ちょうど法則と礼儀の型どおりに育った人が、けっして持てあましものの隣人やひどい悪党になることがないように、規則にしたがって修行する作家はけっして没趣味な俗悪なものを製作はしない。しかし、その半面、一切の規則というものは、誰がなんといおうとも、自然の真の感情と真の表現を破壊してしまう!
ゲーテ『若きウェルテルの悩み』
「希望」と「思い出」には一人の娘がいるが、その名は「芸術」である。彼女は人生のすさまじい戦場の戦いの旗として、人間がお互いの衣類を掛ける枝から、遠ざかった場所に住家を造っている。愛する「希望」と「思い出」の娘よ、少しのあいだ私と一緒にいてくれることを願う。
イエイツ『ケルトの薄明』
ある日のこと、真っ黒な大きい穴がかすかに見えたが、そのまわりには壁がめぐらされ、その上には数えきれぬほどの猿が座って、掌に宝石をのせて食べていた。宝石は緑色に、そして紅色にかがやき、猿たちはそれらの宝石を貪り食べているのだが、まるでいつまでも飢えが治らないようであった。私はそこにケルトの地獄、私自身の地獄、そして芸術家の地獄を見た。美しく素晴らしいものを、飢えかわくように求める人には、安らぎも形も消え、醜く卑しいものに変わってしまう。
イエイツ『ケルトの薄明』
最終更新:2017年04月04日 17:47