子の曰わく、惟だ仁者のみ能く人を好み、能く人を悪む。
(先生がいわれた、「ただ仁の人だけが、人を愛することもでき、人を憎むこともできる」)
『論語』里人第四
神のみを愛し、自分だけを憎むべきである。
パスカル『パンセ』
待つ
憎むとは 待つことだ
きりきりと音のするまで
待ちつくすことだ
いちにちの霧と
いちにちの雨ののち
おれはわらい出す
たおれる壁のように
億千のなかの
ひとつの車輪をひき据えて
おれはわらい出す
たおれる馬のように
ひとつの生涯のように
ひとりの証人を待ちつくして
憎むとは
ついに怒りに到らぬことだ
石原吉郎『石原吉郎詩集』