美食家(引用)

かれらはアテナイの優美とローマの豪奢とフランスの繊細とを集めた、あの社交的グルマンディーズを完全に忘れている。それは気のきいた配列、巧妙な技術、たしかな鑑賞、徹底した判断を合わせ持っている、実に尊き特質であって、こうなるとりっぱに一つの徳性であると言いうる。でないまでも、それは確かにわれらの最も純粋な享楽の源泉である。
                                     ブリア・サヴァラン『美味礼讃』

国民経済のうえからみると、グルマンディーズは毎日の消費に必要な諸物資の交換によって諸国民を結びつけるきずなとなるものである。
実にグルマンディーズこそ、一方の極からもう一方の極へと、ぶどう酒やブランデーや砂糖や香料や塩肉や干物や、あらゆる種類の食料品、卵やメロンまでも、旅させるのだ。
                                     ブリア・サヴァラン『美味礼讃』

身分の不平等は富の不平等を来たすけれども、富の不平等は欲望の不平等を来たしはしない! 毎日百人のお客様に大盤ぶるまいのできる人も、しばしば若鶏の股肉一つ食べればそれでげんなりしてしまうのだ。だからこそ、料理人が秘術を尽くして、腹にもたれずしかもおいし御馳走を作り、そういうほのかな食用をかきたてなければならなくなるのだ。
                                     ブリア・サヴァラン『美味礼讃』
最終更新:2017年05月01日 02:47