尚也とのロリ好き同士のコンタクト(以下ロリコン)は続き、尚也がなぜ逃げなかったのか、
どうして死んだのか。またどうして、ゾンビと化した後このように会話が出来るように
なったのかを僕は理解することになった。
「どうして逃げなかったんだよ。君の家族はみんな無事なんだろう?君だけ何故」
「逃げられなかった。僕に妹がいることは無論君のことだからチェック済みだね?」
正直こいついちいちうるさい。
「実は彼女がゾンビに襲われたとき助けようとして噛まれた。ほどなくゾンビになることは
わかっていたから、自衛隊の艦艇がきても残らざるを得なかった。逃げてもゾンビになって
被害を増やすだけだからね」
「それで、家で死ぬことにしたのか」
尚也は、淋しげに答える。
「そう。どうせ死ぬなら生まれ育った自分の家で死にたかった。屋根裏に閉じこもったのは、ここでなら
ゾンビになっても外に出て迷惑をかけることもないと思ったからだ。それに・・・怖かった。いずれ仲間
になるとはわかっていても、食われて死にたくはないものな。せめて安らかに死にたかった」
「なんで・・・僕と話ができるんだよ」
「そう。最も重要なのはそこだ。僕はゾンビになったときわかったんだ」
「教えてくれよ」
尚也はくくっと笑う。心なしか、微笑んでいるように思える。
「君も死んでみればいいよ」
「ふざけないで教えてくれ」
「わかった。まず話は15年前にさかのぼるんだが・・・」
「それちょっとはしょれないか」
話が長いのは勘弁だ。僕は理解力があるほうではない。
「ふう、相変わらず気が短いんだね。わかった。なるだけ簡単に説明してやるよ」
そして尚也は語り始めた。語るといっても、頭の中に言葉が流れ込んでくるような感じだ。
ときにはイメージさえ伴ってくる。
「事の発端は15年前カナダで起こった。ある大学の発掘隊がおよそ6000万年前の地層から信じられないものを発見した。
それは異様なまでに肥大した頭部を持つ恐竜の化石。かなり高度の知性を持っていたようだ。同時に石造りの
建築物なども見つかったからね。その化石だが一つのところで固まって発見された。どうやら何かの理由で一気
に絶滅したらしい。その理由はそのときはだれも分からなかった。その発掘のとき、一人の発掘隊員が小さな
青色の結晶を見つけた。隊員がそれを確認しようと掌に乗せたら、掌の上ですうっと解けてなくなってしまったんだ
隊員もそのときはそんなこと気にもとめなかった。15年後自分が交通事故で死ぬまでね」
尚也は一気に語った。ちょっと待て。尚也は家で死んでから一歩も外に出てないはずだ。なんでそんなこと知ってるんだ?
それに知性を持った恐竜なんて見つけたら大発見じゃないか。でも今までそんなこと聞いたことも無い。
僕はその疑問を尚也にぶつけた。
「なんでそんなこと知ってるのかって?聞いたんだよ。その発掘隊員に。知性を持った恐竜がいたなんて報道が
なされてなかったのは、社会的影響の大きさからだろう。日本はそれほどじゃないけど、アメリカでは原理主義が盛んだろう?
人間が唯一の知性を持った生き物じゃないなんてことがわかったら、その影響は大きいからね。もっとはっきりしたことが
わかるまで発表はさけていたんだ」
どういうことだ。発掘隊員に聞いただって。尚也にそんな知り合いがいたなんて初めて聞いた。
「ああ、繋がってるんだよ。僕らは。全員ね」
尚也はわけのわからないことを言う。不思議がる僕に、
「話の途中ですまないけど、彼女を止めて欲しいんだ。僕の意識のある部分がこわれてしまう・・・」
真由美姉さんはまだどかどかと尚也の死体をけり続けている。僕は真由美姉さんに事の顛末を話した。
半信半疑だった真由美ねえさんも僕が本気なことをみると、蹴るのをやめて瑠璃ちゃんの世話をはじめた。
「彼女には・・・すまないことをした。止められないんだ。自分の体が勝手に動いて彼女を陵辱するのは嫌だった。
意識ははっきりしているんだけどね。動かせないんだ。脳に意識があるわけじゃないから制御できない」
「ふうーーーん」
僕はなんとなく流したが、すぐ尚也の言葉に気がついた
「脳じゃないって・・・どこにあるんだよ。それに繋がってるってなんだよ」
「順番に答えるよ。質問その一の答え。僕の意識は胸腺というところにある。正確にはそこにある青色の結晶の中だね。
質問その二の答え。ゾンビになった人間の意識と繋がっている。ゾンビになった地球上の全員とだ」
僕は信じられないと目を見開く。そんなことはありえない。
「信じられないようだね」
「あたりまえだ」
尚也は物分かりの悪い奴だなあという感じで、僕に説明を続ける。
「まあ理由は詳しくはわからないけどね。繋がってる中には当然学者もいて、その人はEPR相関がどうとかいってたよ。
なんでも結晶の中に常温で超伝導を起こす物質が混ざっててクーパー対の・・・」
「もういい」
僕はおなかいっぱいになってしまっていた。信じられないことばかりだ。呆けたような顔をする僕に尚也は
「まあ、要点はこういうことだ。死んだ人間の意識は胸のところにある結晶に移る。その結晶は他の全ての結晶と繋がっている
距離は関係ない。結晶に移るのは人間の意識の中でも高度な部分で食欲、性欲などといった部分はそのまま脳に残るようだ。
ゾンビが人間を襲う理由はそれだね。人によって残り具合に若干差があるようだけど。いずれにしろ脳に残ったのは残りかす
だから、高度な判断は無理だね。おまけに意識の残った結晶からでは体を制御できないんだ。意識が残ったまま自分の
家族や友人にに襲い掛かるのは・・・つらいね。止められないんだから」
「ふううーーーん」
うなずくしかない僕。理解力を超える話が続く。
「生きた人間をおそう理由は簡単でね。本能で熱を感知してるだけだ。結晶にはインジウムアンチモンの化合物が含まれてい
て、これが熱を感知して脳に送る。要は赤外線センサーだね」
「ふむふむ」
「結局、結晶がなんなのか?それはまだ・・・分からない。生物学者の意識はこれはウイルスなんじゃないかとも言っている。
意識に寄生し、それを媒介にして自分を成長させるウイルスだね。ウイルスは恐竜を滅ぼした後、冬眠していたんだ。次に
自分が寄生できる、高度な意識をもった生物が現れるまで。発掘隊員は感染した後、そうとは知らずに世界中にウイルスを
ばら撒いていた。そう・・・15年間の間ね。君もあの姉妹も感染しているよ。そして・・・胸腺で育ってる。
ゆっくりとだけど、確実に。君の意識を媒体にしてね。そして最も大きい結晶を持った人が死んだとき・・・世界中がこうなったんだ」
後書き
ゾンビのくくりだと飽きるとか言う人もいたから方向性かえます。
最終更新:2011年01月19日 20:19