16:由実系、火消し放尿。
由実系は、嬉しそうな顔で芋を突いていた。
「まだかな」
「そろそろちゃうか?」
たまにはこんな休日もいいものだ。二人は焼き芋をしているのである。
「めっちゃおいしい」
ものを食べている時の彼女は本当に可愛い、それは慎一系も認めざるを得ない。
(ずっとこうやったらええねんけどな……)
ただ、彼はあまりに彼女の本性を知り過ぎた。
「何で芋食べたらおなら出んの?」
言いつつ彼女は片尻を上げた。由実系には珍しく、音もない気体が漏れたようだ。
すかしなのに慎一系がすぐに気付いた理由は一つしかない。
「ヤバいってこれ」
さりげなく彼女は自分の菊門が放った気体を扇いで彼の元に送ってくるのだ。
「殺す気か俺を」
「嗅ぎたい癖に」
「嗅ぎたないわ」
「また今度直接鼻にしたげるわ」
「やめろよ」
さて、芋を三切れ食べた由実系はもう満腹といった様子である。
「はぁ、食った食った」
彼女は上着を捲り上げ、腹を露出した。あたかも妊婦のようでさえある。
「何やねんこれ」
「触ってみて」
恐る恐る慎一系は手を伸ばしてみる。想像以上の柔らかさだった。
「気持ちよくない?」
由実系も自分の腹を弄んでいる。
「あたしってさ」
急に彼女はそんなことを言い出した。
「おへそ可愛くない?」
慎一系は肉塊の中央の少し横にひしゃげた窪みに目をやった。
「そうか?」
無理やり、彼女は彼の手を取って、人差し指を臍の中に差し入れた。
彼の指先には異常な暖かさが感じられた。
「温かいやろ?」
「何でこんな温かいねん」
言ってから気付いたが、彼女の脂肪以外のどこに原因があるだろう。
「さてと」
「片付けるか」
そこで気付いたことがある。
「お前、水どうしてん」
「あ」
由実系はふと思い出したようである。先程まで近くに消火用の水がバケツ一杯ほど入っていたはずなのである。
それが、空っぽになっている。
「さっきそこでうんこしてんか」
近くの草原を指差して由実系は言う。相変わらずはしたない女だ。
「そんでお尻洗う時に使っちゃった」
照れている様子がないのが恐ろしい。
とにかく、二人の間に燃え盛っている炎を始末しなければならない。
「しゃーないなぁ」
もったいぶった口調で言うと、彼女は腹を撫でながら立ち上がった。そして、いつものようにジーンズと下着を下ろしたのである。
今回は、炎の方を彼女は向いている。
「そっち向きでできんのけ?」
「練習してるから」
そう言うと、彼女は股間に手を添えた。
そして、いつも以上の勢いで小便を飛ばし始めた。それは驚くほど綺麗に前方に飛んでいる。
「男の子みたいじゃない?」
「すごいな」
それだけでなく、由実系の小便は見事に火柱にかかっているのだ。あっという間に火は消え、小便の池だけが残った。
「すごくない」
慎一系も頷かざるを得ない。
「消防士とかやれるかな」
「アホかお前」
「でも近所とかやったらいけるんちゃう?」
相変わらず根拠がよく分からない。
「火事とかなったらあたしがすぐ行っておしっこシャーって」
「シャーとちゃうわ」
思わず彼は苦笑を漏らしていた。
「でもバケツリレーぐらいやったらアリじゃない?」
「そんな出るかよ」
「水飲みまくった後とかならバケツ一杯ぐらい出るやろ」
「飲んでんとその水持って来いよ」
しかし、それでは彼女は納得できないようである。
「やっぱ勢いとか考えたら直じゃない?」
「一人で消せるかよ」
「じゃぁ後輩とか友達とか集めるから」
付き合わされる方はたまったものではあるまい。また逆に由実系と同様に恥じらうことなく屋外で放尿する人間が彼女の周りに一定数いるとすればそれはそれで問題である。
「結構部活終わりとか連れションしてんねんけど」
「マジかよ」
もしそうだとすれば朝礼で学校の敷地内のどこかで異臭騒ぎがすると校長に告げられる日もそう遠くはあるまい。
「六人で足洗い場にしたら流石に他の部から苦情来たわ」
「そら来るやろ」
身体の部位を洗うための場所で用を足すというのはやはりおかしい。もっとも、その背徳感と倒錯感をこの女はこよなく愛しているようであったが。
「体育館倉庫の横のドブに一列になってやっててんか」
複数の女子生徒が縦一列に並んで溝を跨いで放尿する図は異様であったろう。
「夏場やったししばらく六人分のおしっこそこに溜まってたわ」
おそらく干上がっていて当然水の流れなどなかったに違いない。
最終更新:2013年03月23日 23:40