食欲(引用)

身分の不平等は富の不平等を来たすけれども、富の不平等は欲望の不平等を来たしはしない! 毎日百人のお客様に大盤ぶるまいのできる人も、しばしば若鶏の股肉一つ食べればそれでげんなりしてしまうのだ。だからこそ、料理人が秘術を尽くして、腹にもたれずしかもおいし御馳走を作り、そういうほのかな食用をかきたてなければならなくなるのだ。
                                     ブリア・サヴァラン『美味礼讃』

神の掟したもうたところにより人間は自然界の王様なのだ。だから大地の産み出すものはみな人間のために造られているのだ。うずらが肥えふたおるのもかれのためだし、モカがあんなによいかおりをはなつのもかれのため、お砂糖が健康によいのもまたかれのためなのである。
こう考えれば、せっかく神様がわれわれに与えたもうたおん恵みをば、どうして使用せずにおられよう! ことにわれわれは、それらのおん恵みもやはり滅びるものと考えているのだし、それらは万物の造り主に対するわれわれの感謝をかきたてもするのだから、少なくとも適度の節制をもってするかぎり、それらを享楽してもいっこうさしつかえないはずである。
                                     ブリア・サヴァラン『美味礼讃』
(zsphereコメント:実に好き勝手千万なこと言ってるわけだけど、こういうあっけらかんとした欲望肯定、嫌いではない)
最終更新:2017年05月01日 02:56