「まずはホームセンターだな・・」
ヘルメットの中で呟きながらも周囲への注意は怠らなかった。
いくら奴らの動きがのろいとは言っても、急に物陰から飛び出されたらたまらない。
玄関先や車の横をすり抜けるときは特に用心した。
辺りにはケンタッキーフライドチキンを食べ散らかしたような肉片が散らばっていた
目的地もこのようになっていないと信じて・・

建物が見えてくる、駐車場入り口に折り重なるように止めてある車が混乱初期のままであることは一目で分かった。
「あれじゃ脱出手だては無いな」
ホームセンターに立てこもることは悪くはない、むしろ望ましいことだと思う。
最近は、100円コーナーなどという物も併設され、日用品 果ては食料品まで揃っている、バリケードを築くための資材、工具、発電機、思いのままだ!
しかし立てこもるのは、訓練された人たち? 指揮官に忠実な兵士?
いいや違う、わがままで人任せ、人の意見にはとりあえず反抗し 逆に意見を求められるとキレる若者、変に常識ぶって味方を得ようとする偽善者。
仮に優れた指導者がいたとしても最後には内部分裂、精神の弱い人が自暴自棄になり
陥落するのではないか?
間近に建物の様子を見て、自論が正しかった事を再確認した。
きちんと防御されていたものの内部から壊した跡があり、そこから奴らが侵入したみたいである。
車で逃げようとしたのだろう、出口付近では何度も体当たりして道をあけようとした
車の周りに肉片、いや骸が転がっていた。
「こりゃ内部は悲惨だろうな」手持ちの武器?(笑)作動確認の後 内部に!

「ゲームSTART!」そう呟いて屋内に入る、そうリセットはないゲームだ。
中は異様なくらい静かだった、ヘルメットのバイザーをあけ五感を集中する。
視野に入る奴らは5体か・・・手元のカートを押しながらゆっくり近づく。
「とりあえず視覚を奪うか・・」手元の水鉄砲で目を狙って撃つ、一瞬目を押さえる
ゾンビたち、痛みは無いのだろうが生前の癖は抜けないようだ。
この方法はすでに経験して有効だったから心配はしなかった、視覚を奪われた奴らに
こちらを捕捉する手だてはない、歌でも歌えば別だが(笑)
呆然とその場に立ちすくむか、異音がすればそちらに歩いてゆく・・・
手元の商品を入り口と反対側に投げてやる、カラカラカラン、、、と小さいがよく響く音だ、馬鹿ゾンビどもは音のする方向にゆらゆら歩いていく。
「んじゃ、お仕事お仕事♪」 カートに電池、ライターオイル、その他不足してきた物資を乗せてゆく、ただし警戒は怠らずひっそりと。
帰り道は簡単だった、車が通れるルートを確認しながらやってきたため、乗り捨ててある軽トラックに荷物を積んで帰るだけだった。
車のエンジン音でわらわら姿を現すゾンビだが、ルートさえ確かなら怖くはなかった。

「ただいま~♪」「お帰り!無事だったかい?」
自宅に帰ると、彼が待ちくたびれたような顔をして出迎えてくれた。
「とりあえずこれ!」ポケットから戦利品の調味料を投げて渡す
「サンキュー」左手でキャッチしながら彼は笑った。
ごつい体に似合わず料理好きで、備蓄食糧を上手に調理してくれていた。
こういう極限状態において食事は重要な意味をもつ、うまい物を食っていれば
やはり思考もまとまるという訳だ。
「で、状況はどうだったんだ?」フライパンを片手に聞いてくる。
「ああ、食事しながら話すよ」プロテクターをはずしながら答えた。

「で、今後だけど・・」食事の後、彼は口を開いた「移動は延期かい?」
「ゾンビの頭かち割るのに抵抗がないか?」
「いいや、まだ解らない・・たぶんいけると思う」
「焦ることはないさ まだね・・」

今日の探索で、推論を裏付ける事が多々有ったのは有益だった。
それはこの地域においてはゾンビが減っているということ。
なぜか?行動形態を見ていて気がついたのだが、奴らは動く物に反応する
すなわち一端襲われだすと、付近の奴らが気がついて続々とやってくる。
獲物が無くなればその場にとどまるのだが、たまたま移動好きなゾンビがいれば
まさになんとかのネズミみたいにゾロゾロついてゆくのだ。
又、他にも我々のように立てこもっている人たちも結構居ると言うこと。
帰り道、車の音に反応するように窓の開閉があった、助けて欲しそうな顔を
こちらに向けながら・・・
叫べば奴らに気づかれるため無言だった、しかしいつまで持つか?
「やはりあの計画に移るべきか」自分自身に問いかけていた・・・。


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最終更新:2010年12月11日 15:46