- 井戸に現れて皿をかぞえる、という定型で語られる怪異。
『番町皿屋敷』が有名だが、同様の話は日本全国にある。
- 折口信夫は、「河童の話」の中で、大坂近辺に行われていた遊戯歌を記している。
頭の皿は、いつさら、むさら。
ななさら、やさら。ここのさら、とさら。
とさらの上へ灸(やいと)を据ゑて、
熱や 悲しや 金仏けい。けいや。
また、『嬉遊笑覧』に引く土佐の「ぜぜがこう」の文句に、
向河原で、土器(かはらけ)焼ば
いつさら、むさら、ななさら、やさら。
やさら目に遅れて、づでんどつさり。
其こそ、鬼よ。
蓑着て 笠着て来るものが鬼よ。
この唄を謡いながら順番に手の甲をうち、唄の最後に手を打たれた者が鬼になるという。
『今昔物語集』の中で、女房が白鳥となって、夫を捨てて去る時に書き残した歌として
あさもよひ 紀の川ゆすり行く水の いつさや むさや いるさや むさや
があり、この下の句が転じて「いつさら むさら」と皿を数える形に転じたのではないかと論じている。
河童の頭に皿があるのは、水神が頭に皿や笠をかぶっていたり、また「鉢かぶり」等とも関連するとして、
こうした「皿を数える」唄と水神との関連から、やがて「皿数え」の怪異譚になったのではないかという。
平戸には、士屋敷の下女が皿を割ったので切りつけたら、海へ飛び込んで河童になったという話もあるとか。
参考文献
『古代研究 II 』折口信夫
最終更新:2013年08月23日 20:50