- 個別の体験である「怪異」が、名前を与えられ、場合によってはビジュアルイメージを与えられ「妖怪」となる。
この転換とは具体的にどういうことか、という問い。
鳥山石燕『画図百鬼夜行』シリーズに「屏風のぞき」という妖怪が描かれている。
この怪異は本来、屏風の上、つまり本来あり得ないほど高い位置から女の首が覗いているという、
位置関係と、見る側の視線の動きにこそ要点がある怪異であるはず。
ところが石燕はこの怪異を見ているはずの人を屏風の向こうに隠してしまっていて見られず、
また屏風のぞきの幽霊のような全身像を描いてしまうことで、「ありえないほど高い位置から覗いている」
不自然さ、そこから起こる怖さも事実上打ち消してしまっている。
→とはいえ、むしろ怪異という個人の体験から、その怪異の原因をキャラクター化して取り出すのが
『画図百鬼夜行』シリーズの眼目であるのだとすれば、このような転換こそが
「怪異」と「妖怪」の違いとしてむしろ象徴的と言えるかも知れない。
参考文献
『ネットロア』伊藤龍平 青弓社
最終更新:2017年02月22日 05:37