自衛隊の到着に因って、組織の再編や指揮権の確認等が会議室で話し合われているが、当面の活動に付いては
拠点の確保という防衛的な性格から付近のゾンビ掃討等の積極的な行動に変わってきたのは大きな前進だった。
これらは非常に歓迎すべき状況であったが、警察幹部に取っては国論を2分した安保闘争時代や銃弾飛び交った
浅間山荘事件等の重大事件を、警察機構だけで解決してきた自負があり、本事件でも初動捜査指揮等の貢献そして
犠牲を省みるにどうしても全体の指揮権を引き渡すには抵抗があった、されどこの緊急事態に際して縄張り争いの
果て協力関係を維持しえず、個別に当たるなどは絶対に避けなければ成らない問題であり、現在はそれだけの実力が
無い事も良く認識していた。
自衛隊側もまた、その事は良く認識していたのであるが指揮権という組織が持つ一番重要な問題を安易に妥協で
解決するには本事件は余りにも重大性が大き過ぎた。
取りも直さず警察側が先任であるという事と、現在の所では自衛隊側には地誌等に付いて不慣れであるという事で
警察側の指揮下に入り、先ずは警察署周辺地域の治安回復とゾンビ掃討作戦を行い共同作業に慣らすという事になった。

夜明け前の朝焼けが始まる4時過ぎ頃、概ね9時頃までに完了の予定で作戦は開始された。
下級指揮官の甚大な損害による不足という理由で、巡査部長代理(階級は巡査長)という立場になり7名2班を受け持って
本隊指揮官の飛島巡査部長の8名と合計16名に自衛隊1個小隊程の部隊と共にバリケードを乗り越えて作戦に参加した
150メートル程度の前進で、30人前後のゾンビと遭遇したが火炎放射器で焼き散らした後に片っ端から頭部を
撃ち抜くといった感じで、初期のゾンビとの戦闘に比べると余りにもあっけなく簡単な作業を思わせた。
概ね署を中心として半径1キロ程度に存在する集団を殲滅し、改めて戦闘集団である自衛隊の火力と戦闘力を確認した。
また、この間に家屋に潜んでいた健常者3名の救助に成功した、事態は少しずつ明るい兆しを見せ始めていた。
この間初動捜査から一緒に行動していた、篠崎巡査の連絡により戦慄すべき光景を目撃する事になった。
それは、恐らくは脱出に失敗したカップルが乗る小型軽自動車で車内には予備食料や雑貨等がぎっしり詰め込まれ
助手席正面のスペースには、可愛らしいクマのぬいぐるみが、ちょこんとつぶらな瞳を投げかけていた。

しかし、中に居る人間の残骸とも言える存在は酸鼻を極めた。
叩き割られたフロントやサイドガラス付近には、肉片と頭髪がこびり付き車内は既に乾き始めた血がべっとりと張り付き
その血塊ともいえる血の海にもたれ合うように、ひと塊になって、それは居た、、。
助手席には引き毟られ巻き散らかされた長い頭髪の塊となって、体全体を齧り尽されしゃぶり尽くされた物体があった
手足はおろか頭部や顔面に至るまで、肉片をそぎ取られ肉片の残滓が真っ赤な切片として白い骨の隙間に垣間見えた
撒き散らされた消化器官からは最後に食したであろう物体が、水っぽい焦げ茶色の汚物として滲み出ていた。
脱出の最後の努力が試みられたであろう半ドアになった、運転席側の物体も同様で顔面の頬肉すら齧り取られ
眼球の消失した眼窩からは赤黒い穴が見えた、足元付近には無数とも言える歯形を残しつつまだ肉が残っていた。
若いカップルだったであろうが年齢を特定する事は困難で、男女の区別さえ辛うじて衣服の残骸から感じ取る事が出来た
そして、、その様な状態にあってなを、我々を感じ取り我々を襲おうと筋肉はおろか肉片すらない腕を持ち上げようと
体を揺すっていた、、或いは助けを求めているのか?
表情の作りようの無い赤い骸骨は、窪んだ眼窩を此方に向け唇の無い口を開け、外見からは想像も出来ない
綺麗な口内を見せていた。
念仏を3回唱えつつ頭部を撃ち抜く時、西沢巡査のすすり泣く声が空しく風に流れていた。



後書き
皆さんごめんなさい、sageと入れた積りがsagrに成っていました。
序にsageと入れ直したのに馬鹿コンピューターがsagrに書き直していました。
ゾンビになって心を入れ替えます。
深夜の製作は怖いので、今宵はこれまでにいたしとうございます。


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最終更新:2011年11月04日 15:46