流体力学:§6 Eulerの連続方程式と運動方程式

流れの中に,空間に固定した任意の閉空間 S を考える. S によって囲まれた領域 V について質量保存の法則を考える.
任意の時刻において,V に含まれる質量は

{\iiint}_{{}^V}\rho\mbox{d}V

である. ただし \rho は密度である. したがって,単位時間あたりの質量の変化は

\frac{\partial}{\partial t}{\iiint}_{{}^V}\rho\mbox{d}V

で与えられる. この質量変化は,流体が表面 S を通って領域 V に流れ込む(あるいは V から流れ出る)ことによって起こる. いま,表面 S の面積要素 dS を通って流出する質量を考えると,それは単位時間あたり
\rho v_{{}^n}dS
である. ただし v_{{}_n} は流速 \mathbf{v} の,表面 \mbox{S} に対する外向き法線 \mathbf{n} の方向の成分である. したがって,\mbox{S} を通っての全流出量は

{\iint}_{{}^S}\rho v_{{}^n}\mbox{d}S

となる. これの符号を変えたものが質量変化に等しいから

\frac{\partial}{\partial t}{\iiint}_{{}^V}\rho\mbox{d}V=-{\iint}_{{}^S}\rho v_{{}^n}\mbox{d}S

左辺では \partial/\partial t を積分記号の中に入れ,右辺の面積積分はベクトル解析での Gauss の定理を用いて体積積分に変えると,

{\iiint}_{{}^V}\(\frac{\partial\rho}{\partial t}+\mbox{div}\rho\mathbf{v}\)\mbox{d}V=0

となる. この等式が任意の領域について成り立つためには,被積分関数は恒等的に 0 でなければならない.

\frac{\partial\rho}{\partial t}+\mbox{div}\rho\mathbf{v}=0

これを Euler の連続方程式(Euler's equation of continuity) という.

\mbox{div}\rho\mathbf{v}=\rho\mbox{div}\mathbf{v}+\mathbf{v}\cdot\mbox{grad}\rho

\frac{\partial\rho}{\partial t}+\mathbf{v}\cdot\mbox{grad}\rho=\frac{D\rho}{Dt}

であるから

\frac{D\rho}{Dt}+\rho\mbox{div}\mathbf{v}=0

のように表すこともできる.

(2) Euler の運動方程式

 同じ領域 V についての運動量保存の法則を考える. 運動量保存の法則というのは,静力学の場合には,力のつりあいの法則にほかならない.
 流体の各部分には単位質量あたり \mathbf{K}(X,\ Y,\ Z) なる外力が働いているものと仮定する. 微小な体積要素 \mbox{d}V を占める流体の質量は \rho\mbox{d}V ,したがって,それに働く外力は \rho\mathbf{K}\mbox{d}V である. その流体の流れている加速度を \mathbf{a} とすれば,d'Alember の原理により,-\rho\mathbf{a}\mbox{d}V なる慣性力を付加的に考えることによって,動力学の問題を静力学に帰着させることができる. 

{\iiint}_{{}_V}(\mathbf{K}-\mathbf{a})\rho\mbox{d}V-{\iint}_{{}_S}\rho\mathbf{n}\mbox{d}S=0
最終更新:2012年04月01日 22:06