人生を送るに当たって、人は、期待される利益とその確率との積が、損失に関わる同様な積と少なくとも等しくなるように常に努めなければならない。しかし、それを達成するには、利益、損失、およびそれらの確率を正確に査定することが必要である。そして、このためにはきわめて的確な精神、鋭敏な如才なさ、そして物事に関する豊かな経験が要求される。偏見を避け、心配や期待の幻想に陥らず、また大部分の人々がそれでみずからの自尊心を慰めている財産と幸福に関する誤った考えから身を守ることができなければならないのである。
ラプラス『確率の哲学的試論』