現実
これは現実じゃない
現実ではありえない
夢というのは曖昧だ
たとえ夢であると自覚できたところでそれは変わらない
元々、夢と言うのは寝ているときにみる幻覚のようなものだ
曖昧で、幻のようなのは当然
夢から覚めたあとも、夢の内容を思いだせもしない
思いだせるとしたらそれは、かなり印象的だったといえる
夢は自分の奥底にある願望をみるものだ
奥底に眠っているので自覚はできない
しかも、夢はその願望をかなり大まかに、雑に叶える
なので、夢をみる人にとっては、別に望んでもいない夢をみる
つまり、印象的にはならない
憶えていることがまずない
しかし、つまりはだ、印象的でありさえすれば、内容を忘れることは無い
絶対に
俺がなぜこんな話をするのか
それは今俺が印象的な夢を見ているからだ
夢だ、そう確信できる
たとえ、周りの草がかなりリアルで、触り質感まで再現出来ていたとしても
これは夢である
しかし夢であるということは、俺の深層心理なわけだ
こんな事を俺は望んでいたのだろうか?
単に、何も変わらない生活が退屈になったのかもしれない
だからこんな夢をみる
「―――――!――――――!」
何かが俺に叫ぶ
形は人に近い
俺のすぐそばにいる
多分女だ、いや、メスと言うべきか?
見た目でいうなら、小さい
人を小さくした感じだ
目測で三センチほど
それが、顔の横にいる
別に俺の肩に乗っているとか、そういうことじゃない
飛んでる
空を、まるで虫、トンボのように飛んでる
忙しく羽を動かしながら
羽を動かすの大変そうだなぁと、思った
しかし、それよりも
ここは、草原である
詳しいことはわからないが草原であることは確かだ
周りには草しかない
木も無ければ何も無い
草と土、それだけだ
それだけのはずなのに、暗い
一か所だけ、俺のいる場所だけ、暗い
まるで、草原にある木の影のような感じだ
なぜ、影ができるのか
別に、光があるからとか、そういうことではない
単純に何かがその光を遮っているのだ
大きな影
それは目の前にあった
二足で直立するなにか
恐らく動物
というか、モンスター
頭に真っ赤な角を持ち、大きな口に禍々しい牙を持ち、足と手の先には鋭い爪
そして、これも赤い鱗に包まれた鎧のような体
異様だ
しかも、かなりリアル
今のゲームならこれくらいリアルに出来るのだろうか
おかしいな、これは夢だ夢のはずだ
随分とリアルな夢だな……
小説等では、夢だと思っていたら実は現実で……みたいなことがよくある
しかし、所詮小説、現実にそんなことはおこらない……はず
ほら!例えば「現実は小説よりも奇なり」ってことばが……
いや、これじゃだめだ、そんなことを言ったら確実にこれはリアルじゃないか
リアルではない
これは前提である
その時、ブンッと風切り音と共に、大きく化物の手がふりあげられる
「え?」
聞こえた声が自分の声であると理解するのに二秒かかった
前にいる化物が手を振り上げたのは、俺を切り裂くためだと気付くのにはさらに五秒
そして、切り裂かれたら確実に死ぬと考えるまでにはついに十秒かかった
反射的に目をつぶる、これは死ぬと気付いた瞬間にできていた
――死ぬ
さっき見たはずだ
あの鋭き爪を
引き裂くための爪を
あれを食らえば確実に死ぬ
当たり前のことである
これが夢であるとしてもそれは思う
夢だろうと、死ぬのは目覚めがわるい、これは比喩ではなく目覚めが悪くなるのは必至だ
俺は思った、さっさと夢が、さめればいいのに、と
そして夢のリアルさゆえこう思った
――死にたくない、と
「…………」
周りを見渡す
……慣れ親しんだ俺の部屋だ
何もおかしくない
「夢かー」
夢だったようだ
どういった夢を見たかは憶えていない
かなり酷い夢だったような気がするが……
まぁ、そんな夢なら憶えていないほうがいいだろう
知らなくてもいいことだしな
「さて、朝飯を食いに行きますか」
俺はリビングへすこし急ぎ気味に行った
結論から言おう、夢だ
そう、これは夢である
今日、朝起きて、ジャムをつけたパンを食べ、学校に行き授業をうけ、晩御飯に……ちょっと忘れてしまったが……
いたって平凡な日を過ごしたわけだ
平凡も平凡
いたって普通、友達と話し、家族と話し、授業を寝過ごしたりもした
だからこそわかるのかもしれない、これは夢だ
そういえば思いだした、昨日の夢もこんな感じだったと思う
違う要素は当然ある
変わっていないこと、これもまた存在する
変わっていないことは周りの風景、草原だ
そして、周りを飛んでいる小人、目測で三センチほどの
「もう!昨日は本当に情けなかったわね!」
小人が喋った!
ちょっとツンデレっぽい
気のせいだろうか?
違うことというのはだ
目の前にいる者が違うということだ
昨日は怪物、今日は……
「まぁ、初めてなんだし、しかたなんじゃないかな?」
美少女がいた
「……女子?」
俺の夢はここまで落ちたか……
そんな女子に飢えてたのかよ……
美少女は少し驚き
「最初にする質問がそれとはね」
俺も正直思った
「大体、この世界がなんなのか、とか、私が一体全体誰なのか、とか」
そんな質問、と続けた
確かにそう言った質問が妥当ではある
「そうよ!そういう質問が来ないと私の出番がないじゃない!」
小人は言った
「…………」
「何?質問があるなら言ってみなさい?」
「いや、でもなー」
「遠慮はしないほうがいいと思うよ?彼女は一応ナビなわけだし」
ナビ、という意味はわかりかねるが直球で質問しよう
「……ツンデレ?」
「……え?」
「いや、だからお前ってツンデレ?」
「…………」
理解しようとしているのか考え込む
そして理解したのか顔を真っ赤にして
「ち、違うわよ――ッ!」
大声で叫ばれた
「どうして、私がそんなものになっちゃうの!?別にツンデレなんかじゃないわよ!」
「ふふっ、君はなかなか面白いな」
誉められた
「なんで俺はこんな事聞いたんだ……」
軽く自己嫌悪
そして小人は、すこし怒った感じに……
「……他に質問は?」
……かなり怒っている感じで言った
なので全力で期限取りを
「あーならテンプレ通りに一つ、ここはいったいどこだ?」
「おっようやく出たか、その質問」
「……いま説明してあげるわ」
「うんうん」
「あなたは、ここがどこだと思ってるの?」
「夢」
直感で答えてみる
まぁ、俺は今でもここを夢だと思ってるし
ふと前を見ると
「…………」
「…………」
凄く驚いていた
「いや、驚いた、君はなかなかの観察力だな」
「?」
「これは君の出番が少なくなったな」
「そうですね」
「なんですか?」
「正解だよ」
「へ?」
なんのことだか
「ん?わかっていったわけではないようだな」
「何がです?」
「さっきの発現よ!さっきの!」
「……ここが夢って話?」
まさかとは思うが
「そうそう」
「あなたの言うとおりここは夢なのよ」
……正解だった
いや、やっぱりって感じはあるけど
「夢……随分と現実感があるというか」
「おや、それは流石にわからないか」
わかるわけがない
さっきここにきて、説明も受けていないのだから
「でしょうね、わかったら私はなんのためにいるんですか」
説明のためなのか?
そういえばさっきナビとかいってたな
「なら、まず世界の仕組みから説明した方がいいんじゃないかな?」
その言い方はまるでこの世界がゲームであるかのような言い方だった
「仕組み?」
「そう、仕組み」
「まずこの世界がどういったものか説明するわね」
「あぁ」
説明が始まるらしい
もし説明が苦手な人間がいるなら流し読みで良いと思う
説明の内容はわからんが
「MMORPGってわかる?」
「は?」
「MMORPG」
唐突なる質問
「いや、知ってるけど」
確か、オンラインゲームのジャンルだったような……
詳しい事はわからないが
「なら話が早いわ、この世界はね、それなのよ」
「……ゲーム?」
「ゲームじゃなくて夢ね」
「そしてシミュレーションでもある」
ちょっと胸騒ぎ
俺はゲームとかやるタイプだから
「MMORPGでシミュレーション?」
「そして夢」
そして少し間を空けた
「だからこの世界はこう呼ばれている」
またまた溜
普段もったいぶるのは嫌いじゃないんだが今はやめて欲しいと思った
「――DMMOSRPGとね」
最終更新:2012年04月29日 17:54