迷探偵
「違うよ」
と、彼女は言った
それに対し俺は問う
「何が違うんだよ、探偵なんて、みんな同じようなもんだろ?」
と、後になって思えば、かなり失礼な言葉だ
しかし、彼女は気にした様子もなくこう言った
「違う」、と
はっきりと、そう、言った
「君の言う探偵って言うのは、浮気調査とかの依頼を受け、地道に作業をする探偵のことかな?」
……随分現実的な探偵だな
「もしかして、一発で密室殺人とかの犯人をつきとめる、名探偵かな?」
小説でもない限りそれは無いと思ってる
「君が知っているのなら、その探偵は、ヒントを主人公に与える三毛猫や、少年達の集まったものかもしれない」
それもまた、小説
やっぱりそうだ、現実、探偵なんて何も変わらない
全てが全て、地味で目立たない仕事なんだ
「しかし、悪いな、そう期待しているのならその期待を裏切らせてもらおう」
そう、思っていた
「簡単にいうと、私は、探偵でも名探偵でも、猫ではもちろん、少女であるが探偵団に入った覚えはない」
まぁ、私の知らないところで入っているなら別だが、と彼女は付け加えた
そして、彼女は言った
「つまり私は――」
この言葉は俺の世界観を変え、これ以降よく耳にする言葉である。そして――
「――迷探偵だ」
俺の人生を変えた言葉だ
現在、高校三年生
特別に言うことがあるとするならば、少々頭が良いことだろうか
それ以外では、運動神経も、見た目も、何もかも、言うことなど何もない平凡な高校生だ
高校ではいま、期末試験の真っ最中
ここまで来ると、授業中、休み時間、問わず騒がしい俺のクラスもおとなしいものだ
「んーこんなもんか」
静寂のなか、ふと口に出てしまった言葉に吃驚し、つい、身を屈めた
……気付いた奴はいないか
なんとなくではあるが、テスト中に声が出てしまうと、かなりの罪悪感に襲われる
理由としては、他の人のテストの邪魔をしてしまっているんじゃないか
カンニング的な行為に当てはまるんじゃないか、など数々の不安要素があるわけだが
実際、それで、テストが駄目になった、と言うのを俺は聞いたことがない
単に、俺が知らなさすぎるだけかもしれない
で、テストの結果としては……
うん、まぁまぁ出来ているんじゃないだろうか
恐らく八十点は固いと思う
数学なのだが、数学は少ない公式を覚えればいいだけなので、楽だ
もしかしたら九十点に行くかもしれない
そうなればいいのだが
もう高校三年だ、受験も迫り、点数はとっておかないとまずい
おっと、自己紹介が遅れてしまったかもしれない
俺の名前は小説なので無しとさせていただこう
あだ名で呼ばれた事はほとんどない
単に俺が目立たない人間であるからなのだが……
結局、自己紹介などできていないな……
まぁ、そんなことはどうでもいい
テスト中ではあるが、時間があるので、告白をさせてもらおう
告白、といっても俺の好きな人の事などでは無い
俺の過去についてだ
なぜ、それを言うのか、それは俺が小説家志望である、ということだ
いや、これを読んでる人からすれば、俺はすでに小説家なのだが……
俺が小説家になれなかった場合、この文章は誰にも読まれないだろう
しかし、なぜ、高校三年のテスト中にこの小説を仕上げようとしているのかというと
俺はもともと、高校生でいるうちに小説を投稿するつもりでいた
最初は、テスト最終日の今日、家に帰り書くつもりだったのだが、決意の問題で書かせてもらうことにした
その、小説の内容が俺の過去だ
これもまた決めていた事なのだが、最初の小説は面白いかどうかは別として俺の過去の話をしようと思っていた
この、二つのことから、俺が数学のテスト中に自分の過去の小説を書くという奇妙な構図が出来上がったというわけだ
では、語りだそう、俺の過去を少しずつ
語るのは俺なので、どうしても、現在の俺の目線になってしまうがそこは考慮していただこう
これは過去のとある数日間の話である
数日間で、出会い、仲間になり、そして別れた
そんな彼女との話だ
過去といっても、それほど昔の事でもない
せいぜい二年前のことだろう
細かく言えば二年よりも長いのだがここは約二年前と言うことにさせてもらう
時系列、と言うのは大切な時もあるが、今はその時ではない
この話が現在に続いているわけでもなく、ただ、俺が未練に思っているだけだ
なので、細かい話は飛ばしていく
その日は、確かかなりあつかったと思う
それ以前に、その夏は例年よりも暑く、最高気温が更新されたのもその年だったと思う
細かくは覚えていないが、特にその日は真夏日と呼ぶにふさわしい日であった事は確かだ
その時の俺も、頭は悪くなかったはずだが、点数が悪く酷く落ち込んでいた
細かい点数はもう覚えていないが五十点台もあったはずだ
今考えると俺自身、どうしてその程度で堪えていてのかわからなくなってしまう
俺も人の身だから失敗もあるはずなのだが
まぁ、高校生活最初のテストで点数が低いのがショックなのはわかるが、なぜそこまで落ち込むのだろう
自分のことながらわからない
しかし、その時の俺はかなり落ち込み、最終的には家に帰らない始末だ
俺はこのころにはもう一人暮らしなので、親に怒られるということは決してないのだが
このころの俺は今では考えられないような事をしでかした
「君は本当によくわからない」だ
いや、この段階で言われても何が何だかわからないか
そこは、謝ろう
謝るぐらいなら消せよ、と言われるかもしれないが、テストに持ってきたのが小さな消しゴムだったため先程使いきった
なので、そのままでいこう
さて、俺の過去の話の続きだが
俺はその日、公園で一夜を過ごす事にした
公園の寝心地の悪さは今でも覚えている
ベンチの上で寝るのがこんなに苦しいものだとは、今も昔も思っていなかった
いや、そんなことはどうでもいい
俺が話したいのは、その翌日のことだ
次の日の朝
まぶしい朝日に目覚めた
といっても、確か夜中に何度も目覚めていたはずだから、その時起きたという感じはしなかった気がする
体中が痛かったが、その時に起きてしまったのには理由がある
音が鳴っていたのだ
かなり騒々しく、うるさい音
誰でも聞いた事があると思うし、今でもたまに聞く
サイレンだ
警察の車、パトカーと呼ばれるものが発する音だったと思う
その時の俺にはパトカーか、消防車か、音での区別はできないが
かなり近くでなっていたし、パトカーも見えたので警察だとわかった
しかし、パトカーの音が聞こえただけなら不思議ではないのだが、その時はなぜか、違った
何が違ったかというと、パトカーが近くに居続けていることが違ったのだ
まぁ、このことは今考えてみると、という感じで、そのときは何が何だかわかっていなかったように思う
それでも、基本通り過ぎていくパトカーの音が継続して聞こえるのを不審がったのか、俺は起き上った
そこには、ブルーシートが敷かれていた
つまりは事件があったわけだ、轢き逃げや、最悪殺人が
野次馬が少ないことから、事件からあまり時間が経っていないのかもしれない
いや、朝早くとは言え、あんな騒々しい音がしたら、野次馬も来るものなのかもしれない、と当時の俺は考えた
恐らくではあるが、そんなことを考えていたと思う
今考えれば、あそこまで騒々しいのに、人がいないということは警察が人払いをした、というのが有力な考えな気がする
その時の俺はそこまで頭が働いていなかったのだが、人払いを警察がした筈なのにどうして自分が公園で寝ていられるのか
それは単純に、事件の関係者と思われているのは確実なのだが
そんなことは露知らず、俺は警察に近づいた
警察のひとりが、「起きたのか」みたいな感じの事を呟いた
そういうと、警察官全員が振り向いた
そして、その中にひと際目立つ人間がいたのだ
その時の光景は今も覚えている
黒く長い髪、花柄のワンピースを翻し、こちらを向いた少女の姿
その時の俺は目を見開いたんじゃないだろうか
単純に、事件現場に少女がいたことの驚きか
はたまた、少女の美しさに見惚れてか
まぁ、恐らく後者だと思う
今でも、その時の感覚は憶えている
そして、その後彼女は俺の顔をみて
綺麗に微笑むのだった
これが、俺と彼女の出会いだと思う
こうして俺と彼女は邂逅したのだ
このあと、俺的には衝撃的な出来事がある
それは単純に、その少女が俺が何も聞いていなく
朝、起きた時、なにかおきたのを知ったという言葉を聞くと
見事な推理をして、警察に今朝この場所で見つかった死体の犯人を教えたらしい
らしい、というのはその後に知ったことのためだ
その時の俺は何かを話す(実際は推理だったわけだが)彼女に見入っていた
いや、魅入っていた、というのが正しいかもしれないが
今考えると、明らかな一目惚れなわけだが、当時の俺はそこまで考えていない
というか、当時の俺は何を考えていたのだろうと思えてくる
それでもわかるのは、殺人事件の犯人や、この場にさっきまで死体があった事よりも、彼女の方が俺の中では優先順位が高かったことだけだ
しかし、それが異常だとは今でも思わない
もし、今、同じ状況になったとしても、恐らく同じ反応になるだろう
それだけ、彼女は魅力的だったと思う
そして、事件が解決した後の話
「ありがとう」
そこで初めて彼女の声を意識して聞いた
その時、ありがとうと言われた理由がわからなかったが、考えてみれば簡単だ
ヒントをくれてありがとう、そういう意味なのだろう
そして、そのあと予想外の一言を言う
この質問が無ければ、ここで話は終わっているだろう
「私はどう見える?」
え?と、間抜けな返事を返す
だが、どうか、このことは責めないで欲しい
誰だって美少女に話しかけられればあわてるだろうし、間の抜けた返事になるだろう
しかし、彼女は気にした様子でもなく、もう一度問う
「私は何をしている人間に見える?」
そう問われた
今考えると、ここまでの情報的に言うなら、頭の良い女子高校生が良いところだろう
しかし当時の、特にこの時の俺はかなり直感的に答えた
探偵だと思う、と
まぁ、警察でないのに、事件に口出せる人間を俺は探偵以外知らないし、その言葉もあながち間違っていないのだろうが
現実で、探偵が警察に口出せることなど有りはしないだろう
恐らく俺が探偵と言ったのは、警察に凛々しく話す彼女を「美少女名探偵」とでも思いたかったのだろう
しかし、彼女はかなり驚いた表情でいたと思う
今の俺でも驚くような回答だ、驚くのも無理はない
しかし、彼女はすぐに平然とした顔になり
小さく微笑んだ
「そう言われたのは初めて」、と
その時の俺は、失敗した、と思っただろう
言うべき言葉を間違えた、と
いや、そう思う時点で俺は彼女に惚れていると見て良いわけだが、それはまぁどうでもいい
ここでは、探偵、という答えはあながち間違えではないのだから
っと、いや、間違いなのか、彼女が居たら怒られるところだ
その間違えをその時の彼女も指摘した
「うーん、おしい、かな」
俺は驚いた
何に驚いたのか、今考えると細かい事はわからない
多分、適当な答えがアタリに近かったことにだと思う
俺は質問した
おしい?
何が違うのか、それを聞きたかったからかは分からない
だけど、そう質問したことはたしかだ
「探偵、はあってるけど、探偵としての種類がちがう」
その時俺はつい顔をしかめたと思う
多分、何が違うんだと思ったんだろう
だから、つい言ってしまった
何が違うんだ?同じようなもんじゃないのか?、と
「違うよ」
と、彼女は言った
それに対し俺は問う
何が違うんだよ、探偵なんて、みんな同じようなもんだろ?と、後になって思えば、かなり失礼な言葉だ
しかし、彼女は気にした様子もなくこう言った
「違う」、と
はっきりと、そう、言った
「君の言う探偵って言うのは、浮気調査とかの依頼を受け、地道に作業をする探偵のことかな?」
……随分現実的な探偵だな
しかし、俺が現実でしる探偵はそういうものだ
「もしかして、一発で密室殺人とかの犯人をつきとめる、名探偵かな?」
小説でもない限りそれは無いと思ってる
「君が知っているのなら、その探偵は、ヒントを主人公に与える三毛猫や、少年達の集まったものかもしれない」
それもまた、小説
やっぱりそうだ、現実、探偵なんて何も変わらない
全てが全て、地味で目立たない仕事なんだ
「しかし、悪いな、そう期待しているのならその期待を裏切らせてもらおう」
そう、思っていた
「簡単にいうと、私は、探偵でも名探偵でも、猫ではもちろん、少女であるが探偵団に入った覚えはない」
まぁ、私の知らないところで入っているなら別だが、と彼女は付け加えた
随分と細かい説明だと思った、今でも思う
そして、彼女は言った
「つまり私は――」
この言葉は俺の世界観を変え、これ以降よく耳にする言葉である。そして――
「――迷探偵だ」
俺の人生を変えた言葉だ
迷探偵
そのあと、彼女とは別れた
最後に彼女は言ったのは
「迷探偵っていうのはね、何かを迷い、迷わし、事件を解決する探偵のことさ」
と、単に迷探偵の説明だったわけだが
その時は、その意味はわからなかった
しかし、迷探偵は他の探偵とは違うものだというのはわかった
そして家に帰り、ひとりで寝た
ここまでは、一応前座だ
つまりこれからが本番ということになる
しかし、だ
問題が一つ浮上してきた
つまりは、テスト時間の終了である
小説とは無関係なので、言わなくてもいいと思ったが一応言う
テストが終わってしまうと、
皆さんの中には、この文章をどこに書いているんだと思う人もいるだろう
一応答えておくと、問題用紙の裏である
俺の高校の数学のテストはなぜか問題用紙が二枚ある
その裏に書いていた
元々俺には、文章の才能が無くとも、文字を小さく書く才能は有ったのである
もしかしたら、未来というか今日の家で、この小説をパソコンに打ち込み、サイトに投稿しているかもしれない
まぁ、投稿するぐらいはいいか
もしかしたら現在、この小説をパソコンで読んでる人もいるかもしれない
まぁ、最初はネットで感想を仰ぐというのが一番だろう
基本だ
あと五分ほどらしいのでとりあえず前座はここまでにしておこう
面白いかどうかはわからないが、内容は期待していてもいいかもしれない
これは小説のようで、現実にあった話だ
俺もまさか、こんな事が起こるとは思っていなかったが……
それはまぁ、また今度
読んでる人にとっては連続したものだし、書いてる俺としてもそこまでのタイムラグ生じるわけではないので、この言い方はおかしいかもしれないが
そういえばあと一つ
もしかしたら俺はかなり書くスピードが速いのかもしれない
後編の始まりだ
現在、午後七時
パソコンにて執筆中だ
やはり、最初はどこかのサイトにあげるつもりだ
それがいつになるかは分からないが……
それでは、後半を語っていこう
彼女と出会った翌日、曜日は土曜日だった
いわいる休日である
一応、友達はいるが、休日は殆ど部活、という奴が多く、帰宅部である俺は必然ひとりで過ごす事になっていた
最初は、確かゲームセンターかどこかへ行こうと思っていたはずだ
いや、実際午前いたはずだ
どうもその辺の記憶が曖昧で、もしかしたらゲームセンターなどには行っていなかったかもしれない
だからといってこれは変な事だとは思わない
まぁ、もう約二年前のことだ
ここまで思い出せたのも奇跡だと言える
セリフは実際は違うセリフを言っていたかも知れないが、出来るだけ忠実に再現しているつもりだ
それでも、この後の事はかなりしっかりと覚えている
俺の人生でここでしか無かったことだからか
これ以降何も無く平凡に過ごしていたからか
どちらかはわからないが、おそらくどちらかだ
昼から話せば俺は昼飯をどこでとるか、迷っていた
結論として俺は小さな軽食屋で食べようと思った
近くにあったのが理由だったと思う
その近くでやっている店は確か家族ぐるみでやっている店だったと思う
まぁ、細かいことはのちほど
入った時の事を言わせてもらうなら、驚きだ
入ったとき、ふと、足が止まった
理由としては唯一つ
彼女がいた
その軽食屋に彼女が座っていた
時間的に昼食を取っているのだろうが、その時の俺は嬉しいさで一杯になり、そこまで考えていなかった
彼女もこちらに気づいたんだと思う
もしかしたら俺が話かけたのかもしれないが、そうであってほしくない
まるで、俺がナンパでもしたかのようだからだ
どちらにせよ彼女は最初にこう言った
「君は変なお兄さんじゃないか」、と
いきなり変なお兄さん、と言われて吃驚した
変な、と言われた事もそうだが、お兄さんと言われた事もそうだ
多分同い年だと思うんだが……
しかし、俺は変な?と言葉を返した
「ん?一目で探偵と見抜いたのは君だけだ」
たしか、そう言った
そう言われれば変な人扱いも仕方ないかもしれないが(いや、本当にそうか?)
納得しなければいけない事は確かだ
そのあと、確か何かの世間話をしたんだと思う
内容はさっぱり忘れたが、そこはまぁ良いだろう
話していると、からん、という金属音が聞こえた
これはこの後重要なこと(そこまで重要ではないかもしれないが俺の中では重要だった)なので憶えている
恐らく、その音に反応してか、たったったと、中学生ぐらいの女の子が走っていく
家族での営業のため、休日は手伝っているのだろう
中学生で、こんなバイトみたいな事をしていいものか、と思ったが家の手伝いのようなものだし良いだろうと勝手に納得した
この場においてそんな事はどうでもいいわけだが
ここで重要なのはその後のことだ
聞こえた
音、というか声
あれほどの声をこの時以前も以後も聞いた事がない
それほどまでの叫び声
確か女の子の声だったはずだ
その時、動けない俺の前で彼女が動いた
今考えれば流石探偵、というところではあるが
当時の俺は一拍遅れてから彼女について行くように走り出した
厨房に入り、部屋を抜け、ついた部屋、恐らく店と家がつながっているためだろう、リビングだった
そこで目に飛び込んできたものは今でも思い出せる
え、
声がでてしまったのを憶えている
いた人は五人なのを憶えている
彼女と、さっきの女の子、男性が二人、男性の中、一人は大学生という感じでもう一人はひげを蓄えた大柄な男性だ、最後に女性が一人居たことを憶えている
後でわかることだが、彼女を除く全員が家族らしい、女の子と大学生の男が兄妹、大男と女性が夫婦らしいことも
全員が、驚いた表情や強張った表情を浮かべているのも憶えている
そして、その女性は下にいたことも
そして、その女性から何かが突き出ていることも
そして、それは突き出ているのではなく突き刺さっているのであることも
そして、その女性が赤い何かに覆われていたことも
そして、女性を覆う何かが液体であることも
そして、その女性が生きていないのも――
そう、確かにいた人数は五人だ、俺を含めれば六人
しかし、いた人数と生きている人数にはズレがあったのだ
いた人数は五人、生きている人数は四人
この時俺は初めて、人の死体をみたのである
この時俺は初めて、いる人数と生きている人数がズレているという事態に初めてあったのだ
そんな中、こもまた、印象の濃かったことだが
彼女だけは冷静だった
「警察」、と言った
周りは何も反応出来なかった
かまわず彼女はいった
「警察をよんで」、と
俺はその時少しだけ彼女を恐ろしいと思った
今となれば冷静に見れる
彼女のしたことは正しいと
だけど、その時の俺には思えなかった
死体を前にどうして平然としていられるのか
そう、思った
細かくはやはり憶えていない
だけど彼女が警察を呼び、警察が来るまでの数分間、彼女以外の人間は身動き一つできなかったのを憶えている
時間経過
もうすでに、その日の夜になっていた
警察がきてから、俺は何をしていたのか憶えていない
これは時間の経過からではないだろう
恐らく、その時の俺でも、何をしたのかはわからないと思う
それでも、その後の警察の説明は思い出せる
警察はこう言った
「これは殺人です」と
彼女は警察の横に立ち、小さくうなずいていたと思う
彼女が遠くに見えた瞬間であった
その後の警察の説明はたしか
「女性はナイフで刺された傷での出血多量だと思われます、刺された場所が場所なので、自殺の線は無いと見ています」
と言った、そして、
「つまり、殺人、そして犯人はその時刻この建物にいたあなたがたの誰か、ということになります」
俺は、人生最初で最後の「犯人はこの中にいる」を聞いた
そして割愛すると、俺と彼女はここに泊まってくれだそうだ
事件の解決をいうなら、かなり早い
特に推理をしたわけではなく、すぐに解決する
なので、事件になにかあると思われてもこまるし
彼女と、これ以上のなにかがあるのかと言われても何もないと言うしかない
だけど、自己満足のためにこれ以降の展開を説明していこう
その夜、俺は借りた部屋に一人でいた
客室だそうだ
普通の家に客室がある事に吃驚していたような気がする
いくら部屋が与えられたと言っても、監禁されたようなものなので気分は決してよくなかった
それから、五分ぐらい経ったころだろう、部屋に誰かが来た
つまりはノックがあったわけだが、開けると誰がいたか
ここは驚け、彼女だ
彼女が俺の部屋にきたのだ
その時の俺は唖然としたと思う
冷静になれば、晩飯の用意ができたとか、風呂が沸いたとか、そういう業務連絡であると思うだろう
しかし、その時は思わなかった
いや、思えなかった
彼女は俺の横をすり抜けて通って部屋に入っていったからだ
その動きはかなり素早く滑らかだったが、見えないほどに人間離れしてもいなかった
しかし、その時の俺は目で追うことすらできなかった
自分で不甲斐なく思う
吃驚して後ろを向き、彼女を見た
確か彼女はベットに座っていたと思う
もしかしたら、机だったかもしれないが
彼女は俺にこう話した
「君は僕が探偵だと知ってるよね?」
俺はこくり、と頷いた
「探偵、いや、迷探偵なわけだけど……基本的に仕事は探偵と同じだ
事件を調査し、解決へ」
少しいきをすって続けた
「まぁ、やり方は違うわけだけどね」
やり方が違うのはわかっている
「そこでお願いがある」
え?とかえした
というか、俺が彼女に言った言葉は本当に少ないと今思った
「私と一緒に事件を解決しないかい?」
これが彼女が言った最初で最後のお願いだ
俺は当然、頷いた
そして彼女は驚いた顔をし、
「君は本当によくわからないな」
と言った
これ以来俺は自分が変人なんじゃないかと、思うようになった
「で?」
これは、大学生の男(以下兄)が言ったことだ
兄はまだ続け
「どうして俺たちは集められたわけ?」
今答えるとしたら、事件の真相は全員の前で言うのがスジだからだが……
当時の俺は黙っていた
この後に俺はまぁまぁ大事な仕事があるわけだから仕方ないことだが……
「そこのお兄さんが呼べっていった、って警察の人が言ってたよ?」
女の子(以下妹)が言った
それを聞き、大柄な男性(以下父)は
「犯人がわかったんじゃないか?ミステリーでも、犯人が分かったら全員を呼ぶだろう」
と言った
この人はかなり的を射た事をいった
実際、その通りと言うことなので俺は
「その通りですよ」
と言った
軽く言ったようだが俺はかなり緊張していたと思う
そりゃそうだ、この後することはかなりな人権侵害と言うかなんというかと言う感じだ
家族の人達も驚きの声を上げる
「こんなに早くか?まるで探偵だな」
と父は言った
そして俺は答える
「探偵は探偵ですが、唯の探偵じゃありません」
と、そしてそこから言葉を続ける
続く言葉は唯一つ
「――迷探偵です」
家族は首をかしげる
しかし、兄が声をあげ
「で、結局犯人は誰なんだよ」
あわてないでください、と俺は言う
今、と言うか当時も思ったが、探偵と言うのは面倒くさい仕事だと
まぁ、早めに謎解きを始めておこう
「単純に、犯人を突き止めるには証拠が必要です」
自分の言葉ながら少しイラつくな
「証拠があったの?」
と、妹がいった
「あったんじゃないの?ないなら犯人が分かっただなんて言わないでしょうし」
彼女はいった
単なる演技なわけだが、周りの人間は不審に思わなかった
「いや、あったわけじゃない、あるのを知っただけです」
周りは首をかしげる
「とりあえず、細かい謎解きは明日の朝でお願いします
もう暗いので休みたいです」
随分適当なやつである
まぁ、過去の俺だが
周りは反発する
「ふざけるな!犯人がいるのに、朝まで寝ていろと!?その間に逃げるかもしれないだろう!」
父が言った
「まぁ、そう怒んなよ」
大学生の人間は
「犯人だけ、閉じ込めとけばいいだろ?」
俺は飛び上がりそうになるのをこらえながら
「そうですね、なら少しあなたはついてきてもらえますか?」
他の人は部屋にどうぞと言い
「明日の朝、もし、あなたの部屋からナイフが出てきたなら、犯人はあなたです」
俺はそう、兄に言った
全員が目を見張り、兄は自分の部屋に戻ると言い張ったが、俺が力任せに部屋に連れて行った
今の俺ほどではないにしろ、俺はまぁまぁ力のある方だった
確か、格闘技を何かやっていたと思う
事実、兄は結局あきらめおとなしく俺についてきた
部屋に入ると、兄を椅子に座らせた
兄は俺をにらむがそれも構わず、少し大きな声で言った
「お前の部屋にナイフが見つかればお前は終わりだ、おとなしくしているんだな」
と、
廊下には一応彼女が立っている事になると思うが、本当に立っていたかどうかはわからない
今のセリフは彼女に向け言ったわけではないが、恐らく家にいる全員が聞いたと思う
そして俺は兄が俺に向かって何かを言う前に紙を兄の前に差し出す
今だから言える、これは結構難しかった
すぐ叫ぼうとする兄に向って紙を出せる時間は短かった
まぁ、大声でのセリフを言いながら出せばいいのだが、そこはやめた
因みにその紙の内容は
『静かにしろ』
そしてその紙を一枚めくる
紙は二枚持っていた
そして二枚目を見せる
その後、兄は静かに眠った
そして俺は部屋を出た
彼女と合流する
これでいいのか?と質問をする
「ばっちり」
と彼女はいった
少しばかり嬉しかった
その後俺と彼女は音をたてないように兄の部屋へ向かった
単純にこの事件を終わらせるために
足音
普段、気にする人などいないだろうが、静寂の包む場所にいるとかなり気になるものだ
その音が聞こえた
真夜中の兄の部屋
押し殺したような小さなものだが、はっきりと聞こえた
きたのか?と彼女を見る
彼女もこちらを見る
恐らく、来たわね、とでも言っていたのだろう
そして足音は近づき、ついには扉の開く音がする
その後、足音は俺たちの目の前を通過し部屋の奥に入っていく
因みに俺と彼女は今、部屋の入り口近くにある、人がかなり入りそうなクローゼットの中だ
そして足音が目の前を過ぎてから数秒
俺たちは外に出た
恐らくいきなりの音に驚いたのかわからないが足音がとまる
ここから先はかなり憶えている
彼女は冷静に部屋の電気をつける
そこにいたのは
大柄な男、父だ
最初は驚いた様子だったが父はすぐに落ち着き
「おや、なぜ君たちがそんなところに?」
と言った
平然を装っているつもりなのだろうが、額に汗が浮かんでいた
汗が浮かんでいなかったかもしれないが、焦っていたのはたしかだ
彼女は
「貴方こそどうしてここに?」
それに対し
「いや、そこの男の子が兄を連れていったからね、もしかして兄が犯人なのかと思って証拠を探しにきたんだ」
とっさにしては良い答えだったかもしれない
実際はとっさにでた言葉ではなくあらかじめ決めていた言葉だろうが
「こんな真夜中に?」
今度は俺が聞いた
まるで最初からそう言えと言われているかのように素早く
「警察に見つかったら犯人扱いされそうだったからね」
「電気も付けずに?」
間を空けず質問をする
そして彼女は
「そこのゴミ箱の中身を見て」
と、俺に言った
すぐにゴミ箱の中身を見た
そこには
ナイフがあった
充分に切れ味のよさそうなナイフだ
父はそれをみて
「やはり兄が犯人だったのか」
と言う
「違いますよ」
と返す、父は不満そうな声をあげ
「どうしてだい?ナイフはそこにあったんだろう?なら兄が犯人じゃないか」
その通りではある
しかし、俺はそうではないことを知っている
「実は僕は二つ嘘をついていました」
父はよくわからないような感じだった
ここで、先程の事を言うべきだろう
つまりは二枚目の内容である
「僕は実は証拠を見つけていたんですよ」
「なんだと?」
あの時見せた紙の内容は……
「でも、おかしいですね、僕がそのナイフを見つけたのは」
「妹の部屋だったのに」
『すまなかった』だ
最初から兄が犯人だとは思っていなかったわけだ
「でもなんでこんなところにナイフがあるんだろうな、妹の部屋にあったのに」
父は唇をかむ
「妹が持ってきたんじゃないか?罪をかぶせるために」
にやりと彼女が笑った
そして彼女は言う
「妹さんは来ていませんよ?」
「……なぜわかる」
この時は俺もわかっていなかった
なぜわかるのか
「だって私、兄がどんなことを言うか気になってこの斜め前の部屋にずっといましたから」
あ、だから部屋の前にいたのか、当時の俺はそう思ったろう
実際はいなかったかもしれないがな
それを引き継ぎ俺は言う
「つまりですね、ナイフを運んできたのはあなたしかいないんですよ」
父は驚いていたが
「なら指紋でも見てみるがいい、指紋はついていないだろう」
その時の俺はわからなかったが、今考えればこの人、父は馬鹿だ
指紋がついていないわけがない
「貴方今、手袋付けていないですよね」
「それは……しかし、ナイフに指紋が付いていたところで、私以外が触っているかも……」
すでに言い訳
彼女はそれもわかっている
しかし、なにも言わない
「なら、部屋に帰ってください、このナイフは僕が預かりますから」
父は胸をなでおろし部屋を出て行こうとする
まぁ、その行動が間違いだったわけだが
俺は父に近づき、後ろからかなりの力で押す
そして、倒れた父に馬乗りになりナイフを首に突き付ける
「静かに」
ここまでが彼女に言われたことだ
すぐに彼女がよんだ警察が入ってくる
そして父はつかまった
最終的には事件はかなりあっけない結果に終わる
そりゃそうだ、現実で密室殺人など起こらないのだから
これで後編の完全なる終了だ
これ以降あったことは
彼らに俺が探偵ではない事をいったことぐらいだ
ここまで読んでくれた人には本当に申し訳なくなる
読んだ人は恐らく楽しんではいないだろうが、どうかこれを小説と思ってくれ
実際のところ、俺の思いを書いただけの日記のようなものだ
しかし、俺の中ではかなり大きな出来事だっただけに、つい形にしてしまった
だらだらと書いたものを読んでもらいありがとう
感動も何もなかったが異常でおしまいだ
それでは、さようなら
2011年7月夏 東京某所にて
追伸
投稿しようと思っていたがどうも決心出来ずにいた
しかし、今日しようと思う
理由とするなら、もう卒業したし、良い節目だと思ったからだ
そしてもう一つ
先日、ファーストフード店で彼女と出会った
彼女は俺を見ても何の反応もしめさなかった
恐らく忘れているのだろう
もしくは忘れようとしている
まぁ、迷探偵なんて黒歴史にしかならないから仕方がない
しかし、聞いてしまった
彼女が友人と話している話の内容を
単に、大学に行っても元気でね、みたいな会話だったが、その中にこういう言葉があった
彼女の友人がこういった「――ちゃんは○○大学にいくんだよね?」と
――○○大学
この周辺で一番頭の良いところだと言っていい
全国で見ても、この大学の卒業生というだけで、頭の良い印象を受けるような大学だ
そしてもう一つ
その大学目には聞き覚えがあった
俺のいく大学だった
つまり、大学が同じなわけだ
すこしニヤニヤしている顔を抑えつつ、一気にコーヒーを飲みほした
因みにこれをどこに書いているかというと、高校の復習を、と思って持ってきたノートにである
これから、この話を投稿するつもりだ
読んでくれる人がいるといいが……
最後に一つ
コーヒーを飲みながら字を書けるのは一種の才能じゃないだろうか?
2012年3月冬 東京某ファーストフード店にて
- これで分かったことですが、小説をかくのはかなり難しいです -- 管理人 (2012-03-27 18:11:09)
- あと、一発で書ききってしまうのはやめようと思います -- 管理人 (2012-03-27 18:11:55)
- 投稿ではなくなってるけどね…… -- 管理人 (2012-03-27 18:17:35)
最終更新:2012年03月27日 18:17