キジ(引用)

雉は一つの謎であって、その秘密は特別の人たちにしか明かされていない。ただかれらだけが雉のほんとうのうまさを味わうことができるのである。
物にはそれぞれの食べごろというものがある。あるものはほんとうに生長成熟しないうちのほうがうまい。ケーパー、アスパラガス、灰色のやまうずらの雛、雛鳩などがそうである。ところが他のものは十分に発達を遂げてからでなければうまくない。メロン、大多数のくだもの、羊、牛、やぎ、赤いやまうずらの類がそうである。かと思うと、あるものは分解を始めてからがよい。さんざしの実、山しぎ、ことに雉がそうである。
この雉は死後三日以内に食べたのでは何のことはない。若鶏ほどの味もないし、うずらのような香味もない。ただちょうどよいころに食べると、実に柔らかですばらしくおいしい。まったく、飼鳥肉のようでもあり猟獣肉のようでもある。
                                    ブリア・サヴァラン『美味礼讃』
最終更新:2017年06月05日 23:40