良雄は銃を握り締めたまま、何時間も食い入るように画面を見つめていた。
どこの局にチャンネルを合わせても、ここ二日間ほど砂の嵐以外映し出さなくなってた。
世界中にゾンビがあふれていることは想像に難しくなかった。
 冷たく黒光りするトカレフには八発の銃弾が込められていた。
良雄は、七匹のゾンビの頭に弾を撃ち込んだ後、自分の頭に銃口を向けて
最後の一発を発射する姿を想像していた。
「さて、最後の晩餐と洒落込むか・・・」
独り言が口をついて出た。レトルトの白米をカセットコンロで温めながら
テーブルの上に缶詰を並べた。
 五分後、温め終わった白米を皿に盛り、箸を持ったまま手を合わせた。
牛の大和煮の缶詰を開けた瞬間だった。缶から牛肉が飛び出した。
良雄の目の前で牛肉が踊っている。

「しまった、ロメロじゃなくってダン・オバノンのほうだったのか」

 良雄は悲しげな表情を浮かべながら、銃口を口にくわえて引き金を引いた。

       ―――――――終わり―――――――


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最終更新:2010年12月06日 20:30