『篠崎 瑠璃』

コトコト・・・・小さな音で目が覚めた。おねーちゃんがコーヒーを作ってくれている
もう長い間食事らしい食事をしていない・・ダイエットになるかな?なんて思うけれど
誰に見せることもなく死んじゃうんだろな。
「ねぇ・・」「なぁに瑠璃」「お父さんたちは無事だよね・・・ただ帰ってこれない状況なだけだよね」「きっとそうよ、だから私たちも頑張らなきゃ・・ね。」「うん」
何度と無く繰り返されるおきまりの会話、大喧嘩して騒ぎたかった!けれど・・・
「もう少しの辛抱だよね、私頑張る!」こんな事しか言えなかった。

今日も退屈な日が繰り返されるのだろうか・・・そう思っていると おねーちゃんが階段を駆け下りてくる 呆然としている私の横を通り過ぎ玄関を開けようとする・・・
「!!な、何をするの?」 「ごめん瑠璃!最後の賭よ 分かって!」

玄関から入ってきたのは 普段ならあんたバカ?っていうような格好をした二人組だった。 けれどヘルメットを脱いだ顔は優しそうだった。


ホームセンターに向かう軽トラの荷台で僕は尋ねた。
「ねぇ ルリルリ」「まだその呼び方で良いって言ってないけど?」「うっ」
「いいわ、助けてくれたことだし・・・で、私はなんと呼べばいいのかな」
少し低いトーンで話す彼女に こう答えた 「おにいちゃん・・・」
一瞬軽蔑とも取れる眼差しを向けるも・・「そうね、こんな時代だもの・・いいわ」
「で、何?」 「いや、、返事が欲しかっただけだよ」
またもや あきれたって顔をしながら彼女はため息をついたようだ。

「じゃぁ打ち合わせ通りに」「おう!」
商品搬入口についた僕たちは気合いを入れた、後戻りはできない!とにかく今日このセンターを制圧しなくては・・・
以前きたときにシャッターの鍵は開けてある、15cmほど開けて覗く 「3体だ」
僕がシャッターを開ける、気がついたゾンビは振り向く 二人のスナイパーが的確に目標を捉える 奴らを沈黙させるのに3分かからなかった。
人数と言うものは意味を持つ、二組だと前後左右に索敵できる・・・
まずは奴らの数を増やさないようにしなくては・・とりあえず目つぶしをかけながら
破られたバリケードに向かう、以前車を真横に止めて帰ったのが効いている、新たな進入は無いようだ・・応急処置の封鎖をして店内の掃討に戻る。

一時間後 すべてのゾンビを殺した後(殺すと言う表現もおかしいが)再度戸締まりの
点検に廻った、以前来たときにも感じたのだが、きちんと補強はされている・・
しかも要所要所に戦闘用の道具が配備してある。
「これで持ちこたえられなかったのか・・・・」「最大の敵は人間だな」
ケンシロウが死体を引きずりながら呟いていた。

次の日からは多忙を極めた、どのような施設もそうだが緊急脱出について考えておかなければならない。
搬入口内部をまず片付け、軽自動車型ジープを2台ほど調達してきた。
「新車じゃないの これ!!」ルリルリは驚いた顔を向けて聞いてくる。
「えっへっへ~」そう、ディーラーの展示車はご丁寧に鍵付きである、しかも新車なら
思わぬトラブルに見舞われることも少ない、ガソリンがほとんど入っていないため
手つかず状態だった。
「化粧直しをしなくちゃな」すべての窓の外側に金網を溶接してゆく、作業灯、予備バッテリー 備品類 実質2名乗車状態だったが問題はなかった。
自然とパートナーが決まりつつあった、僕はルリルリ、ケンシロウは真由美ちゃんだった。
車のキーは一人ずつが胸からぶら下げることにした、今後人が増えてもあくまでもこれは我々のものであると自覚させるために・・・

天気の良い日は駐車場の確保に動いた、ゾンビを処分し金網を強化する。同時作業なのでなかなかはかどらなかったが、時間だけは有り余っていた。
乱雑に止めてある車も使えそうなものは、補強加工していった。
人数が増えて移動するときに争いが起きぬように、真由美おねいさんの提案だった。

ホームセンターに立てこもって一週間が過ぎた頃だろうか、一通りの準備は出来、人数が増えても大丈夫な状態だったが、ここで意見が分かれた。
助けにゆこうと言うルリルリと、ここにたどり着ける人のみが良いという真由美ちゃん。
この点については 僕もケンシロウも決断出来ずにいた。


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最終更新:2010年12月11日 15:46