、
「だってずっと我慢してたんやもん」
と笑いながら濃い黄色の液体を洗い場全体を濡らすかの如く放ち続けている。
「お前さ、恥じらいとかないんかよ」
「でもあんたこういうの好きそうやん」
「勝手に変なキャラにすんなよ」
気付くと彼も苦笑を漏らしながら洗い場の隅に腰を下ろしていた。とにかく、後でまた足を洗わねばならない。次が昼休みで本当に助かった。
洗い場の至るところから湯気が立ち始めた頃、ようやく由実系の放尿が終わった。
いきなり、彼女は慎一系の方に歩みよってきた。彼は呆然とした。本来異性が軽々しく見せるべきでない部位が彼の首元辺りの高さにある。それも、目と鼻の先というべき距離でだった。そのまま、彼女は慎一系の体操服の襟辺りを手に取った。
(何のつもりや)
傍から見れば二人が喧嘩しているようにさえ見えただろう。だが決定的に違うのは、由実系がいつものようにニヤついていることだ。
そのまま、彼女は慎一系の襟を自分の股間に押し当てた。
(こいつっ)
彼の元に戻ってきた襟には大きく黄色い染みがついていた。
「普通に洗ったら済む話やろ」
すっかり怒る気力もなくなってしまっている。
「いいやん記念やし」
「何の記念や」
由実系が足洗い場で小用を足すことはごく日常的なものであり記念すべき類のものではなかろう。
「どうすんねんこの染み」
「汗って言えば大丈夫やって」
おそらくそれで通じないことはないだろうが位置が若干不自然ではあるしそもそも汗染みを襟口に付けていると言われるのも良い気分ではない。
「じゃぁちゃんとあたしがおしっこ拭いたって言うから」
「それはそれで嫌やわ」
ただでさえ今後忌まわしい記憶になるであろうこの出来事を友人にまで暴露されてはたまったものではない。
最終更新:2013年08月08日 11:19