ブラインドを通して差し込む朝日のまぶしさに、老人は目を覚ました。
額の汗をぬぐうと、枕もとの水差しから直接水を呷る。寝起きの喉には生ぬるいぐらいのほうが刺激がなくてよかった。
窓ガラスに近寄り、まずブラインドの隙間から外をうかがう。今日も剣呑な来訪者はいない。ゾンビもこう暑くては外出する気にはならんのだろうか、ふとそんなことを思った。
顔を洗おうと洗面所に向かおうとして、カウンターに置かれたメモに気づく。
「近くの神社に涼みに行く 尚也」
老人はメモを読むと、少し考えたあとで奥の仮眠室を開けて中の様子をうかがった。
中にはまだ眠りについている孫娘の他には誰もいない。
「おい、葉月起きんか。朝だぞ」
老人の声に、葉月は目を開いてあくびをひとつしてから伸びをする。
「ん、うーん。おはよう、お祖父ちゃん。あれ、尚也さんももう起きてるの」
目をこすり軽くあくびをしてから隣に置いたベッドが空なのを見て、質問する。
「わしが起きたときにはもう居らんかった。ほれ、神社に出かけとるらしいが、その分だといつ出て行ったか分からんか」
渡されたメモを見て葉月は記憶をたどったが、物音がしたような覚えは無かった。
「涼みに出たのなら、もう帰ってきてもおかしくないよね」
額に浮かぶ汗の玉を拭いながら、時計を見る。
日が昇ってから二時間といったところで、朝の爽やかさも終わりつつある。
「あの神社のあたりには野犬が多い。少し様子を見てくるから飯の用意をしておいてくれ」
「分かった。ご飯は三人分でいいよね」
「ああ、消化のいいもので頼む。まだ病み上がりだからな」
老人は旧式の拳銃一式をそろえると、麦藁帽子をかぶり強くなりつつある日差しの下へと歩いていった。
本当は神社のシーンで迎えに来た老人との会話から始めるつもりだったんですが、
冗長になるとは思いながらもあげてミマスタ。
最終更新:2011年02月10日 12:53