- 一般に魚類はまばたきが出来ないが、フグだけは目を開閉する。
これをフグが目を瞋(いか)らせて見張るためであると見たため、
フグを称して「瞋魚」とも言うと云々。
- 内臓、皮膚、卵巣などにテトロドトキシンtetrodotoxinと呼ばれる神経毒を持つ。
主に卵巣、肝臓に含まれ、煮ても分解されない。
摂取すると、神経細胞膜のナトリウムチャンネルを閉じる。その結果、神経細胞を伝達されるはずの命令が受けつけられなくなり、
手足はもちろん、呼吸に必要な神経系の命令まで阻害され、呼吸停止する。
- この毒はフグが自家合成しているわけではなく、フグの体内で細菌が生成している事が近年知られるようになった。
ただし、そうした細菌は通常、海中に存在するごくありふれたものと同種であり、これがフグの体内に居る時だけ
神経毒を生成していると見られる。
どういった条件下でそのような生成が起こるのかは、今のところまだ判明していない。
- フグにおけるテトロドトキシン含有量は季節によって変わり、特に1~3月に多い。
- ちなみに、トリカブトなどに含まれるアコニチンなどの、神経細胞膜へナトリウムの流入を活性化させる毒物とは拮抗効果が働き、
適量同士であれば互いの効果を打ち消し合う場合もある。同効果を使用してアリバイ工作をした「トリカブト保険金殺人事件」が
1986年に
沖縄県で起こっている。
- ウェイド・デイヴィス『蛇と虹』で、ハイチにおけるゾンビ伝説が、
ゾンビ呪術中に服用される秘薬「ゾンビ・パウダー」に含まれるフグ毒テトロドトキシンによる
仮死状態の埋葬の事、と記された。
ゾンビ・パウダーの材料は人間の死体、植物2種、多毛類、ガマ、トカゲ、魚などだったが、
このうち人間を仮死状態に追いやるような素材はフグ毒しかなかったと。
- しかし、1988年、東北大学農学部で、この「ゾンビ・パウダー」にテトロドトキシンが
まったく含まれていない事を機械分析によって確かめたと云々。
- なお、テトロドトキシンの分子構造を世界で初めて解明したのは日本人で、
名古屋大学名誉教授だった平田義正氏(
2000年に死去)だとか。
参考文献
『世界大博物図鑑 魚類』荒俣宏
『アリエナイ理科の教科書』
『アリエナイ理科の教科書IIB』
朝日新聞2015年12月6日朝刊
最終更新:2015年12月08日 22:57