「注意する点を再確認する。まず指示が出るまでグリップは握らず、トリガーに指もかけないこと。弾が出なかったとしても銃口は覗かず、物を落としても自分では拾わないこと」
一直線に張られたテープの前に立ち、緊張した面持ちで正面を見つめる日向に、尚也は一つ一つの注意をゆっくりと繰り返していく。
「言い換えれば訓練時以外の射撃は厳禁。射撃訓練をしているときはそれ以外の動作はしないということだ。注意しすぎるということはない。そしてあわてる必要もない」
硬く返事をする日向に深呼吸をさせている間、尚也は機器のセッティングを進める。
「さて、はじめようか。チェンバーチェック、マガジンチェック開始」
まず、弾丸が装填されていない状態であることを確認させる。
「よし、弾が入っていないことを確認できたらリロードだ。銃は標的に向けたままだぞ」
日向はマガジンを取り出すと、グロックにゆっくりと装填していく。その際に人差し指で弾丸がマガジンに入っていることを確認することも忘れていない。
スライドを引きそして離す。これで引き金を引けば弾が出るという危ない状況になった。
「今の状態で引き金を引けば弾が出る。ではアンロードだ」
日向は標的に銃口を向けたままの状態で、マガジンをリリースして左手に受け止める。台の上にマガジンを置いてからイジェクトポート(排莢口)に左手を被せる。
銃を反転させてスライドを引き、初弾を抜く。弾はマガジンの横に置く。
「よくできた。まずは今の動作を繰り返して、安全確実に行なえるようにする。弾を安全に装填することと排出することができなければ、銃を使い捨てることになるからだ」
尚也は再びリロードとアンロードを繰り返させる。腕の筋肉が疲弊した状態でも自然に動かせるようになるのが目標だ。そのことはあらかじめ言ってあるため、日向も真剣だ。
台の上に並んだ弾丸が増え、マガジンが空になると、今度はマガジンに弾込めを行う。
日向の指の力では全弾をそのまま入れるのは難しく、クイックローダーを使わなくては最後まで入れるのに時間がかかる。それでも尚也は自分の指で入れさせた。
常に道具があるとは限らない。理想から言えば、弾を使い切る前にことを済ませることだ。それが無理ならば薬室内に最後の一発が入った時点でマガジンを換えるべきだろう。
常にさまざまな状況を想定し、それに対処する方法を考えること。
常日頃からそうしておけば、いざというときにパニックにならずにすむ。
そのために尚也はわざわざ道具の使い方を教えながら、それを使わせない。
日向もそれが分かっているため、一つ一つの手順を試行錯誤しながら進めていく。こういった場合は、時間よりも確実性を重視しなければ訓練の意味がないからだ。
後書き
日向の初めての訓練です。
訓練中に手取り足取りだの、触れ合う手だの、みつめあう眼と眼なども考えましたが、なるべくそっけない内容にしておきました。
エッチなシーンは訓練後の次の街で出そうかなとも考えてますが、訓練に8週間は長いですかね。
どの程度訓練を続けるのが適当なのかいまいちつかめてません。
さてどうしたらよかんべ。
最終更新:2011年06月03日 19:44