4日前
朝起きると、子供達がテレビに齧りついていた。
テレビを見てみると、女房が大好きな連続テレビ小説では無く、臨時ニュース
のようだ。子供達に何が起こっているのかと聞くと、
「ゾンビだよ!」
都内で、通行中の人に病気の人が襲いかかり、怪我を負わせる傷害事件が頻発している
とのことだ。民放に切り替えてみたが、民放は相変わらず普段のプログラム通り放送
していた。
何か嫌な予感がした。昨日会った看護婦さんも死者が蘇生するのは、ここに限った
話では無いと。もしかしたら首都圏も似たような状態ではと思いつつ。会社に
電話をした。会社では私の上司の次長は出勤していなかった。どうも無断欠勤らしい。
さらにその上の部長に取り次いでもらった。事情を話して今週一杯の休暇を確保
した。もともと忌引きの予定だったから問題は無かった。その時部長は、
「なんか知らんが、無断欠勤が多くて困る。今日日の若い連中は会社を
何だと思っているんだ。」
嫌な感じはますます強くなった。
兄貴の1BOXを借りて、母や妹が入院している病院に向かった。そこで見た物は、
敷地内に止まっている多数の機動隊車両。出入り口から患者と思われる人が手を前
に出しながら、出てきている。それを機動隊員達が取り押さえている。
一部車両は出てくる人達に対し、放水銃で放水している。一晩たったら状況は、
悪くなっているようだ。沈静化に向かっているようではない。ここでは事態は
まだ病院内にとどまっているようだ。
実家に帰ると、みんなテレビに齧りついている。臨時ニュースだ。
内容は、今まで病院でいやというほど聞いてきた、あの人肉喰いである。
都内やその近郊で多数の病人が、通行人に襲いかかり怪我人が発生している。
テレビには、病院で今まで見てきたような、蒼い顔した人が通行人に襲いかかり、
噛み付き、噛み千切った人肉を食べている映像が映し出されていた。
私は病院で、見たこと全てを家族に話した。それを聞いた家族は浮き足だった。
私の女房は、
「どこか安全な所に逃げよう。どこがいい?」と言い出したが、いったい何処に
逃げればいいのだ。地震だと学校等の広域避難所が普通だが、この場合はあてはまり
そうにない。
警察署?は、警察自体がパンク寸前のようなので無理。
ホームセンター?。は、まだ通常の営業をしている。そこに篭城なんて出来ない話だ。
人肉喰いの伝染病患者を渡り合う前に店員とやらなければならないなんて。
隣の県にある自衛隊の駐屯地?。安全だろうが中に入れてくれるか分からん。
不特定多数の人が入れる所は危険。家に立て篭もった方が安全だという結論になった。
昨日、保存食等の買い物はしていたが、今日は更に買い込むことになった。
兄貴は、実家に置いてあった仕事用のジェネレーター(工事現場によくある発電機)の
整備と補充用の燃料も手配始めた。
その夜。
テレビは、NHK&民放を問わず全て通常の番組はキャンセルされ、新種の伝染病?
の話一色になった。
この伝染病に侵された患者が人を襲い、人肉を食べている。発生件数は時間の経過と
共に飛躍的に増加している。この件について厚生労働省が対応チームを編成し、対応
にあたる。警察は患者を隔離するのに出動している。
子供達は「ゾンビ!ゾンビ!」と喚いているが、まだゾンビという言葉は放送の中で
は使われていない。あくまでも伝染病?患者だ。
家は要塞のようになった。要塞なんてものは見たことはないので多分、近い状態では
無いかとおもう。
出入り口は完全に封鎖され、食料等のストックは2ヶ月分はある。発電機等もあるし、
いざとなれば、4t車だってある。4t車の荷台には、工事現場で使うような、
プレハブ事務所みたいのを積載もした。
最終更新:2010年12月06日 20:40