俺は外の騒音に気づき目が覚めた。

体が重い、まるで鉛のようだ。

バイトを終え自転車で帰宅の途に着いていた。
いつもの道をいつものペースで
アパートへ続く路地にはいり俺は彼女の事を考えていた。

高校時代に知り合い、何度か喧嘩別れをしそうながらも
なんとか今でも付き合っている。
もうすぐ誕生日の来る彼女は俺にバックが欲しいと言っていた。
そんな事を考えながら俺は路地を走り抜けていた。

アパートの下に自転車を置き、彼女に電話をしようとして
携帯を取り出すためリュックをまさぐる。
俺は人の気配に気づき振りかえった。

振り返った先には女がいた。
両手をだらんとさげ何処か虚ろな目をしていた。

素足のままでアパートの前に立つ女。

白い服には、おびただしい血が胸部から下半身にかけ真っ赤に染め上げていた。

「大丈夫ですか、、、」

そう言って近づいていく俺を彼女の血に染まった歯が襲ってきた。

混乱しながらも咄嗟に腕を出し防ぐ。
倒れ込む俺はいったい何が起こったのかともう一度彼女を見る。

彼女の口には何か得たいの知れない物がくわえ込まれていた。

激痛が襲う。

俺はその場所に目をやった。
なくなっていった。
本来そこにあるべき物が俺の腕から消えていた。
失った箇所からおびただしい鮮血があふれ出す。

うろたえる俺は、彼女の口にある物が何であるか知った。

同時に逃げていた。
二階に駆け上がり自分の部屋に向かう。
痛む腕を庇いながらも俺は鍵を開け部屋に転がり込む。

溢れだす鮮血を見ながら俺は意識を失った。

騒音がする。
叫び声が聞こえる。

俺は朦朧としながらも意識を取り戻していた。
体がだるい、重い、まるで重力が何倍にもなって俺を床から開放するのを拒んでいるかのようだった。

傷口が傷む、傷口から何かが俺の中に侵入してくるようであった。

ゆっくりと確実に俺の体は何かに蝕まれてく。

「バックがほしいの」

そう笑顔で言っていた彼女の顔を思い出しながら、俺はもう一度意識を失った

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扉を開ける音がする。

開いた扉から男が出てくる。

男は何処か虚ろな目をしながら遠くを見つめてる。

その腕には大きな傷がある。

男は混乱と絶叫の町へ歩き出す、、、空腹を満たすために、、、、、、。

ーーーーーーーーー完ーーーーーーーーーーーーーーー


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最終更新:2010年12月06日 20:18