091913版
能力判定、セーヴィング・スロー、そして攻撃に関するルールは、D&Dゲームの基礎を成すものである。DMである君の、これらのルールが必要とされたときに最も重要な責務は、それらをどのように使うか、そして重要な点として、それらをいつ使うのか、を決めることである。
いつダイスを使うか
D&Dゲームのキャラクターは、揺れる吊り橋を横切って疾走することから、オークの首領がじっと見張っている所からうまいこと言って抜け出すという事まで、頻繁に途方もなくさまざまな作業を試みる。これらの作業全てが君(DM)とその作業を試みるキャラクターを操っているプレイヤーとの間の対話によって解決される。
プレイヤーが何かアクションを取りたいときには、しばしばただそのアクションが成功したとする事が適切な場合がある。空っぽの部屋を横切って歩くためにキャラクターが【敏捷力】判定を要求されることは通常はないし、居酒屋でエール1杯を頼むためだけに【魅力】判定を要求されることもない。君がゲームの流れにこのルールのために時間を取るだけの価値があると判断する場合にだけ、ロールを要求すること。君の決定を助けるために、2つの疑問に答えてみること。
そのアクションを取るのは非情に簡単であり、ストレスや抗争とは無縁であるか、失敗の可能性がまずないと言って良い状況であるか? 「非常に簡単」と決める際には、意図するアクションに関連する
能力値について考慮しなければならない。【筋力】の値が18ある者たちにはテーブルをひっくり返すのは簡単であるが、【筋力】の値が9の者には簡単とは言えない。
取られているアクションは、それが決してうまくいかないような、不適切なものであるか? たとえばアローで月を射落とすなどという行為はほとんどいかなる状況においても不可能である。
もしこれらの質問の両方に対する答えが「ノー」なら、何らかの種類のロールを行なわせるのが適切である。
ダイスを無視する
もし君が経験豊富なゲーマーなら、かつて下記に記すような状況に出くわしたことがあるだろう。ハーフリング・クレリックをプレイしているレイチェルは、都市攻城戦の支援をしてくれるようバーバリアン部族を奮い立たせるための完璧な演説を行った。彼女が演説を終えるや、その場にいる全員から自然発生的に拍手喝采が沸き起こったほどだ。しかし、彼女が【魅力】〈説得〉判定をロールするや、そのダイスの出目は1で、その試みは失敗に終わってしまう。
DMとして、ダイスはルールみたいなものだという事を覚えておくこと。これらはアクションを動かし続けるための手助けに使う道具なのである。いついかなるときであれ、たとえ難易度が通常は20を超えるような状況であったとしても、君はプレイヤーのアクションが自動的に成功したものと決定することができる。同じ論から、ろくでもない計画や不幸な状況においては、たとえ最も簡単な作業であってすら、成し遂げることができないことにしてもよい。
ダイスは中立的な調停者である。これらは成否がはっきりしないときにプレイに持ち込まれる。これらは、キャラクターのボーナスと君が決めた難易度に基づいて、イエスかノーの裁定を行う準備を整えた公平な裁判官と見なすこと。ダイスはゲームを運営することはない。それは君が行うのだ。
DMである君は、ゲーム内でダイスをロールする事について考えるべきである。君は突拍子もない運命の悪戯を好むのか、あるいは努力には成功で報い、まずい手法には失敗で応えるのを好むのか? ロールを要求するのと、単純に成否を要求するのと、どちらを選ぶかは君のスタイル次第である。
能力判定
能力判定はキャラクターの成否を判定するための試験である。もしキャラクターが失敗する可能性が十分にあるアクションを試みるなら、プレイヤーに能力判定を行わせること。
能力判定はこのゲームで最も一般的に使用されるルールである。攻撃、対抗判定、そしてセーヴィング・スローは、突き詰めて考えれば、能力判定の特殊な形態である。
不確かなときには、能力判定を要求すること。
対抗判定
対抗判定は2体のクリーチャーがお互い同士で対抗しあう能力判定の一形態である。キャラクターが直接に他のクリーチャーのアクションの裏をかこうとしたり、直接に対抗しようとするアクションを試みる際には、対抗判定を使う。
対抗判定を要求するときには、君は両方のサイドが使用しなければならない能力を選択すること。ほとんどの対抗判定では、両サイドが同じ能力を使うが、いつでもそうという訳ではない。たとえば、クリーチャーが隠れようとする際には、【敏捷力】判定で【判断力】判定に対抗することになる。しかしもし2体のクリーチャーが取っ組み合いをしていたり、あるいは1体のクリーチャーが扉を押さえ、もう1体のクリーチャーがそれに対抗して押して開けようとしているような場合には、両者はどちらも【筋力】を使用することだろう。
対抗判定を要求するとき、どんな危険があるのかを考慮しておくこと。両者の意図は何であるのか? 対抗判定とそのあとに起こる出来事に関連する能力がどれであるか決定する際に、そうした意図を使うこと。
下記のような場合に対抗判定を要求すること。
- キャラクターが何か他のクリーチャーがそれ自体のアクションを使って妨害できるような事柄を実行しようとするとき。
- 成功するにはキャラクターは他のクリーチャーを倒さなければならないとき。
- 2体のクリーチャーが同じときに同じ事を試み、成功者どちらか1人しかできないとき。
セーヴィング・スロー
セーヴィング・スローは素早いリアクションであり、これらは誰か他の者のアクションや出来事に反応して行われるロールの形式を取る。セーヴィング・スローは反作用としての能力判定と考えることができる。
セーヴィング・スローは、何か悪いことがキャラクターに対して発生し、キャラクターにはその効果を回避するためのチャンスがあるようなときに最も大きな意味を成す。
下記のような場合にセーヴィング・スローを要求すること。
- キャラクターの鎧が攻撃を回避するのに使えないとき。
- 攻撃者の技能が攻撃の結果に影響しないとき。
- その効果が、キャラクターのターンではないときに何がしかの抵抗を試みることをキャラクターに要求するとき。
能力判定はキャラクターが何かを成し遂げようと能動的に試みる場合に行うものであり、その一方で、セーヴィング・スローは通常はそれを行うにはほんの一瞬の反応で良いというものである。
攻撃
攻撃はおそらくは解決が最も簡単なルールである。本質的に言えば、攻撃はあるキャラクターが武器や呪文を使って他者に命中させることができたかどうかを判定するためのものである。攻撃に対する難易度は、目標のアーマー・
クラス、略してACである。
キャラクターが物理的あるいは魔法的な攻撃で他のクリーチャーに命中させようと試み、その目標の鎧や盾がその試みを遮ることが可能なとき、攻撃を要求すること。
DMのツールとしての能力判定
能力判定は非常に柔軟性のある道具であり、D&D世界においてキャラクターが試みることができるほとんどあらゆる作業を裁定するために使うことができる。君は試みようとしている作業に最も適している能力値を決定し、その能力に関連する技能が適用されるかどうかを決定し、その作業を実施することがどの程度困難であるかを基準にして難易度を設定し、特定の状況を反映させるために判定にさまざまな修正を適用する。この章は、君がこの世界の中でキャラクターの行動を解決するために、能力判定のパラメータを設定するのに役立つものである。
難易度の設定
難易度はその作業の困難さを数値化して表現したものである。より高い難易度であれば、よち困難な作業である。DMとして、ほとんどの難易度の設定は君に委ねられている。キャラクターの持つ特殊能力や、公式出版シナリオにおける作業など、場合によっては難易度は事前に定められている。
取るに足らない(難易度5):通常の状況では、5以下の難易度はあまりに簡単で能力判定を行う必要もない作業である。冒険者たちは、取るに足らない作業に対してはほとんど常に自動的に成功する。
簡単(難易度10):簡単な作業は、それを行うには最低限の技量とちょっとした幸運を必要とするものである。
普通(難易度15):普通の作業は、それを行うには若干高いレベルの技量を必要とするものである。生来の才能と特別な訓練の両方を持ち合わせるキャラクターであれば、普通の作業はほとんど常に成功する。
困難(難易度20):困難な作業には、手助けや特別な能力を持たないほとんどの人々の能力には手に余るような何らかの力量を要するものである。適性を持ち合わせ、訓練を積んでいてさえも、困難な作業を達成するためには、キャラクターにはある程度の幸運―あるいは積み上げた特別な訓練―を必要とする。
非常に困難(難易度25):特別な才能を持つ個人だけが、非常に困難な作業を試みるに必要な力量を持つ。
成功はおぼつかない(難易度30):最高の訓練、経験、そして才能を持つ個人だけが、成功はおぼつかない作業を成功する可能性を持つが、それでも、おそらくはそうした作業を達成するのに手助けとなる何らかの装備品や魔法のアイテムを必要とする。
ほとんど不可能(難易度35):この難易度の作業は、手助けなしで成功することができるのは、半神やそれに匹敵するような者たちだけである。
これらの難易度を使う
我々としては、君が難易度を決定するたび毎にいちいち表を参照したりして欲しくないので、これらの数値は非常に簡単に頭に入るようにしてある。ここではこの表を使う際のちょっとした秘訣を述べる。
もし君が能力判定を要求することに決めたなら、それは明らかに取るに足らない作業ではない筈である―従って、難易度5は除外して考えることができる。
それから自問するのである:「それは簡単か、普通か、困難か?」君が使用する難易度が10、15、20だけであ
もし君が「そうだな、これは本当に困難だな」と考えるのであれば、もっと高い難易度にすることもできるが、そうする際にはキャラクターのレベルについて考慮と注意を払うこと。難易度25は低レベル・キャラクターにとっては完遂することが途轍もなく困難であるが、10レベル以降であれば程よいものである。1レベル・キャラクターは難易度30を達成することは決してできそうにないほど困難であるため、そのような難易度はまず使うべきではない。もしその作業が本当に不可能に近いようなものであると考えるなら、難易度は35になるが、そのような作業を達成するには、その問題の作業に熟練した20レベル・キャラクターであってさえもいくばくかの幸運を要するものであるという点を注意しておくこと。
もうひとつ内緒のやり方がある:プレイヤーが能力判定のロールを行う前に実際には難易度を設定しないという方法である。キャラクターが成功したかどうかは判定結果に基づいて決定する。おそらくは、君の直観(およびプレイヤーの直観)は、ここに示されている難易度設定とおおよそ一致するものであろう。その作業が取るに足らないほど簡単なものでない限り、達成値10以下では決して成功しない。10代前半の数値は簡単な作業を達成するに十分である。10代後半の数値は普通の作業を達成するに十分である。プレイヤーが20以上の結果をロールしたときには、通常は問題なくキャラクターは成功したとみなす。
どうせプレイヤーたちは知る由もないことだ。
危険
作業に失敗した場合に、そのキャラクターにとって何か不幸な結果が導かれる可能性はあるか? 君は特定の能力判定に対して危険が伴うかどうか、また危険が適用されるときはいつかを決定する。
危険は能力判定に失敗したキャラクターにもたらされるかもしれない。たとえば、落とし穴を飛び越えるために【筋力】〈運動能力〉判定を行う失敗したキャラクターは、通常は、その落とし穴に落下するだろう事は明白である。しかし、ときに、その能力判定の難易度に対し(あるいは対抗判定に対し)著しい差、たとえば5とか10の差で失敗した場合にだけ危険が及ぶ場合もある。危険の例については、「作業と技能」の項目で紹介している。
必要条件
作業にはキャラクターが成功する可能性を得るために特殊な道具や状況が必要とされることがある。たとえば、宝石の価値を正確に鑑定するために虫眼鏡が必要であるかもしれない。
作業の必要条件を満たすことができないキャラクターは自動的に作業に失敗する。それらを満たす者だけがその作業について通常通りに能力判定を行うことができる。
君はこの必要条件をなくすこともできるが、それなしでの作業の達成は困難なものとするべきである。君はその能力判定を行うキャラクターに“不利”を与えるか、必要条件を満たしているキャラクターに対するものよりも高い難易度を設定することができる。
さもなければ、必要条件を適用するのは極めて稀にするべきである。プレイヤーに賢い解決策を考えることを推奨するためにそれらを使うべきであり、何か面白い事をやろうとした者に罰を与えるために使ってはならない。
プレイヤーを関わらせる
DMとして、君はこれらのガイドラインを記憶にとどめておき、これらを間違いなく適用しても、なおかつ、D&Dとしては失敗するということがある。他のゲームとは異なり、D&Dは厳格なルールの集合体ではなく、柔軟性のあるガイドラインの集合体なのである。
君がプレイヤーに能力判定、攻撃、あるいはセーヴィング・スローを要求するとき、まず君はプレイヤーたちが想像力を働かせてくれるように焦点を当てるべきである。彼らに状況を説明し、視覚、聴覚、そして嗅覚さえも詳細に説明することで、アクションを生き生きとしたものとすることができる。
より重要な点として、君はプレイヤーたちにゲームに完全に携わってくれることを望むべきである。彼らのキャラクターの行動を説明するために、ゲーム上の選択肢以上に関心を寄せる、工夫をこらすプレイヤーには報いを与えるべきである。彼らにこうした種類の想像力を許す点があるゆえに、ロールプレイング・ゲームは他の種類のゲームから卓越したものとなっているのである。そうできるときにはいつでも、それを励行すること。
そうするための最も簡単な方法は、想像力に富んだ解決法を冒険者にとって成功するために最も簡単な道とすることである。下記の選択肢を考慮すること。
能力判定:プレイヤーが能力判定を行うとき、彼あるいは彼女にキャラクターのアクションを説明するよう求めること。もしプレイヤーがその説明において状況をうまく駆使しているなら、自動的な成功とするか、あるいはその能力判定に“優位”を与えることを考慮すること。
対抗判定:対抗判定においては、キャラクターが優位になりうるような工夫に富んだ説明がなされたなら、その判定においてキャラクターに“優位”を与えることができる。
攻撃とセーヴィング・スロー:生き生きとした説明は攻撃やセーヴィング・スローに対しても素晴らしいものであるが、それによって具体的なゲーム上の利益が付与されるような事はめったにない。なぜなら、そのような手法は容易に悪用されかねないものだからである。君はプレイヤーたちに、彼らがいかにしてマインド・フレイヤーのマインド・ブラストに抵抗するのかや、彼らの振るう剣の一撃がいかなるものかを毎回詳細に述べることを果てしなく許すかもしれない。ほとんどの場合、呪文と特殊能力が攻撃やセーヴィング・スローに対する“優位”をキャラクターに与える役を果たす。
言ってみれば、状況がそうである場合にのみ、キャラクターが有利な状況が与えられる場合に“優位”を使うのである。
不利:あらゆるアイデアが良いものとは限らない。あるキャラクターは彼または彼女が殺害した山賊すべてを自慢の種にすることで大公の支持を勝ち得ようとするかもしれないが、当の大公は平和主義者を自負していることをまるで知らないのかもしれない。もしその考えがプレイヤーにとって逆効果となるようなら、その能力判定や攻撃に“不利”を適用すること。
複数回の能力判定
ときにキャラクターが能力判定に失敗し、再挑戦したいと思うことがあるだろう。こうした場合には2つの選択肢がある。
ほとんどの場合、キャラクターは単純に再挑戦が可能である。事実上必要とする唯一のコストは時間だけである。キャラクターは挑戦し続け、十分な時間をかければ、最終的に成功する。処理を速く済ませるために、彼あるいか彼女がそれを完遂するのに必要とされる通常の時間の20倍の時間をかけるのであれば、キャラクターはその作業は自動的に成功することができると見なして良い。この例外は、そのキャラクターがどうやってもできない作業を成功に変えることはできないという事である。
別の場合では、最初の失敗は再度の判定を不可能にすることもある。たとえば、ローグが町の衛兵たちを騙して、グループのメンバーが、国王のエージェントとして活動していると思い込ませようとしているような場合だ。ローグは【判断力】に対する【魅力】〈ごまかし〉による対抗判定に失敗した。同じ嘘を再びついても明らかに通用しないだろう。
最終更新:2014年06月13日 22:31