無知(引用)

知識には互いに触れあっている二つの極端がある。第一の極端は生まれたてのすべての人間がおかれている自然的な純粋な無知である。他の極端は、人間の知りうるすべてのものを一巡したのち自分が何も知らないことを認め、出発点のあの同じ無知にもどってくる偉大な魂の到達する無知である。しかし、これは自己を知る賢明な無知である。二つの無知の間にあって、自然的な無知から出て、まだ他の無知に到達できない人たちは、あの思い上がったうわつらの知識で知ったかぶりをする。この連中は世をまどわし、すべてのことをまちがって判断する。
                                      パスカル『パンセ』
最終更新:2017年05月12日 23:59