アステカの神話Ⅱ AZTEC MYTHOS II
by David Schwartz
農業は文明の基盤である。労働者や職人から、貴族や戦士たちまで、すべての者は農場、果樹園、そしてチナンパ(浮き畑;訳注:中央メキシコ高地で造営されていた人工の浮島に作られた畑)で生産される豊富な作物に依存している。であるため驚くには当たらないが、雨の神トラロックは、ほぼ間違いなく中央アメリカ高地において最も広く信仰された神である。雨なしには作物はしおれるため、1年を通して豊作に恵まれるのに足るだけの雨を保証してくれるよう、礼儀に適った捧げ物をトラロックに行なうことは非常に重要な事柄である。
第二の太陽が失われた後、トラロックは天空の権利を要求し、そこを自らの場所とした。しばらくの後、ケツァルコアトルが大地を焦がす火の嵐を送りつけた。炎の雨は太陽さえも焦がすほどに熱く燃え盛った。生き残った人々は七面鳥に姿を変えたとされ、鳥はアステカ人にとって重要である。それからすぐ、ケツァルコアトルは、第四の太陽になってもらうために雨の神の妻チャルチウトリクエを招待し、彼女はそれに同意した。彼女が太陽である時代は、終わることのない雨で特徴付けられるものであった。最終的に水は山の上へと昇り、人々は魚に姿を変えた。あまりに激しく雨が降ったために天は落ち、それとともに第四の太陽も落ちた。
ケツァルコアトルが“糧食の山”―世界の始まりよりトウモロコシ、豆、トウガラシ、そしてそれ以外のあらゆる食料が隠されてきた場所―を発見したとき、彼はそれをどうするべきか他の神々に尋ねた。大部分の者たちは、彼らがその中身を取り、人々に分け与えるべきだと信じていた。しかしトラロックだけは違った。彼は他の神々が議論を続けている間に食料を盗んだのである。この雨の神も“糧食の山”の食べ物を食べるが、毎年その一部を戻していた―ある年は多めに、またある年は少なめに。
トラロックとチャルチウトリクエはトラロカンという楽園世界に住んでいる。そこは溺死、焼死、出産によって死んだ人々の魂が住まう地である。
アステカの神格
最初の2つの太陽
この新シリーズの第二弾であるこの記事では、君の信仰系のキャラクターが歴史上の神々、ここでは特にアステカ人の創世神話において第三、第四の太陽の役割を果たした2柱の神々を崇拝するために必要なものすべてを提供している。第一と第二の太陽、テスカトリポカとケツァルコアトルは、『Dragon #352』のこの新シリーズの第1回分に掲載されている。混沌と悪の暗黒神テスカトリポカは第一の太陽としての務めを果たしたが、明るさが不十分であった。規則と善良性の神ケツァルコアトルはテスカトリポカを天空から叩き落し、第二の太陽の地位に昇った(後日、彼はテスカトリポカによって天空から叩き落された)。
クレリックの役割
D&Dの属性システムでは、初期中央アメリカ文化の複雑な道徳律を正当に表現することはできない。アステカの神々の多くは紛れようもなく悪であるが、彼らは生きとし生けるあらゆる物たちの生存にとって重要不可欠な事象に対する権能を持っていた。神々は恐るべき対価を求めたが、彼らはまた世界に存するあらゆる善なることをも提供してくれた。すなわち、食料、飲み水、美と驚異、そして家族と友情といったものである。
人々がこの神々を崇拝する方法は都市国家毎にさまざまであり、さらに言えば、個人個人でばらばらである。表向き、アステカは彼らの血に飢えた神々に捧げるための捕虜を捕まえるための戦争につぐ戦争を行なっていたが、同じ存在を崇拝していた他のメソアメリカ地方の部族は人間の生け贄を捧げることはもっと頻度が少なかった。
もし君のゲームにおいてアステカの神のパンテオンを使用するなら、クレリックに対しては信仰する神の属性の1段階以内という制限を課さずに、任意の属性を選択することを許可するべきである。善のクレリックが悪の神格の穏やかな一面―恵みの雨をもたらすトラロックや、圧政に対する守護者としてのテスカトリポカなど―を崇拝しているということも珍しくなく、その神のより暴力的な側面をできるだけ避けるのである。反対に言えば、悪の文化の中では、他では善の神格がぞっとするような儀式によってなだめられていることもあるかも知れない。
さらなる選択ルールとして、アステカのクレリックはあらゆる属性の補足説明が付いた呪文を発動できることにしても良い。しかしながら、悪は悪であるため、善のクレリックが繰り返し[悪]呪文を発動したり、悪の儀式(特に人間の生け贄など)を行なったりしたなら、彼女自身が悪になるであろう。
それでも、彼の神格の教義を著しく破ったなら、クレリックはその呪文やクラスの特徴を失うことになる。倫理や道徳との関連は薄くなっているとは言え、神々は彼らの権能を傷つけたり、反したりする行動を取ることは禁じている―たとえトラロックに仕える悪のクレリックであっても、神によって与えられた食料や飲料水に毒を混入させることは決してない。
出典:
『Dragon #354』p.90
関連項目
最終更新:2013年11月15日 23:48