6:由実系、洗面台に放尿。
以前から思っていたことだが、由実系の相手をするのは異常に疲れる。まして今日は彼女が家に泊まるというのだから尚更だ。
(身体保つかな)
正体の分からない不安を抱えながら、慎一系はトイレに入った。けだるい溜息をつきながら小用を足していると、いきなり誰かがドアを叩いて来た。もっとも、誰かと言うまでもなく家には彼以外には一人しかいないのだが。
「慎一系、代わって」
「ちょっと待てよ」
しかし、そのちょっとの間でさえ我慢できない状況らしく、じれったそうな不平が聞こえてくる。
そこで、ドアの外から何故か金具の音が聞こえてきた。無理にドアを開けようとしているのではないのはまず明らかだ。
耳を澄ませていると、急に水の流れる音が聞こえて来た。だが、水道の蛇口ではないようだ。用を済ませた慎一系は胸騒ぎがしてドアを開いた。
「あ、出たんや」
相変わらずの笑顔の彼女はあらぬところに座っていた。悪い予感というのは何故かいつも当たるものらしい。どう見ても、先程の水音は洗面台に腰掛けた彼女の股間から出ている。
「何してんねんお前」
「だって長いみたいやしさ」
ちょっと、と慎一系は言ったはずなのだが。
「それにしたってさ」
「だってあたし結構学校の手洗い場とかでもやってるし」
「マジかよ」
「廊下のとこでもしたことあるし」
「人来たらどうすんねん」
「……おしっこかける」
慎一系は彼女の言葉が苦し紛れなのか本気なのか分かりかねた。
「お前ならやりそうやから怖いわ」
「でも後ろ向きに座ってしてたらそんな目立たへんで」
後ろ向きに、というのは先程のように手洗い場に腰掛けてという意味なのだろう。
「その逆は流石のお前でもやらへんねんな」
「建物の外やったら普通にするけど」
「例えばどこよ」
由実系が挙げたのは別棟の裏にある手洗い場であった。そこは中庭とも校庭とも離れており、確かに人気のない状況ならばそこで用を足すことも可能かもしれない。
しかし、可能であるというのと実践してみるというのはまた別であろう。
「ようそんなとこでするな」
「何かみんなが手洗うとこでしたら面白いかなって思って」
「近くにトイレあったやろ」
「トイレでやっても楽しくないもん」
何故この女は排泄に楽しさを求めるのであろうか。
「スリルとか開放感とか征服感とか大事やと思うで」
「征服感って何やねん」
「あたしがいつもお尻洗う蛇口の水飲んでる、とか」
「ウォシュレット代わりかよ」
そもそも、小便だけで尻を洗う必要があるのだろうか。
「ほら、あそこの花壇に肥料あげた時とか両方出ちゃったりするしさ」
この口ぶりからするとどうも小便だけではなさそうである。
最終更新:2013年08月08日 11:27