うる星やつら 劇場版2
87 名前:水先案名無い人 :2007/08/16(木) 12:57:33 ID:fOxLxVNS0
私の名は愚地独歩。
かつては虎殺し高校に通う平凡な一人間凶器であり、退屈な日常と戦い続ける下駄履きの武神であった。
だが、あの夜ハリアーのコックピットから目撃したあの衝撃の総合格闘技が、私の運命を大きく変えてしまった。
ハリアーで稲城文之信の家に強行着陸したその翌日から、世界はまるで開き直ったかのごとくその装いを変えてしまったのだ。
いつもと同じ街、いつもと同じ角店、いつもと同じ公園、だが、何かが違う。
路上からは組み付きしだい投げまくる五輪アマレス代表の影が消え、
建売住宅の庭先に素手の殴り合いの音も途絶え、
牛丼屋のカウンターで、慌しく真の護身を知らしめる人の姿も無い。
この地下闘技場に、いやこの世界に、我々だけを残し、あの懐かしい人々は突然その姿を消してしまったのだ。
数日を経ずして、崩壊と言う名の時が駆け抜けていった。
かくも静かな、かくもあっけない終末を一体誰が予想しえたであろう。
パナマの鉄拳が過去数千年に渡り営々として制覇してきたボクシングと共に、西暦は終わった。
しかし、残された我々にとって終末は新たなる打撃対策に過ぎない。
世界が終わりを告げたその日から、我々の生き延びるためのベスト・ディフェンスの日々が始まったのである。
奇妙なことに、稲城文之信の家近くのコンビニエンスストアは、押し寄せる特攻隊長を物ともせずにその勇姿を留め、
ピュア・ファイター、プロのケンカ等の豊富なストックを誇っていた。
そして更に奇妙なことに、稲城文之信の家には達人の奥義も世界ヘヴィ級チャンプもピット(ケンカ)ファイターも依然として供給され続け、
驚くべき事に、ムエタイすら配達されてくるのである。
当然我々は、柔術の本場の存続という大義名分のもとに稲城文之信の家をその生活の拠点と定めた。
しかし何故かアンドレアス・リーガンは早々と牛丼屋「説明不要」をオープンして、自活を宣言。
続いて本部親子、地下闘技場跡にキック・ボクシング茶屋をオープン。
そしてセルゲイ・タクタロフは、日がな一日戦車を乗り回し、恐らく欲求不満の解消であろう、時折発砲を繰り返している。
何が不満なのか知らんが、実に可愛くない。
あの運命の紐切りからどれ程の死角が流れたのか。
しかし今、我々の築きつつあるこの世界に中国四千年の拳技も燃える闘魂も無用だ。
我々は、衣食住を保証された医者の仕事を生き抜き、
かつていかなる横綱達も実現し得なかったデンジャラス・ライオンを、あの永遠の超A級喧嘩師を実現するだろう。
ああ、選ばれしニューヨークの切り札の恍惚と不安、共に我にあり。
若き王者の未来がひとえにリザーバーの双肩にかかってあることを認識する時、到着遅れにも似た感動を禁じ得ない。
愚地独歩著「全選手入場前史」 第1巻 「終末を越えて」 序説・第3章より抜粋
関連レス
91 名前:水先案名無い人 :2007/08/16(木) 16:26:26 ID:sdtKj3670
まさかビューティフルドリーマーが来るとは思わなかった。完敗だ。
コメント
最終更新:2012年12月07日 12:12