前書き

漏れもちょっと書かせてくらはい。
タイトルは
「悪魔の死ね死ねゾンビーズ ゾンビ軍団逝ってよし! ユキヒロ大地に立つ 主役の名前はヒロユキぢゃないよ、ユキヒロだよ (仮題)
でつ。
みなさんみたくうまく書けんけど許してくれろ。


「よし・・・クリアだ」
ユキヒロは思わず呟いた。
グゥ~ッ。
同時に腹の虫が鳴いた。
思えばずっとぶっ通しでゲームをやり続けて、睡眠はおろか食事もしていない。いったい何時間ゲームをやっていたのかさえ良くわからない始末だった。もっとも、ユキヒロにとっては新発売のゲームを徹夜でやることはそう珍しいことではなかったが。
「なんか喰うものあったっけ?」
冷蔵庫をあけてみたがめぼしいものはなかった。何時買ったのかさえよく覚えていないヨーグルトやら、干からびたキャベツやらしか入っていない。棚を見るが、封の開いた食べかけのポテトチップが一袋というありさまだった。
「ちぃ・・・買いに行くか。めんどいなぁ」

外は夕暮れ時だった。ゲームを金曜の朝一で買ってプレイし始めたので今日は土曜だろう。まさか日曜ではないはずだ。自分がクリアにそんなに時間がかかるわけがない
などと考えながらコンビニの前に着いて、ユキヒロはようやくあることに気づいた。
「なんだよ、ふざけんなよ」
コンビニは閉まっていた。
「どうなってんだ? つぶれたのか?」
なんとなしにあたりを見回す。
何かがおかしかった。
人が少ない。というより、いない。車も通らない。おまけに夕暮れ時だというのに電気のついている家がほとんどなかった。静寂があたりを包み込んでいた。
「・・・静かだな、なんか・・・」
ユキヒロは急に不安になった。もしかすると他に人がいないのではないかという妙な感さえ持ちはじめつつ、いそいそと道を進む。
少し行った所にもう一軒別のコンビニがあるはずだ。そこまでいけば確実に人がいる。そうすればこの馬鹿げた感覚から解放されるはずだった。
途中で一台の車が猛スピードでユキヒロの横を通り過ぎていった。
「なんだよ、アブねぇなぁ。ドキュンドライバーめ、逝ってよし!だな」
毒づきながらも少しホッとするユキヒロだった。決して車が通らないわけではなかったのだ。当たり前のことだが他に人はちゃんといたのだ。
ただなんとなく気になったのは今の車の片側が随分と汚れていたことだった。そう、まるで赤黒いペンキを浴びせかけられたかのように。。。


しばらく歩きユキヒロは目的地に着いた。
「おおっと、開いてるじゃねぇのよ、ちゃんとサ」
今度のコンビニはちゃんと営業していた。その証拠に電気が付いている。なんだかうきうきしながら店に入るユキヒロだった。
「ひっ!?」
ユキヒロが店に入ると同時に店員が小さい悲鳴をあげた。
「なんだよ」
思わず呟くユキヒロ。
「あ、あ、いえ・・・い、いらっしゃぃませ・・・」
かすれた声で店員が挨拶した。
ユキヒロはムッとしつつも弁当やらパンを適当に選んでレジにもっていった。
「お弁当はあたためますか?」
「ああ、やって」
ここでユキヒロは店員の態度が店に入ったときと随分違うことに気づいた。さっきはビクビクしていたのに今は妙に明るい。気になったのでユキヒロは声をかけてみることにした。
「あのさぁ、なんかさぁ、あったの?」
「は?」
「いや、なんか、さっきすげぇキョドってなかった? それにここに来るまでに全然ひと見かけなかったし、車もまるで通んねぇしさ、なんかあったのかな~とか思ってサ」
「え・・・? 知らないんですか?」
「なにが?」
「ホントに知らないんですか!?」
店員は本気で驚いているようだった。

「いや、だからなにが?」
「おとといの木曜の夜に新宿の辺りで暴動みたいなのが起きたんですよ。
昨日はどんどん暴動の地域が広がって、今朝からはテレビで外出しないように呼びかけたり、あと、地域によっては非難勧告までしてたんですよ」
「・・・は?なにそれ・・・」 
あまりにも突拍子も無い話にユキヒロは自分の頭が混乱し始めるのを感じた。
「マジな話、それ?ホントに?」
「ほんとですよ。この辺りの人もけっこうみんな家に閉じこもってるか逃げちゃって、今日なんてお客さんぜんぜん来ないですもん。
僕もはやく家に帰りたいんですけど、交代の時間はとっくに過ぎてるのに店長が来ないし、おまけに連絡もつかなくて・・・・。
もし暴徒が来たらどうしようかドキドキしっぱなしでしたよ」
「そうだったんだ・・・」
『それでさっきはビクついてたのか。それにしても、なにが起きてんだ?』
ユキヒロが頭の中を整理しようとしたそのとき、自動ドアが開いて入り口から数人がゆっくりと入ってきた。
思わずそちらに顔を向けたユキヒロは思わず息を呑んだ。入ってきたのは明らかに普通とは違う様子の連中だった。


「な、なんだこいつら・・・」
「ひぃっ・・・」
店員のほうは凍りついたように固まってしまっている。
「アァウゥゥゥ」
唸り声とも嗚咽ともつかない低い呻き声をもらしつつ、ゆっくりと男たちがユキヒロ達のいるレジに向かって歩いてくる。
「・・・暴徒・・・なのか?」
男たちの様子は暴徒と呼ぶにはあまりに異様なものだった。
普通、暴徒というものはノロノロとした動きなどではなく、何より殺気立っているし、棒やらなにかを手にしていることがほとんどである。
だが、目の前の連中は何も手にせず、あたかも夢遊病者のような動き。その肌は見ると紫色に斑になっている。
その眼は虚ろなどという生易しい表現では足りず、白濁して茶色い液体が涙のようにダラダラと流れ、口から洩れる呻き声とあいまって救いを求めて涙ながらに祈る地獄の亡者を思わせた。
それは暴徒というよりはまるで病人。いや、そんな言葉よりももっとしっくりする言葉がある。そう、それは「死人」のようだった。
ユキヒロの頭にひとつの言葉が浮かんだ。
「・・・ゾンビ・・・」
思わず口をついた。
次の瞬間、先頭にいた男が両手を差し出しながらユキヒロにしがみついてきた。ぞっとする冷たさの手がユキヒロの両肩を掴んだ。
「は、離せ・・・!」
「ァアアァァァゥゥ」
男の顎が大きく開かれ、異臭を放つ液体がボタボタと床に落ちた。

「くそったれがぁっ!」
ユキヒロは渾身の力で男を振りほどいた。
ガシャーン。
男はお菓子を陳列した棚に頭から突っ込んで倒れこんだ。
「はぁはぁはぁ・・・」
荒い息でユキヒロは後じさりしていった。背中が壁にあたったことさえ意識できなかった。
ユキヒロの眼は完全に男に釘付けだった。
「なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ、こいつは・・・・」
「アゥウゥゥ・・・」
呻きながら男はのろのろと立ち上がり、また両手を差し出しながらゆっくりとユキヒロに近づいて来る。
男の右手は手首から先がなくなっており、赤黒い液体が流れ出して床に染みをつくっている。
ユキヒロは肩に妙な重さを感じた。目線を落とすとそこには妙な形の物体があった。
「・・・!? う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
自分のシャツに貼りついているものが男の右手首だと気づいたときユキヒロは悲鳴をあげてそれをむしりとった。
ブチュッ。
いやな音を立てて男の手首は床をころがった。
視線を戻したときには男は既にユキヒロの眼前に迫っていた。
「ォオォォ・・・」
「・・・!!」
ユキヒロの頭の中は恐怖で真っ白になった。
腐臭がユキヒロの顔に吹きかかる。
ユキヒロは指一本動かすことができなかった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・!」

ユキヒロは遠くに悲鳴を聞いたように感じた。
男の肩越しにレジの様子が、2体のゾンビに首筋を噛まれる店員の姿が見えた。
鮮血がほとばしり天井にまで飛び散るのがひどくゆっくりと、あたかもスローモーションのようにユキヒロの目に映った。
『死にたくない!』
店員の悲鳴と血しぶきがユキヒロの呪縛を解いた。
「ぎこにゃはぁーんっ!!」
ユキヒロは自分でもわけのわからない叫び声をあげながら男を突き飛ばし、一気に出口に駆け出した。
自動ドアの開くほんの一瞬の時間がひどく長いものに感じられた。
振り向くと男がまた立ち上がりはじめていた。
レジからはぶちぶちと肉の裂ける嫌な音が聞こえてくる。
2体のゾンビが一心不乱に店員の身体に噛り付いているのが見えた。
『はやく!はやく!はやく開けよ!はやくっ!!』
ガァーッ。
ドアが開ききらないうちにユキヒロは外に飛び出した。肩がガラスに当たったが痛みを感じるゆとりさえなかった。
「・・!?」
道路の向こう側から集団が歩いてくるのがユキヒロの目に映った。集団はざっと見て30人以上いるだろうか。
「なんてこった・・・」
集団の歩き方はのろのろとしたぎこちないものだった。どいつもこいつも呻き声を発しつ歩いている。
そしてそれがどういうことなのかユキヒロにはすぐに理解できた。
「なんてこった・・・なんてこった・・・なんてこった・・・」
ユキヒロは呪文のように繰り返しながらゾンビの集団から背を向けて走り出した。

どこをどう走ったのかよく覚えていなかった。なんとかユキヒロは自宅のアパート近くまで戻ってきていた。
自宅に戻ってどうなるものでもなかったがなぜか自然と足は家に向かっていた。人間の帰巣本能というものだろうか。
「はぁはぁはぁはぁ・・・」
全力で走ったのなどユキヒロは高校卒業以来、数年ぶりだった。
頭がくらくらし、ノドが痛み、心臓が内側から胸を叩いているかのように凄い勢いで鳴っている。
辺りには今のところヤツラの姿はない。だが、ユキヒロは恐怖のため走るスピードを落とすことができなかった。
「あっ!?」
アパートの目前の十字路を曲がろうとした瞬間、バイクが突っ込んできた。
キキキ――――ッ!
ガシャ―ン!!
バイクはユキヒロを避けようとして電柱に激突した。ライトの破片が宙を舞う。
「だ、大丈夫か!?」
あわててユキヒロはライダーに駆け寄った。
「うぅ・・・」
「おい、しっかり!」
そのとき、すぐ目の前の家の玄関が開いた。ひとりの中年女性がのそのそと外に出てくる。
「ちょうど良かった。お願いだ、救急車を呼ん・・・」
ユキヒロは言葉を呑んだ。
玄関から出てきたのは明からにヤツラの仲間だった。
「ゥゥウウゥ」
女ゾンビの低い呻き声がユキヒロの全身の毛を逆立たせた。

「アァァウゥウゥゥ」
女のゾンビは呻き声をあげつつユキヒロ達に近づき始めた。
ユキヒロはライダーの腕を掴んだ。
「はやく立つんだ、逃げないと!」
手を貸して立たせようとする。
「痛っ! あ、足が・・・」
「足!?しっかりしろ、さあ!」
ユキヒロはライダーに肩を貸しながらアパートを目指した。ほんの10メートルもない距離だったが
恐ろしく遠く感じられた。
必死の形相でアパートの階段に辿り着く。
カンカンカン・・・。
鉄製の階段を2階に上がっていく二人。
「カギ、カギ、カギ・・・」
ポケットをまさぐり部屋のカギを探す。
「あった!」
カギ穴にカギを差し込みつつ目線を移すと女のゾンビが階段まであと少しというところまで来ていた。
『やばい、やばい、やばい』
ドアを開けライダーと共に中に入り、慌ててカギを閉めるユキヒロ。
「くっ・・・」
ライダーは左足を押さえて玄関に座り込んだ。
「大丈夫か!?」
「大丈夫かじゃないわ。誰のせいだと思ってるのよ。
折れてるわけじゃないと思うけど・・・・」
話しながらライダーはフルフェイスのヘルメットを外した。
ファサッ。
豊かな黒髪が肩口に流れ落ちた。

こんな事態だというのにユキヒロは一瞬見とれてしまった。
ヘルメットを脱いだライダーは美人だった。歳は二十歳前後といったところだろうか。
「女だったんだ・・・」
「あら、男みたいな声に聞こえた?」
苦痛に顔を少し歪めながら女は応えた。
「あ、いや、そんなことはないけど」
ユキヒロは自分がそんなことさえわからないほど気が動転していたことに気づいて恥ずかしくなった。
「さっきのあれが暴徒?」
「ああ」
ユキヒロは頷き、だが一瞬後に首を左右に振った。
「・・・いや、暴徒なんて生易しいもんじゃない、あれは・・・」
ドン、ドン、ドン!
ユキヒロの言葉を遮るかのようにドアが叩かれ始めた。

「もうきやがったのか!」
「さっきの暴徒?」
ユキヒロは女の質問に答えなかった。いや、答える余裕がなかったというのが実際のところだった。
「よし、こっちに」
「え!?でもブーツが・・・」
ユキヒロは女に肩を貸すと部屋の奥、窓際に連れて行く。
女の方は土足のままだということを気にしている様子だったがユキヒロはそんなことを気にもとめなかった。
そんな場合ではなかったからだ。
ドン! ドン! ドン! ドン!
その間もドアはゆっくりと、だが確実に叩かれ続けていた。
「くそっ」
ユキヒロは冷蔵庫や本棚をドアの前に押していき、バリケードを作り始める。
とはいえ、もともと家具の少ない部屋のため作業はすぐに終了してしまった。
明らかにバリケードとしての強度に不足している。
「どうする? どうする? こんなんでいつまでもつ?」
パリ―ン!
ガラスの砕ける音が響いた。
「え!?」
目の前のドアにはガラスなどない。だが、間違いなく音はすぐ近くから聞こえた。
「まさか・・・」
ざぶざぶという水音が聞こえる。それがユキヒロの推測の正しさを裏付けていた。
ユキヒロの部屋の玄関脇は風呂になっている。そして今、ゾンビは風呂の窓を割って侵入してきたのだ。
しかもドアを叩く音はいまだ続いている。それは風呂だけでなくドアの外にも依然としてゾンビがいることを
如実に物語っていた。

最低でも2体いる!
いつの間に増えたのかはわからない。だが、ひとつだけわかっていることがあった。
『はやくこの部屋から逃げなければ・・・!』
ユキヒロは窓にダッシュした。
「くそっ!」
アパートと二階建ての隣家との隙間はあまりに狭く、飛び降りるスペースとして不十分だった。
おまけに、すでに道路にも何体ものゾンビが徘徊していることが見える。
「立って!」
ユキヒロは女に手を貸して立たせると窓枠に足をかけた。そして隣家の屋根によじのぼった。
「はやく!」
女の手を引っ張って上に引き上げようと渾身の力を込める。
女の背後にずぶ濡れになった男のゾンビが迫りつつあるのがユキヒロの目に映った。

間一髪だった。もうあと一瞬遅れたら女はゾンビの餌食となっていただろう。
屋根の上でユキヒロは荒い息をととのえた。
女は屋根によじ登ったせいで痛めた足に激痛が疾ったらしく左足を抱え込んでいる。
「見ろ・・・」
ユキヒロの言葉に女の目が道路に向けられ、そのまま凍りついた。
「・・・!?」
屋根からの景色はまるで地獄絵図だった。
今や数え切れないほどのゾンビが道という道に彷徨っている。
悲鳴をあげながら家を飛び出した男があっという間にゾンビ共に引き倒されその姿を消した。
そこかしこでガラスの割れる音、悲鳴、怒号が響き渡り始めている。
そして風に乗って聞こえてくる生者を呪うかのような無数の唸り声。
没する直前の紅い夕日が町を照らし、あたかも町全体が血の海に染まっているかのようだった。
「な・・・なんなの・・・あれ・・・。あれが暴徒なの? あれが・・・」
「あれは・・・ゾンビ・・・だ・・・たぶん」
「・・・!?」
「・・・やつら・・・人を食い殺してる」
女はユキヒロの目を凝視した。そして、ただただ首を横に振った。
だが耳に届く全ての音が、そして今さっき見た全ての光景がその言葉に同意を示していた。

夜が辺りを包み込み始めた。
ユキヒロも女もこのまま闇に飲み込まれ二度と陽光を目にできなくなるのではないかという
恐怖がじわじわと心に染み込んでくるのを感じていた。


後書き

スレ汚しスマソ
逝ってきま~


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最終更新:2011年06月03日 19:51