「やっぱりいないみたいだな」
窓から外を見つめながら、僕はつぶやいた。
そう、あの忌まわしい出来事から3週間がすぎていた。
事の起こりは、北陸方面に漂着した1隻の不審船。
今となっては確認のしようがないのだが、ネットでささやかれたのは
例のお国の細菌兵器の実験中に感染した科学者たちが、処分を恐れ
サンプルとともに、日本に密入国したのだった。
ただ上陸の際、地元警官とのトラブルでサンプルが破損、細菌が・・・・
「死ぬ訳じゃないが、感染はしている・・・・」
そう、生きている限りは問題はない・・生きていれば・・・
潜伏期間ともいえるこの症状が、政府の対応を遅らせた、もっとも最初から
解っていたとしてもこの国じゃ対応出来なかったかもしれないが。
日本中が感染するのに大して時間はかからなかった、そして世界にも。
感染した人が死んで初めてゾンビになる。すでに死去していた者はならなかった
この特殊な症例が対応策を遅らせた最大の要因でもあった。
すなわち、葬儀場、病院で大量に発生した。
肉親がよみがえる!生還する!喜んで抱きついた親族が最初の犠牲者だった
悲しみから 喜び、一瞬後には辺りを切り裂く悲鳴!
訳が分からず、腰を抜かし逃げまどう年寄りが犠牲になる、元肉親、親戚に
どうすることも出来ずただ逃げるのみ。
「ゾンビマニアでもなきゃ無理だよな」
「なんだい?」僕の独り言が気になったのか、彼は怪訝そうに尋ねた。
「ごめんごめん、独り言 これからどうするかな?ってね。」
元々マンションの一人暮らし、普段から起きるはずもない事を想定した部屋選び
食料等の備蓄、アイテム(ドラクエ?!笑)を貯めこんでいた。
「一度付近を探索してみるか・・」僕は伸びをしながら振り向いた」
「本気か?」彼が驚きの表情で答える。
「ああ、引きこもってばかりじゃ状況も解らないし、めぼしい物があれば
調達出来るしね」
そう、状況が見える範囲だけという少なさにも嫌気がさしていたし、もう少し
立てこもるか 移動するかの判断材料も必要だった。
「たぶん生きてる人がいるなら、ホームセンターか体育館みたいな場所だろう」
彼が呟いた、一般的な思考ならそうだろう。
会社での同僚、腕っ節が強く 目の前の状況に対し的確に動ける人だった。
今回の騒動でも、あわてず自宅に立てこもっていたのを僕が救出?に行ったっけ。
「まぁ君なら大丈夫だろ、しかし俺の部屋を尋ねてきた時の格好は笑ったけれどな」
上下つなぎにモトクロスのプロテクター着用 なぜか手には水鉄砲!?
「北斗の拳?の登場人物みたいだったぜ(笑)」
「まぁね、俺なりの武装かな」
わざわざ頭をつぶして歩かなくても、静かに行動し、目が見えてるゾンビには
サンポール目つぶし攻撃で、すり抜けるだけで良いのだから。
「んじゃ行ってきます、留守番よろしくね」
ドアの外に奴らがいないことを確認して、そっと屋外にでた。
「それほどの異臭はしないか・・冬が近づいていることも幸運だったかな?」
MTBにまたがって 走り出した、かわいい女の子がいないかな?なんて不謹慎な
事を考えながら
最終更新:2010年12月11日 15:45