かう云ふユダに対するクリストの言葉は軽蔑と憐憫れんびんとに溢あふれてゐる。「人の子」クリストは彼自身の中にも或はユダを感じてゐたかも知れない。しかしユダは不幸にもクリストのアイロニイを理解しなかつた。 芥川龍之介『西方の人』