ギリシア火――柳灰、硝石、硫酸、硫黄、乳香と樟脳とをまぜた土瀝青、およびエチオピア羊毛をえらんで、いっしょくたに煮詰めよ。この火はひじょうに燃えやすくて木材にまつわって水中までも蹤(つ)いてゆく。もし以上の組成分に液体ニス、瀝青油、テレピン、強い酢を加えていっしょくたに混ぜあわせ、日に干すか、またはパンを取り去った後の窯で乾燥するかする。そのあとで麻屑か何かのまわりににるつけ、それをまるい形にまるめてぐるり一めんに鋭い釘を打ちつけよ。その玉には信管としてたった一つだけ孔を残しておいて、あとは松脂と硫黄とで包んでしまえ。
さらにこの火は、それで火傷しないように一ブラッチョの鉄製の尖頭を有する長い竿の頂上に結わいつければ、敵船を避けるため、近づかせないため、また突撃をくわないために便利である。
『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』