悔しい。

紅白の巫女に負けた、緑髪の妖怪に負けた、黒白の魔法使いに負けた、群青色の祟り神に負けた。
しかもマイと二人がかりだったのに、圧倒的戦力差を持って負けた。
あの神綺様でさえ負けたと言うが、今の私には気休めの言葉にもならない。

その後、マイとそのことで喧嘩をしてしまい、家を飛び出してしまった、私が悪いのに、、、

「おなかすいたな、、、」

公園でブランコでゆれるだけでも、お腹はすくらしい、まったく、食意地の張ったお腹だ、持ち主の顔が見てみたい。
しかし、食うものなければ金もなし、さて、どうしたことやら。

「んー、この葉っぱ食べれるかな」

ろくでもないことを考えていたそのとき。



「うお、何だお前ら、てかここはどこだ?なんだよ、やめろ、離せこの虫野郎!」



何事だよ、まったく。

すぐそこで起きてることらしく、暇なので、一部始終を見てやることにした。


「あ? 何だ手前。勝手にぶつかっといて挨拶もなしで罵倒か? なめた真似してんじゃねぇか。」

「チャララチャッチャチャーン、サンドバッグを手に入れたww」


、、、どうやら柄の悪い連中に絡まれたかわいそうなやつがいるようだ。
更にかわいそうな事に、ここは町外れの公園、しかも現在時刻午前一時半。
普通に考えて助けてくれるような人はいないよねぇ。
、、、まぁここにいちゃったりするけど。


あ、助ける事にかこつけてこいつ等ボコしてストレス発散させるのもいいな、よしそうしよう。

なら一番付け上がった所をボコすのが一番楽しげだな、ならもうちょい待つか。


こうして私の覗き見は始まった。










何だ、何が起きたんだ。


そもそもここはどこだ、こいつらは誰だ。

夢か? いや、さっき腕つかまれたとき痛かったしなー、夢じゃなさそうだけど。


でもただ一つだけ分かる事がある。

このままいくとボコされる。


やべーな、こいつ等無茶苦茶しそうだよ。

生憎俺は多人数相手に勝てる自信はねえぜ。

二人や三人ならまだしも、六人もいちゃあ分が悪いレベルの話じゃねえな。

、、、やけに冷静だな、俺。


「さてと、このサンドバッグ、どうすっかねっと」

言い終わると同時に、蹴りをかまして来やがった。

「がふぅ」

いてえじゃねえか、この野郎。

「まぁ適当に発散したらその辺捨てればいいんじゃね?」

痛っ、殴ってきやがった。

「まぁたまりにたまったストレス発散させるにゃもってこいだなww」


くそ、いい加減にしやがれ、もう頭来た、



グシャ!



「ぐぬぉぅぉぅぉ!!」

「どうだ参ったか!これぞわが必殺、玉つぶし!」

「くぅぅ、この野郎」

「、、、おい手前、悪いが俺らはお前のようなやつを生かしておくほど優しくないんだ、まぁ悪く思うな」

「、、、、、俺が殺す」


なに、もう大丈夫なのか、早いな、入りが甘かったか、クソ。

、、、何かほんとに落ち着いてんなぁ、俺。
人って自分が死ぬって悟ったらこんなにも冷静になれるんだな。

「おい、こいつ抑えてろ」

そうさっき俺が潰してやった奴が言うと、年下っぽい奴らが俺を二人がかりで羽交い絞めにした。

「俺は優しいからよ、すぐに死ねるようにしてやるよw」

そういうと内ポケからバタフライナイフを取り出した、古いな、おい。

「最後に何か一言あるか? 聞いてやろうw」

ここで謝罪の一つでもすれば生き長らえるかもしれないが、んなことするか。

「・・いよ」

「あ? よく聞こえんぞ?」

「古いよwwてめえww」

「あ?」

「バタフライナイフとか持ってる奴始めてみたよ俺ww時代遅れにもほどがあんだろww俺が死んだ暁には冥土にお前のことを広めてやるからありがたく思えwww」


空気が死んだとはこの事だな


そいつは鬼のような形相で俺にナイフを突き立ててきた。

さっきまで笑ってたほかの連中も今や渋いかをしてやがる、ざまぁねえな。



あぁ、痛い。


こんなに簡単に死ぬんだな、俺。


なんだかボーっとしてきた、あぁ、この世からもお別れか。


もう目を開けているのが辛い。


さらば、現世。


俺が最期に見たのは、何故か不良たちじゃなく、燃え盛る真紅の炎をまとった、黒い服を着たびっくりするほど可愛い少女だった。









何だ、こいつ。

私はこんな奴見たのは初めてだ。

自分の命を捨ててでも、最期に笑うのは自分であろうとする、こんな強い、歪んだ意地を持った奴を見るのは初めてだ。



私がそいつの行動にあっけにとられていると、なんと彼が刺されているではないか。

私は慌てて、とりあえず不良たちを退治してやろうと思った。

とりあえず最初は退治にとどめて置くつもりだった。



「ちょっとあなたたち」

「あ? なんだ?」

とりあえず宣戦布告だけでもしてやろうと思い、しょうがなく話しかけてやった。

「死にたくないのなら逃げなさい」

「なんだ、餓鬼じゃねえか、なに寝ぼけてんだ?」

「何よ、別に寝ぼけてないわよ」

「どっちでもいいからさっさと帰えんな、俺らは大人の女が好みなんだよ。お前見てえなまな板女はお呼びじゃねえよ」




骨一つ残さず焼き払ってやった。




「とりあえず血を止めないと、、、」


どうしよう、この人が死んでしまう。


「どうやって止めれば、、あぁ、もう止まってよ」

とめどなくあふれてくる血、私には助けれないのか。

歯がゆいのと同時に、とても悲しかった。
まだ話した事もないような奴なのに、なぜか胸が痛んだ。

己の非力さを呪おうにも、呪ったところで何とかなるわけではない。

この人を助けたい、こんな気持ちは初めてだ。


パキン


血が止まらないことと、自分に襲い掛かる不思議な感情に困惑し、戸惑っていると、背中に氷の塊がぶつかって、割れた。

びっくりして振り向くと、そこにはマイ怪訝そうな目で見ていた。


「、、、、なによそれ」

「、、歪んだ意地を持った人」

「、、、、なんで助けようとしているの?」

「、、、、、分からない」

「、、、、、帰ろうよ」

「この人を助けてからね」

「、、、一人で?」

「、、、、、、、、」

「はぁ、貸し一つね」


そういうとマイは、彼の傷口と、彼から流れ出てた地を凍らし、ひとまとめにしてどこかへ歩き出した。

「どこいくのよ」

「病院に決まっているでしょ」


なるほど、その手があったか。


私は彼を背負うと、マイの後を追い始めた。

男の癖に、驚くほど軽かった。








「知らない天井だ、、、」


生きてるとは何事だ、これ。


夢落ち、、、では無いようだな。

胸には包帯がこれでもかと言うほど巻かれているし、動けないほど痛いし、何よりここが病院だし。

刺されたのは本当、、か。

まあ助かったのならいいか。



ところで、だ。



「すぅ、すぅ」



俺のベッドにもたれかかって寝ているこの少女は誰だろう。


よく見ると、俺が最期に見たと思ってた、あの少女ではないか。

それにしてもほんとに可愛いな。


まぁとりあえずしばらくはこの寝顔を満喫するとしよう。


「すぅ、ん、、」


だがそうは問屋が卸さないようだ、クソッ。


「んぅ、、、ん? あっ、目覚ましたのね!」

「まぁな」

「良かったぁ」


そういってやわらかく、ほっとしたように微笑んだ、やべえな、ありえないほど可愛い。


「君が助けてくれたの?」

「まぁ一人じゃないけどね、一応は」

「ありがとう、ほんとに助かったよ」

「え?、いや、まぁ、その、、、何よ、、ど、どういたしまして」

人にお礼を言われるのに慣れていないのか、顔に朱を交わらせ、照れながらお礼を言う姿は、おそらく神の領域だろう


「でさぁ、ここはどこだい?」

「ここ?病院よ?」

「まぁ見れば分かるな」

「なら聞かないでよ」

「何病院?」

「何病院って、魔界に病院は一つしかないでしょう、中央病院よ」

、、、この子は今なんと言った? まかい?何県だよ。

「、、まかいって何県?」

「何言ってるのよ、魔界は魔界よ、県ってなによ」

聞き間違いではないようだ、、


まかいだって?
もしかして魔界?

「、、、大丈夫?」

「、、、、、あなたこそ大丈夫?」

なぜ心配されないといけないのだろうか。
いや、そこは俺の寛大な心でスルーしよう。

まずはこの相当可愛いのに頭のおかしい子を何とかしよう。









何を言ってるのだろう、こいつは。

もしや刺された拍子に頭のねじが幾つか吹き飛んだのではないか。

そう思って本気で心配していると、一つ、見慣れないものを取り出した。

「なによそれ」

「ん?見たこと無い?ipo○eって言うんだけどね、あ、圏外じゃん、、、まあ病院だから仕方ないのか」

「あい○ぉん?」

「聞いたこと無い?」

「おいしいの?」

「、、、、鉄分豊富だろうね」


、、、、、なんだかおかしい、見たことも無いようなものを持ってるし、よくよく考えれば着ていた服も派手だったし、、、、



まさか、、、ね



「ねえ、あなたって、、、、もしかして人間?」

「もしかしても何も、君も人間だろう?」




そのまさかだよ、、、




まさか人間の迷い人とは、、、


とりあえず、今の状況を説明してあげないと、、、


「えっと、、、聞いて。あなたは今まで人間界にいたの。あなたがもといて暮らしていた場所のことよ。」

「え?」

「でもここは違うの。ここは魔界、神綺さまの作った世界。あなたは何らかの理由で人間界からこの魔界に迷い込んできたの」










は?

この娘は何を言っているんだろう。

頭がおかしいにしても、ちょっと異常だろう。

「その顔は信じてないわね、、」

「もちのろんだ」

「挑戦的ね、いいわ、信じさせてあげる。人間界には無くて、この魔界にはあるものを見せてね」

「ほう、何だ、それは」

「魔法よ」

そういうと彼女は手のひらを上に向けて何かをつぶやいた。

するとあろうことか手が燃えているではないか。

一瞬わが目を疑ったが、何度目をこすっても消えない。

幻覚ではないならば何かのトリックがあるだろうと手を近づけると、

「あっぢいっ!」

「当たり前よ火なんだから」

なんてこった、間違っていたのは俺なのか。

でもそれだと色々と辻褄が合うな、、、

よし、ここは信じてやるのも一つの手だな、うん。



「疑ってごめんなさい」

「あら、人間界の謝り方は土下座というのが基本と聞いたことがあるけど」

「ぐ、、、気のせいだろう」

「、、、、(睨む)」

「ま、まぁなんにせよあれだ、うん、俺は○○、君は?」

「話そらしたわね、、、まぁいいわ、私はユキ、もう一人、私の同居人で、青い髪の無愛想な子がいるけどそっちはマイって名前だから」

「ふーん。でだ、ユキよ」

「なによ」

「俺は元の世界に帰れるのか?」

「え? えぇ、魔界の門に行けば帰れるわよ」

「なんだよ、そんな簡単なもんなのか」

「まああっちにはこっちに通じる門なんて無いから迷い込んだあなたは相当不運ね」

「んじゃあまあ怪我が治ったら帰るとするかな」

「え、、、」

「どうした?」

「い、いや、別にもう二度とこれない場所だからもうちょっと過ごしてみたらって思っただけよ」

「おぉ、それもそうだな」

「、、、、軽いのね」

「俺の長所だ」

「どちらかと言うと短所ねw」

「うっせえな」

「でも住む場所にあてはあるの?」

「、、、、野宿になんのかなぁ」

「でしょうね、しょうがないわね、、その間は家においといてあげるわ」

「、、、、信用しすぎじゃないか?」

「仮にあなたが私を襲って、私があなたに負けると思う?(はぁと)」

「、、、なるほど。まぁ一週間ほど見て回るとするかな、その前に退院しないといけないがな」

「あぁ、それなら大丈夫。明日には退院できるわよ」

「早っ! 恐るべし、魔界の医療、、」

「まあね」


その後軽い談笑をした後、とりあえず今日のところは別れた。


ユキ、、、か、、、

まぁなんにせよ今日のところは寝とくか。

心地よく睡魔も襲ってきたし。

そう思って電気を消すと、

コンコン

見計らったかのようなタイミングで来客だ。

「、、、どーぞ」


ガラッ


現れたのはこれまたびっくりするほど可愛い青い髪の白い女の子だった。


ただ、背中に羽が生えているのが気になったが、ここは魔界だ、気にすべきことではないだろう。


「、、、、、、マイよ」

「え?あ、あぁ、俺は○○だ」

「、、、、捻じ曲がった意地を持つ人、ねww」

「あん?」

「なんでもないわ、それより体は大丈夫?」

「あ、あぁ、大丈夫だ」

「ならいいわ。それじゃ、さよなら」

「え?あぁ」


なんのこっちゃ。

ユキとは正反対だな、、、

まぁ、同居していることからも、仲がいいのは目に見えてるけどな。


よし、寝るか。



──────────────────────

なんて清々しい朝だろう。


刺されてからまだ二日とは思えないほどの清々しさだよ。


「ふぁぁあ」


でかい欠伸を一発、さて、もう人眠りするかな。

布団を頭までかぶり、今まさに眠ろうとしたその瞬間。


ガラピシャンッ


「おっはよー、○○!」


おいでなすったよ、真紅のおてんば姫が。


「起きて、起きなさいよ○○、早く行くわよ」

「んぅ、何だよ、まだ早いだろ?」

「いいじゃない、別に。早くからいけば、その分楽しい時間が増えるわけだし」

「、、、まあそうだけどもよ」

「てなわけではいはい起きた起きた」


しょうがないから起床。

身支度をしたいのだが、、、

「、、、おい」

「? なに?」

「、、、、着替えるから出てくれないか?」

「えー、いいじゃない別に」

「俺が良くないんだよ!」

「もー、めんどくさいわね」


まったく、デリカシーが無いというか常識がないな、ほんとに。

可愛いのにああもったいない。



少年支度中、、、、



「終わりましたよっと」

「長いわよ」

「そうか?」

「まぁどうでもいいわ。えっと、それじゃあとりあえず、退院するって言いにいかないと」

「、、、なぁ、言うだけでいいのか?」

「うん、もちろん」

「マジかよ、、、」


くだらないやり取りをし合い、難なく退院、どうやら本当に口頭だけでいいらしい。


「ねぇ、どんなところへ興味在る?」

病院の出入り口でユキがこんなことを聞いてきた。

「んー、なんかこう、デパートってない?」

「あるけど、そんな所で良いの?」

「まぁ魔界がどんな所かを知るにはそこで十分だろ」

「それも一理在るわね」

「だろ? それに一週間分の何かしらを買うのにもうってつけだ」

「、、、、うん」

「? どした?」

「い、いや、なんでもないわよ、それよりさっさといきましょ」

「?」

「なんでもないってば!」

「変な奴」

「変じゃないっ! しばくわよっ!」

しばかれたorz



少年少女移動中、、、



なんか移動中に変な目で見られた気がするけど、まぁユキが可愛いからかな。

「どしたの?」

「んや、別に」

「、、、怪しい」

「あ、なぁこれか?」

「よくわかったわね」


なぜ始めて見るはずの魔界のデパートが俺に一発で分かったかと言うと、それはもう見事なまでに人間界のそれとまったく同じだったからだ。


「ほぉ、、、これはまぁなんと」


まったく変わらない、中まで人間界と同じだった。


「どう?」

「うん、なんとなく魔界のことが分かった気がする」

「早くない?」

「まぁな」


まぁ一昨日のような連中もいるのを見る限り、良くも悪くもそっくりってことか。


「よし、じゃあ色々と見て回るとするか」

「うん、一階からね」

「げ、全部見るのか?」

「当たり前じゃないのよ」


なんとここに来て地獄の鉄腕レースの幕開けだった、、、、、





「ユ、ユキ、ちょっと休もう、取り敢えず落ち着け」

「私は十分落ち着いているわよ、失礼ね」

「落ち着いて居る奴が一時間でワンフロア全てみて回れるもんか
よ、、、」

「、、、分かったわよ、あ、じゃあ朝飯がてら何か食べましょうよ」

「あぁ了解、ようやく休憩にたどり着ける、、、」

あ、そいやあお金はどうすればいいのやら。
まさかユキの世話になる訳にも行くまいしな、、、


どうした物かと悩んでいると、

「どしたの?」

「いやさ、俺はお金を持ってないなーって思ってたんだけど、どうしようかと思ってな」

「あぁ、それなら人間界のお金持ってる?」

「ん? 持ってるけど」

まさか使える訳じゃあるまいな。

「なら骨董品やらなんやら扱って居る所に行けばそこそこ高値で買い取っ
てもらえるわよ」

「ほう、それは好都合だな」

「骨董品屋は、、、五階ね、よしいきましょ」


関係ないが、思い立ったが吉日、と言う言葉が在るな。

ほんと誰かさんのために在るような言葉だな。

そんな事を考えながら、ユキのあとを追った。



少年少女移動中、、、



「、、、、マジで?」

「どしたの?」

「、、、、いや、まさか千円札一枚でうん十万すんのか?」

「まぁそれ程貴重ってことよ」

「、、、、そいや、あんま驚かないのな」

「ん? 何が?」

「いやさ、もうちょいなんか反応あってもよさそうだなって思ったんだけど」

「まぁそれ程お金に執着が無いってことね、欲しい物とか滅多に出来無いし」

むぅ、そいつは残念だ、なにか御礼でも出来たら、と思っていたのだが
な。



「なんだかんだでもうお昼じゃない」

まぁ金作ったり見て回ったり結構なことしてたからな。

「はぁ、ようやく飯にありつけるのか」

俺はここは手軽に肉うどん大盛、ユキはなにやらサンドイッチのようなものをそれぞれ買っていた。

こいつ少食なんだな、あんだけハードに動き回ったのに少ししか食べてないよ。

「「いただきます」」

腹の限界も近いと言うことで、とりあえず食うことにした。

「ねぇ、この後からはどうするの?」

「うーん、まあちょびちょび色んな所を目的別に見ていきゃ良いんじゃない?」

「そうね、そうしましょうか」

「それよかお前さ、本当に欲しい物とか無いのか?」

「んー、そうね、いまの所はまったくと言って良いほど無いわね」

「マジか、、、」

「何で?」

「いやさ、こんだけ面倒見てもらったんだからお礼の一つでも出来たらっと思ってたんだがよ」

「ふーん、まぁ何か考えとくわ」


食い終わった後は色んな所を見て回った。

怪しい絵が売られているところを冷かしてみたり、試食コーナーのはしごをしたり(しただけ)、本屋に行ってみたり(エロ本はあった)した。
相当楽しかったが、それ相応に相当疲れた。

ただその中で、ユキが唯一一瞬だけ興味を示したものがあった。

生憎俺は鉱石の知識を持ってないため、何の石かは分からなかったが、雪の結晶をモチーフにした首飾りがそれだ。

値段が張っていたわけでもないので、まぁ最終日あたりに渡すのも良いか、と思ってみた。


鉄腕レースも終盤に差し掛かり、今や帰路のバス内だ、こんな所までそっくりだよ、整理券の紙質もまったく同じだし。


「はぁ、今日はほんとに疲れたよ」

「あんだけで疲れるなんて、ほんとに人間てやわね」

「うっせえやい」


五分後、、、


「すや、、、」

あんな大口たたいておきながら、今や俺の腕にもたれ掛かり、夢の中である。

なんだかんだで疲れてんじゃねえか、この意地っ張りめ

あー、にしてもほんま可愛いな、そんな子がよっかかってんだ、俺の理性も悲鳴を上げてんな。

、、、、なんか周りの目線がほんと気になる。

主に嫉妬とか妬みとか羨望の物が多い、てかそれ以外ないな。

、、、、優越感に浸るたぁこの事かw


くだらない事を考えてるうちに降りると教えられていたバス停に到着。

さて、起こすとするか。

「ユキ、起きろ」

「ん、んぅ、、」

「起きろってば」

「んっ(ぎゅぅ)」

、、、、起きるどころか腕にしがみついてきましたよ、このお嬢さん。

しょうがない、抱っこしてやるか。

、、、どんなエロゲ?

しがみついている位置的に某お姫様抱っこ状態なんだが、周りの視線が殺気に変わったのは俺の間違いではないだろう。


にしても軽いな、こいつ。

変なことを考えていると寝心地が悪かったのか、

「んぅ、、○、○?」

「お、起きたか」

「、、、、、(顔真っ赤)」

「どした?」

「、、、とっとと降ろせーっ!!」

「のぁ、暴れんなってうぉっ、何しやがる、焼け死ぬところだったぞ!」

「もう○○なんて知らない!」

「おい、どしたんだよ」

「なんでもない!、ていうかどういう持ち方してんのよ!」

「いや、それはおまえがしがみついてきたんだろ?」

「私が? そんなわけないでしょうが!」

「マジだよ! 起こそうとしたらしがみついてきたんだろうが!」

「ぅえ?」

お、なにやら動揺してるじゃないか

「いやー、ぎゅって抱きついてきてな? ほんとに赤ちゃんみたいだったよ」

「だ、だからってなんでお姫様抱っこなのよ!」

「それはユキのしがみついてくる位置がお姫様抱っこしか出来ないような位置だったんだよ」

「ぅあ、、え、、その、、、(顔超真っ赤)」

なんだ、急に勢いなくなったな、そこまで動揺したか。

「大体なんでそんなに怒ってんだ? 抱っこごときで」

「ふぇ? い、いや、その、、、(顔激真っ赤)」

もじもじもじもじ可愛いなぁ、ずっと眺めておきたいぐらいだ。

「な、ん、でもないわ?」

「知らんがな」

「と、とにかくなんでもないの!」

そう叫ぶとスタスタどこかへ行き出した。

「あ、おい待てよ」

んー、俺なんか悪いことしたかなぁ、まぁいいか、気にすることでも在るまい。



「なんとまあマンションも形がくりそつじゃないかい」

帰り道、くだらない事をつぶやいても、

「、、、、、」

無視の連打。

どうやらまだご立腹のようだ、相槌どころか目すら合わせてくれない。

「、、なぁ」

「、、、なによ」

「、、よう分からんがすまんかった」

「、、別に怒ってるわけじゃないわよ」

「じゃあ何で顔真っ赤にしてそっぽ向いてんだよ」

「、、、、そのうち分かるわよ」

そう言ったきり相手にしてくれなくなってしまった、一体なんだと言うのだ。


「ついたわ」

「、、、、これ?」

こんなでっかいマンションに住んでのか?

、、、クソッ、俺なんか悲しくなるほどボロイアパートだと言うのに、何か納得いかん。

俺が勝手に腹を立ててると、ユキは無視して進み始めた、おぃおぃ、まだ起こってんのかいな。


「ちょ、待てって」

「、、、、さっさと付いてきなさいよ」


郵便受けのチェックをした後、俺たちはエレベーターに乗り込んだ、しっかしすごい数の郵便受けだな。



少年少女上昇中、、、


「ここよ」

そういってユキが鍵を開けて入ったのは24階の14号室。

ここの最上階は屋上抜きで30階、ワンフロアおおよそ15個家が在るとして、えーっと、、450室?

、、、、すげぇな魔界、、、、

「、、、、あほ面引っさげてないで早く入りなさいよ」

「んぁ? あ、あぁ」

おい、だれがあほ面だって?

心の中で文句を言ってやったものの、残念なことにユキには届いていないようだ。



あんだけでっかけりゃ、中も相当大きいようで、悲しくなるほど広かった。

部屋も相当数あり、使ってない部屋の一つに俺は割り振られた。


中は布団一式に、畳張りの完璧な和室。

「まぁとりあえず一息つくか」

荷物を降ろして横になる、い草のにおいが心地良い。

ぬぁ、睡魔だ、助けてー、襲われるー。

襲われたorz

俺の意識は闇に落ちていった、、、

寝ただけだけど。






「んご、、」

「、、、、」


他人の家でこんなにくつろぐ奴始めて見たよ。

「ん、、、ぐ」

ご飯で来たから起こそうと思ったのだが、こんな安らかな寝顔見せ付けられては何か罪悪感が沸く。

でもここは心を鬼にして、

「、、、、(ドスッ)」

「ほげっ?!」

私の踵の功績により、あほな悲鳴とともに飛び起きた。

「何しやがる!」

「ごはんよ」

「普通に起こせよ!」

「私の踵がやれと命じておりましたw」

「お前なぁ、、、」

「まぁいいからいいから、早くご飯行きましょっ!」

一撃ののち離脱。
任務遂行!


食卓を囲む面々は、何故か四人。

そのうち二人は私とマイ。

そして○○。

もう一人は誰かと言うと、

「なぁマイ、腹が減って死にそうなんだが」

「、、、、食べれば?」

「おぉ、その手があったか」


マイの彼氏だって、、、、、

そりゃたまに来る事も在るけど何もこんなときに来なくても良いじゃない、、、







「、、、、、こぼれているわよ?」

「ん?おぉ」

「、、、しょうがない人ね」

「ん、すまんな」


あぁ、暑い暑い、何でこんな暑いんだろうね、ほんと。



、、正解は目の前にイチャイチャ真っ盛りのお二人さんがいるから。


イライラと暑さを吹き飛ばそうと辛口のカレーを一気に口に掻きこむ、しかし



「、、、、甘辛ぇ」

そりゃあ目の前であんだけ大量に糖分発生させられちゃ、どんなカレーでも甘くなるわな。


一方ユキは、慣れているのか、甘口のカレーをパクパク涼しい顔で食べてやがる。

あれ? 何か困惑してんの俺だけじゃね?

え? 置いてけぼり?

、、孤独感MAXどうしよう。


そんなくだらない事を考えていると、マイの彼氏が話しかけてきやがった。

「そいやぁ、君には名前言ってなかったね、マイの彼氏の●●だ、以後お見知りおきを」

「、、、、人間界から迷い込んできた○○だ、よろしく」

「おや、君も人間界からかい?」

「、、、、君もってことは」

「うん、俺もだ」

「、、、、帰らないのか?」

「、、、、そういえばここ魔界だったな」


、、、こりゃ天然だな。

心の中でそう罵ってやった。

そんな可愛い彼女を持つ奴なんか敵だ! てか彼女持ちなんて皆敵だ! くそぅ、寂しくないもん! わざと一人でいるだけだもん! 


「、、、、ねえ大丈夫○○?」

よほど落ち込んでいるのが顔に出たのか、ユキが心配して声をかけてくれた。

「、、、、微妙に大丈夫じゃない」

「大丈夫ね、良かった」

「、、、、、」

冷たいよぅorz



食後は四人でなにやら怪談大会、

、、、、ノリが修学旅行だよ。


まぁしかし、、、俺に怪談をやらせれば右に出るものはいねぇぜ。


「、、、、っだったって訳、どう?」

マイが語り終わった、俺はその話は聞いたことが在るので全然怖くない、●●も怖くないようだ。

ユキも怖くなっかった、、、、ん?

よく見れば体は強張っているし、冷や汗もかいているし、、、怖いようだな。

、、、、、くそう、静まれ、俺のさでずむ、、、、


収まらなかったw

「じゃあ次俺」

●●の番か、



「、、、、、のせいだったって事、どう? 怖かった?」

マイはケロッとしている、俺は初めてだったが特に怖くなかった。

ユキは、、、怖いのか掌をぎゅっと握り締めて歯を食いしばっている。

心なしか涙目だw


俺はユキの後ろにこっそり回りこんで、、、

「わっ!!!」

ばっと驚かした。

「!!??」

体を一瞬びくっとさせてへたへたとその場にへたり込む。

「どう? びっくりした?」

「、、、、、死んじゃえ、馬鹿」

そういうと、そっぽをむいたきり相手にしてくれなくなった。

ちとやりすぎたかな。




その後、各自各々の部屋に戻っての就寝になった。

風呂は無いのか、と聞くと、水道の工事が行われているから少なくとも自分がいる間は入れない、との事。

ちっ、どんな風呂か見てみたかったのに、TO○Oとか書かれてあってもおかしくないもんなぁ。

まぁいいか。


しかし、一週間も此処にとどまるわけにはやはりいかないかもな。

自分もそんなに長い間行方不明になってたらいろんな人が心配するかもしれないし。

俺が迷い込んだのが木曜の夜で、今日、金曜は幸いなことに祝日だから、大丈夫だろ。
なら日曜にもどるとして、、つまり明後日には戻るのが良いのではないか、と思う。


、、、、、、、、、そうするか。

昔一日家出しただけで警察が捜索に出たりして大事になったこともあったしな。
親に泣いてひっぱたかれて、心配したと抱きしめられたことが在るのは今でも鮮明だ。

ユキには悪いけども、明日その旨を伝えよう。

よし寝るか。

しかし、瞼を下ろすと、


すっ


障子の開く音が、誰だ?


「、、起きてる?」

ユキだった。

「起きてるが、どうした?」

「、、、、、別に怖くなったとかじゃなくて、その、、ね、、一緒に寝てあげようかと思って、、」

「、、、マイの所のほうが良くないか?」

「、、、、あのイチャイチャ空間に入れというの?」

「、、、、、」

「、、、ど、どうなのよ」

「、、俺はかまわんが、、、実はお前が怖いんじゃないのか?」

「ち、ちがうわよ!」

「ふーん、じゃあ俺は怖くないから大丈夫だ、あーあ、怖いのなら一緒に寝てやろうと思ったが、怖くないんじゃ仕方ないよなぁ」

俺も相当サディストだなぁ

「う、、」

「ユキ、心配ありがとな、でも俺はぜんっぜん怖くないから大丈夫だ、だから一人で寝れる」

「ぅ、、」

「さあ、明日も忙しいんだ、早く寝ようぜ」

「、、、、」

「どうした? 俺は大丈夫だから安心して寝な」

「、、、ぐすっ」

「!?」

「、、ぐすん」

「お、おい何も泣かなくてもいいだろうよ」

「ぐすっ、、や、やっぱり怖いっ、ぐすっ、怖いから一緒に寝て、、ひっく」

「あ、あぁ分かった分かった、だからもう泣くなって」

「ひっく、、(こくり)」

「よし、じゃあ布団もう一個持ってくるからちょっとまってろ」

「、、、そのままで良い」

少年思考停止中、、、、、

「、、、、、、、、、、は?」

そういうと俺の布団にもぐりこんできた。

「、、、あのー、ユキさん?」

「、、、ひっく、、駄目?」

「、、、、いや、なんでもない」

「、、、、、おやすみ」

「え? あぁ、おやすみ」

、、、、、、、、まぁ信用されてるって事だろ。

それにあんな顔されて、駄目?なんていわれたら、うん駄目、なんて言えないだろうに。


まぁ寝るか。


30分後、、、


「、、、、」

「すや、、、」

俺の腕にはあろう事かユキが抱きついてきている。

「、、、、、」

こいつは寝るとき何かに抱きつくのか?

、、、、、めちゃ可愛いな。

、、、、、まったく、惚れてる女にこんなことされちゃ、理性を制御するのも超大変なんだぜ?

こいつはそれを分かっているのやら。




ん? 俺は今なんと言った?


惚れてる女? 




、、、、、なんてこった、俺はユキに無意識のうちに惚れてたのか。 


OK、自覚完了。

、、そりゃぁ、確かに外見も相当高レベルだ。

しかしな、俺は自覚した今なら言えることだが間違いなくこの内面に惚れている。

底なしの明るさと、時折見せる子供さとさびしがりやな一面。

そして何よりもこの不器用なやさしさ。

俺はユキのそんなところに惚れてんだと思う。


まぁだけどおそらくこの想いを告げることは無いだろう。

一つは俺が人間で、こいつが魔界人であること。

種族の違いによる寿命の差というものも在るだろう。


それ以前にこいつは俺にそういう感情を抱かないだろうし。

それに明後日で変えるしな。


なんかすっきりしないまま、俺の意識を何者かが掻っ攫って(寝た)いった。



──────────────────────

目の前に見知った少女がいる。


俺はその少女に惚れている。


しかし、その少女は泣いている。


俺のせいで泣いている。


俺は涙をぬぐうことさえも出来ない。


目から零れ落ちる雫に見とれることしか出来ない。


目の前に見知った少女がいる。


その少女は泣きながら微笑むと、どこかへいなくなってしまった。


違う、俺がどこかへ行ったんだ。


俺は少女の元へ戻る事すら出来ない


ただひたすらに涙を流すことしか出来ない。


最後に見た表情に涙が在るのは許せない。






「ん、、ぅぁ、、朝か、、、」

おぉう日の光がまぶしいぜ。

昨日とはまた違う清々しさの在る朝だな。


今のは夢か、、、

おそらく、魔界との別れが近いからであろう。


、、、、俺は帰って良いのか?

●●は、こちらに迷い込んできて、マイとくっつき、すでに人間世界へ別れを告げてきたと言う。

昨日のはマイに少しでも罪悪感を与えないための冗談、と言っていた。


では俺はどうか。

まず根本的に違うのが俺とユキは友達程度でしかない、所詮は俺の片思い、と言うことだ。

奴らはお互いに好きあってるのだから●●がこちらに残るちゃんとした理由になるであろう。


だが、こっちはただの片思いだ。

旅行中に出来た友達と別れる、他とへその子を好きになろうとも、それは至極当然なこと。

やはり俺がこちらに留まるには至らないであろう。



、、、、考え事をしていて気づかなかったが、

「すぅ、、、」


、、いやに顔が近いと思ったら、その、ユキと抱き合う形になってたんだよ。


俺がそぉっと離れようとすると、

「んっ、、、(ぎゅっ)」

更に抱きついてくると言う有様である。

やばい、理性が、、、、


俺が心の中で理性との葛藤を繰り返していると、

「んぅ、、、おはよう」

起きられましたよお嬢様が。

「おう、おはよう。でだ、寝起き即効で悪いんだがな」

「?」

「少しは離れないか?」

「?、、、、、、(顔過去最大級に真っ赤)」

「言っておくが俺は離れようとしたんだが、お前が離してくれなかったんだからな」

「、、、、、、、この怒りどこにぶつけるのが良いかしら」

「そうだな、火力発電所にでも行くとか」

「、、、、、」

ユキは、顔が真っ赤のまま布団を出て、そのまま部屋の外へ行った、終始無言で。

まったく、ほんとに可愛い奴だ。

ここはもう人眠いきたいところだが、居候のみでいつまでも寝とくのはいけんな。

よし、今日も出動すっかな。



食卓へ向かう途中、●●に会ったが、

「昨日はお楽しみか?w」

などとほざいてきたので、エルボーを思い切り食らわせやった。

そのせいで肋骨を痛めたらしい、ざまぁねぇな。



朝は人間と同じように、トーストに各々好きなものを塗って食べるようだ。

、、、、人間界と違うところのほうが少なくないか?

まぁ俺は何も塗らない派なんだよな。

お、マイも塗ってないな、●●は、バターの上に砂糖とは、手のかかることを、で、ユキはジャムか。


サクッ


、、、人間界のそれよりはるかにうまいな、、、

なんかこっちのが発展してると思うのは俺だけか?


「、、、、サクッ」

ユキの顔はいまだに赤い、おもろいやっちゃのうw

「、、、なによ」

「別に」

「、、、、、」

朝食中は延々とにらみ続けられましたorz




朝食も終わってしばらく経ち、そろそろどこに行くか決めたいのだが、

「、、、、、」

いかんせんユキが拗ねて話を聞いてくれないのである。

まったく、どうしたものやら。










彼は何を考えているのだろう。

顔からして悪巧みだろうけれども、今の私はひっかからないからね。


まったく、私はどうしちゃったんだろう。

この男が来てから調子が狂うのも良いとこだよ。

はぁ、素直にこっちが謝れば今日の予定も進むんだろうけど、私のちっぽけなプライドはそれを許さない。

こんなプライド、在るだけ邪魔なもんだ。


ん? 何か思いついたって顔したぞ。

何が始まるのやら、そう思いながら軽く身構える。

それにしても目は口ほどにものを語ると言うか、なんか全身で語ってるよね、○○って。


「なぁユキ」

「、、、、なによ」

「さっきはすまんかった」

、、、、ストレートに謝罪してくるとは。

「、、、、でも悪いのはこっちなのよ? そんな奴に対してでも謝るの?」

「いや、俺が無理にでも振り払っておけばよかったんだ、お前は悪くないよ、それに俺の中にお前みたいな可愛い奴とならっていう邪な心も多少なりともあっただろうし。

「、、、、でも」

「いいから、俺の謝罪を受け取ってくれ」

「、、うん、分かった、許してあげるわ」

「うし、じゃあ仲直りだ」

「仲直りね」


、、、今思えば少なからず、彼の自分の気持ちに素直な所に惹かれていたのかもしれないな。

びっくりするほど負けず嫌いで、ひどく歪んだ意地を持つくせに、素直と言うわけの分からない彼に惹かれていた、、、


これが人を好きになるって事なのかな。


自覚するのはちょっと癪だけど、おそらく否定できる自分はどこにもいないと思う。

、、、まぁあれだ、どっちかと言われれば好きって事だ、そういうことにしておこう、うん、それがいい。



「ユキ?」

「ふぇ!? な、何?」

「どうしたひとりでにや付いて」

「い、いや別に、ちょっとした思い出し笑いよ」

「ふーん」

「な、なによ」

「いーや、別に」

「言いなさい!」

「思い出し笑いははたから見ると不気味だよ」

「なんで言うのよっ!」

「だって言えって」

「でも言っちゃいけないの!」

「矛盾してますぜ」

「うっさい! しばくわよ!」



いつもの彼だ、ほんとに。

良くも悪くもいつもの彼だ。

何でこんなのに惚れちゃったのかしら。

まったく、この人も変わり者だけど私も相当の変わり者ね。





「あぁ、まだどこにも出てないのに疲れたのはなぜだろう神様」

「あんたが馬鹿なこと言うからでしょうが!」

「え? なーに聞こえない」

「、、、、、、まぁいいわ、もうめんどくさいし」

これからこいつのボケは主にスルーしてやる。

「ガーンorz」

早速来たよ、ボケ、この世の終わりみたいな身のくねらせかたしてやがる。

「、、、それで、今日はどこへ行きたいの?」

「う、、無視、、、、実はな、まったく思いついてだよ」

「実はも何も、顔に出てるわよ、、、」

「あ、やっぱり?」

なんだ、自覚は在るのか。

「あー、そうねぇ、純粋に楽しめるところにでも行く?」

「んー、だったら繁華街とかある?」

「ええあるわよ」

「じゃあその辺適当にぶらつくで」

「そうね、じゃあ早速行きましょうか、時間は有限なんだし」

「、、、、これでか?」

○○の服はところどころ、と言うかあちこち焦げてたり黒ずんでたり穴が開いてたり。

「みっともない服ね」

「誰も感想はあおってねえよ! てかお前が焼いたんだろうが!」

「焼かれるような事したのはどこの誰かしら」

「んぐぅ、、、、と、とにかく着替えるから玄関にいてくれ。五分で済ますから」

そういうと渋る私を部屋の外に追い出して、襖を閉めた。

ご丁寧につっかえ棒まで使ってるよ、、、

「しょうがない、待っときますか」

待つことはこの世で三番目に嫌いなのに、、、、








はぁ、ようやく出てくれた。

相変わらずデリカシーの微塵もないやつだ、まぁ無い方がユキらしいっちゃそうだな。

、、、、デリカシーが無い方がしっくりくるってどんな女だよw

ほんと、変わった奴に惚れたもんだ。


そんなことを考えてるうちに着替えなんてものは終わるものでして、

「おまたせぃ」

「またせすぎ」

感動的なほどの反抗だな。


さあて、今日の始まりだな。




バスに揺られて電車に乗って、繁華街まで20分位は在るらしい、結構離れてんのな。

「、、、、なぁ」

俺は昨日のことを今言うことにした。

言うか言わないかで、今日一日の密度も変わるだろうしな。


「俺さ、、、、明日には、もうあっちへ戻ろうと思う」

「えっ!? 何で!?」

「明後日から俺はあっちの世界で学校が始まるんだ。」

「、、、、、」

そんな悲しそうな顔しないでくれ。

「それにな、急にあっちから消えたわけだからおそらく俺が行方不明になったって事になってるだろう、だから早めに帰らないと大勢の人に迷惑と心配をかけてしまうかもしれない」

消え入りそうな蝋燭みたいな顔してかと思うと、急に花火のように明るくなり、

「じゃあ今日明日を二日で六日分の楽しさを味わえるように目いっぱい楽しみましょっ!」

「、、、あぁ、そうだな、よし、ここはいっちょ羽目をはずして目いっぱい遊ぶか!」

「うんっ!」


これだよ、この底なしの前向きさに俺は惚れたんだよ。

まぁ言い方変えれば底なしの馬鹿だけどな。

それでいい、その馬鹿さに惚れたも同然だからな。


もう人間界にそっくりでも驚かないぜ、なんせもう慣れたからな、でもくる途中にファ○マがあったのにはびっくりしたが。


「よし、最初はどこに行くかなっと」

「そうね、あ、ゲーセンとか?」

「まぁ在るだろうな、こんだけにぎわってりゃ」

それにこっちのゲームとやらも興味在るし。

こう見えても意外とゲーマーなんだぜ。

「よし、決まりね。あっちよ」

「相変わらず即決だな」

「いいでしょ、別に、、、、だめ?」

「んにゃ、むしろそっちのほうがいいぜ」

「ならいいじゃない」

てな訳でゲーセンへ。


「、、、、、おい、何が何でもこれはないだろう」

「何が?」

「だってよ、、、」

太○の達人、からムシ○ングまで、遂に細部まで人間界と被ってきやがった。

「そこまで一緒なの?」

「あぁ、何から何までまったく一緒だ」

「なら説明は要らないわね、ねぇ、何からするの?」

「まぁ、とりあえず定番の、ufoキャッチャーからだな」

「あー、私それ苦手なのよね、、、」

「ほう、まぁ予想通りというか当然だろうな」

「む、なんでよ」

「お前みたいな落ち着きのない奴がこんなの得意って方がおかしい物だ」

「うっさいわね、じゃああんたはどうなのよ」

「俺か? 大得意だぜ?」

「じゃあやってみなさいよ、かけても良いわ、あなたは失敗する」

「残念だったな、俺はこの類のものが大得意なんだよ」

「なら賭ける? 敗者は勝者の言うことをなんでも一つ聞かないといけないの」

「いいぜ、その賭け乗ってやろうじゃないか」


そういうと、俺は一番簡単そうな台を探してコインを入れた。

「邪魔は無しでいいな?」

「もちろんよ」


よし、狙いはあのティッシュ箱だ!

横列は、、、うん、うまくいった。

縦列は、、、まぁ誤差の範囲だ問題ない。


ウィィン、ガスッ、ギー


任務遂行だ。

ふ、他愛もないな。


ユキは今までにないほど悔しげな顔でこちらを睨んでいる。


「さてユキさん、これなんだ」

「、、、、」

「敗者は勝者の言うことを聞かないといけないんだよなぁ?」

「、、、、、」

「さぁて、なんにしようかなっとw」

「、、、、、」

「まぁあっちに戻るまでには考えとくから安心しなw」

「、、、、あっそ」

「まぁまぁ、そう拗ねんなよ」

「、、、まぁいいわ」

「お?」

「ねぇ、次はこれやってみましょ?」

「、、、某達人ゲームか」

「ほら、早くやるわよ」

「へいへい」

「、、えっと、、、意外と曲いっぱい在るのね」

「そうか? 普通のと同じくらいだろ」

とはいえ魔界の曲なんて俺は何にも知らないが。

「んー、まぁいいわ、此処に在る曲全部やりましょ」

「、、はぁっ!?」

「じゃあ右端の奴からやりましょ」

「マジで全部やんのか?」

「もっちろんよ」

「、、、、、」

まさかの鉄腕レース第二幕の幕開けとは。

「、、、まぁいい、よし、やってやろうじゃねえか」

「お? その気になったわね?」

「よしじゃあ一曲目、はじめようじゃねえか」

「いいわよ、、(ドンッ!)」

「さぁきやがれっ!」







正直に言おう、体が持ちません。


「ぜぇ、、ぜぇ、、」

「だ、大丈夫?」

さすがに合計36曲は辛いって

「ちと、ぜぇ、はしゃ、ぎ、すぎちまったようだ、えほぉ、えほ」

「ちょっとやりすぎたわね、さすがに私も疲れたわ」

「もう最後のほうはミスばっかだったからな」

「まぁちょうど良い時間帯だし、お昼にしましょうか」

「あぁ、昼飯な、了解了解」



おい、何でマク○ナルドがあんだよww

もう笑うしかねぇなww


「じゃあチーズ○ーガーのセットで、ウ○ロン茶」

「えっとじゃあ俺は、、、、」

ん? 何だこの馬鹿バーガーって、⑨? 意味が分からん、魔界オリジナルだろうか。

「ビッグ○ックのセットと、フィレ○フィッシュの単品で、飲み物はコ○ラで」

ちなみにスマイルは0円だった。


「1階は満席だなぁ、しゃあない、2階に行くか」

「そうね、にしてもおなかすいたわ」

そういいながらポテトを咥える。

「あ、こらっ!、歩きながら食べるんじゃありません!」

「ふぇー、いいふぁないふぇふに」

「女の子なんだからもっと品をよくだなぁ、、、」

「あ、あそこの窓際が良いわ」

「、、、、、」

完璧にスルーしやがった。

くそ、絶対に恥ずかしいこと命令してやるから覚えとけよ!

心の中でそう復讐を誓った。



「ねぇ、午後からはどこに行く?」

「んーそうさなぁ、のんびりぶらぶら町を練り歩く、とかじゃ駄目か?」

「○○がそれで良いなら良いわよ」

「うし、じゃあその方針で」

「おっけー」


あ、そういやユキへのプレゼントのあの首飾り、どうしよう。

見た感じ昨日のデパートはこの周辺になさそうだしなぁ。

明日買いに、、、はいけないだろうな。

さてどうしたものか、、、、


「、、、ねえ、明日はだいたい何時ごろ帰るの?」

「、、まぁ昼過ぎ、かな」

「、、、ふーん」


なにやら気まずいが、、


「あっユキじゃない!」

「!?、あ、アリス、と、あっ、いつぞやの黒白!」

「魔理沙よ」

「おっす、でもまあお前も黒白だぜ」


なにやらユキの知り合いのようだが、、、

一人は、アリスというらしい。

まるで人形のような面持ちで、外見だけならばユキにまったく引けをとらない。

身長はユキの方が高いかな?


もう一人は魔理沙というらしい。

これまたかわいらしい女の子、、、なのだが、男言葉、である点のせいで一転してかっこよく見えてしまう。

こっちはユキより背が高い。


「、、誰?」

アリスちゃんが怪訝な目でこっちを見てきた。

「ん? あぁ、俺は○○、分け合って人間界からこっちにきている者だ、明日で戻るから記憶にとどめなくても良い」

「人間界? 魔理沙と同じじゃない」

「いや、私のすんでる人間界とは多分違うぜ」

「? 人間界って二つ在るのか?」

てかよく見たら魔法使いの典型的な格好をしているな。

「いや、たぶんお前の住んでる世界で忘れ去られたもの、幻想となったものが行き着く場所が在るんだがな、私はそこへ住んでいる」

「ほぅ、そんなところが在るのか」

「まあな」

「、、、、ねぇユキ」

「なによ」

「、、、恋人?」

「なっ!? そんなわけないでしょ!(トマトみたいな顔、色的な意味で)」

「なによユキ、真っ赤じゃないww」

「うるさい! 真っ赤じゃない!」

なにやら後ろで話しているが、そんな真っ向から否定されると、惚れている身としてはちょっと傷つくな。

「あ、アリス、そろそろいこうぜ、お前の友達とやらの待ち合わせ時間が来ちまう」

「え? あらほんと、じゃあねユキ、彼氏さんと仲良くねw」

「うぇ!? だから彼氏じゃない!」

「「じゃーねー(なー)」」


、、、嵐のような連中ですこと。

「おもろい連中だったなw」

「迷惑なだけよ、、」

「そうか? 俺はすごい好印象だったが」

「類は友を呼ぶ、ねw」

「なんだよぅ、悲しいこと言ってくれるなよ」

「ほんとの事でしょ」

「orz」

「私たちもそろそろ行きましょ」

「それもそうだな」


俺たちはトレーを持って、此処の席を後にした。







「うわぁ、すごいアクセサリの数ね、、、」

「、、これには感嘆せざるを得ないな」

ここはちょっと古風な雰囲気の雑貨店なのだが、なにぶんアクセサリの数が半端じゃなかった。

まるで大図書館のように上から下まで所狭しとアクセサリが飾られている。

私もこんなところが在るなんて知らなかった。

まぁ興味がないからだろうけど。

ん? あれは、あのときの雪の首飾り、、、

、、、ちょっと気になってたりもするのよね。

そりゃあ一応女の子なわけだから、たまに、本当にたまに興味がわくときも在る。

、、、、、まぁ買わないけど。

だって私なんかに似合わないだろうし。

はぁ、なんか損な性格してるよな、私。

好きなんだから買えば良いのに、貧乏って訳でもないし。







こいつはラッキーだな、あのときの首飾りがこんなところにもあってくれたよ。

てかまぁこんだけ在るんだからまぁ当然といえば当然だけども。

ユキもあれを凝視しているし。

後でこっそり購入しておこう。


「すごいな、ここ」

「ほんとね、まさかこんなところが在るなんて知らなかったわ」

「へー、でもこんだけ品揃えがよければなにやら有名だとは思うんだが、、」

「あまりこういうのに興味がないからね、そういわれてみると有名かもしれないわね」

「ふーん、興味ないのか」

「○○はあるの?」

「全然」

「、、なんか見たままね」

「あ、どう意味だよ」

「さぁねw」

「ちぇっ」





「この店はたから見れば古ぼけた古本屋となんら変わりないわね」

「まぁ古臭いといえばそうだよなぁ」

「繁盛してるのかしら」

「さぁね」

「さってと、次はどこ行ってみる?」

「んー、あ」

「どしたの?」

「ちょっとトイレ行きたい」

「、、、はぁ、行けば?」

「ちょっと行ってくる」


そういって俺は店内へ再び入る。


店員らしきおばさんに声をかけてみる。


「すいません、あれがほしいのですが」

「あれってのは、、あの雪の奴で良いのかい?」

「はいそうです」

「はいはいちょっとまってね」


「よいしょ、これでいいかい?」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ代金は、えーっと、2300円だね、包みはどうする?」

「あ、プレゼント用でお願いします」

「はいはい、さっきの子にあげるのかい?」

「はい、まぁ」

「へぇー、良いもんだねぇ、青春は、はい、毎度あり」

「ありがとうございます」

「じゃあね、がんばりなよw」


何をだろうか、最後の笑いとともにかけられた気になったが、余り考えないことにした。




「、、、おそかったわね」

「すまんな、すこし腹が痛くて」

「、、、で、どこに行くか案は決まった?」

「んいや、まったくもって」

「もぅ、考えときなさいよ」

「まぁ決めることもないだろう、その辺をぶらついとこうぜ」


そう言うと、ユキは不服そうにしながらも、俺の前を歩き始めた。


「お前っていつも俺の前を歩くよな」

「んー、そういわれてみればそうね」

「やっぱこれが上下関係の現われなのかなぁ」

「というよりはまぁあなたを見てるとどうも前に出て守ってあげないとって思ってしまうのよ」

「むぅ、普通は逆のはずなんだがなぁ」

「早い話が強くなりなさいってことね」

「そうだなww」


他愛もない話をしていたその時、


ドンッ


「ってえなクソ野郎!」


なにやらぶつかってきた奴が、ってこいつは、、、、


「あ、手前らはこの前の、、、」


ビンゴだ、俺を刺してきやがったクソどもだ。


「おいそっちのガキ、俺らが追った火傷の恨み、晴らさしてくれないか?」

「いいわよ、ただしやれるもんなら、の話だけど」

「、、此処は人目につくが、いいのか?」

「べつに、どうせあなたたちが焼けて終わりだろうし」

「ふん、言ってろよw」

「○○、ちょっと離れててね」


巻き添えを食らうのはごめんなので、おとなしくその命令に従うことにした。

シュルゥ、キンッ

その男はサーベルを抜き放つとユキに向けて威圧の構えを取った。

なかなかどうしてあの構えは素人のものじゃないな。

だが一方のユキは余裕綽々としていて、どっからでもかかって来い、とでも言うようなオーラだった。


、、、、なんだかいやな予感がする。

野次馬が増えてきて、中には賭けまでする奴もいた。

違う、そんなことじゃない。

もっと別の違和感が在るだろう。







、、、そうだ!、こいつらの仲間が半分近く少ない!



だが無常なことに、気づいたときには時既に遅し、ユキの死角、、つまり真後ろと左右の真横よりちょっと後ろ側から計三人、サーベルを持った奴が一人、ナイフが二人。


ユキに自らの得物を突き刺すべく、ユキめがけて突進していた。



得物は対称物に突き刺さり、その血が飛びち、、、、らなかった。




いやまぁ飛び散ったけどな。










正確には、俺の血が当たり一面ぶちまかれた。









「!!? ○、○?」




「ごほっ、大、丈夫、か?」








他の連中(ギャラリーから不良まで)は何がおきているのか分かっておらず、分かっている奴も唖然としていた。








やはり、人は死ぬ間際ってのはいやに冷静なんだな。








「ュ、、、キ」



「そんな、嘘でしょ、、、いや、○○死んじゃいや」



ユキ後ろだ。



「な、なんかは知らんが、チャンス、か?」

「チャンス、だな、復讐の」




くそが、まだやろうってのか。


「よし、ん? 誰か俺のサーベル知らないか?」


「此処に在るぜ」




ザクッ




「ぐぁあああ、手がぁぁ」



「ひっ、誰だ手前!」




「名乗る必要はないわ、なぜならあなたたちは此処で死ぬもの」



魔理沙に、アリス、、、、、




「○○! 大丈夫か!?」


「大丈夫? しっかりしなさい、、」




●●にマイ、、、、、、


くそ、こいつらつけてやがったな。


俺が生還した暁には代表として●●をしばきまわしてやる。




「ぐほっ、げほっげほっ」



吐血か、、、、

こんだけ血がでりゃ、誰でも死ぬだろうよ。

「○○ぅ、、ひっく、、死んじゃやだよぅ、ねぇ○○ぅ、、ひぅ、、、、いつもみたいに変な悪ふざけで私を呆れさしてよ、怒らしてよ、ねぇ、○○ぅ、、、」



「ュ、、、キ」


「な、何?」



「今、、言う、、ことじゃ、ごほっ、無いかもだけどね、最期かもだから、、、ぐほっ」


「最期、なんて、、ひっく、、言わないでよ、、何?」


「あのさ、、、ぐぅ、、実は、俺はお前が、大好きだった」


「、、、なんで、、ひく、なんでこんな時に言うのよ、、馬鹿ぁ、、」


「ごめ、、ん、、やっぱめいわkんぅ」




なにが起きた?


ユキの顔がやたら近くに在るが、、、、


「、、、っぁ、、、これが返事よ、馬鹿、だから生き延びなさいよ」

「、、ありがとう、、でも、、うぇほっ、えほっえほ」

「!? ○○!? 大丈夫!?」

「、、、、ユ、、、キ、、、これを」

「!? ○○!? ねぇ、○○!?」




もうこれが最期かな、われながら良くがんばった。




冥土の土産にあんなものもらったしな。




、、、心残りしかないな。




あぁあ、死にたくねえなぁ、、




せっかく実ったんだから、もっと一緒に居たいな、、、



でも好きな人を守って死ぬか、、、



それだけでわが人生に悔い無し、、だ、、、












「○○、ねえ、○○ってばぁ、、、、」


私の声は虚しく、空を切るばかり。


「起きてよ、ねぇ、起きてよ、、、、」


なぜ、なぜなんだ。


「ユキ! 救急車が届いたから早く! 早く○○を連れてきて!」


そう呼ばれ、急いで彼をおぶる、軽い、こんだけ血が抜ければ当たり前か。


○○を乗せた救急車は、けたたましい音を鳴らしながら、病院へと向かっていった。


私はひどく力が抜けた、それと一緒に、私の意識もやみに落ちて行った。

──────────────────────

彼はいつ起きるのだろう。


彼が集中治療室から出てきてからはや半日、医師によると、助かるかどうかは本人の体力しだい、だって。

なんで、彼がこんな目にあわないといけなかったのか。

全ては私の油断、自己嫌悪なんてものじゃすまない。


彼が目を覚まさなかったとき、私はどうなるのだろう。


きっと壊れてしまうだろう。


「、、○、○ぅ、、、」

返事は当然あるわけでもなく、私の声は広い病室に小さく響いた。


「、、、、ユキ」

「、、、、、、何よ」

「、、、ご飯食べないと」

「私いらないわ」

「ユキ、お前の気持ちは痛いほど分かるがな、せめて食事くらい「わかってるわよっ!!」

「あなたたちは二人ともそろっている、どちらもかけてないし欠ける予定も無い、でもこっちはっ、自分のっ、一番愛していた人がっ、生死の境目をさまよってる最中でっ、、、やっとお互いが自分たちの気持ちを確認できたのに、、、、どんだけ辛いと思ってるのよ、、、」

「、、、、、ユキ」

「、、、、、ほっといて」

「、、、すまん」

そう●●が言うと、二人は出て行った。


、、、私って最悪だ、、、、

ごめんね、○○、ごめんね、皆。












○○が目覚めないまま、もう二日、私の心は廃れきっている。


「○、○、、起きてよ、、」


どれだけ呼びかけただろう、どれだけの時間呼びかけてすごしただろう。

少なくとも覚えてられるほどではなかった。

「ユキ、いい加減にしないと、ほら、ご飯持ってきたわよ」

「、、、、、いらない」

「、、、俺が言えることではないが、まぁ聞く耳だけでももってくれ」

「、、、?」

「人間は愛する人が不健康だと、落ち込んでしまう性分の奴が多くてな」

「、、、、」

「それが自分のせいだとすると、なおさらだ、でだ、お前さんはこいつを、○○を落ち込ませたいか?」

「、、、いいえ」

「だとすればだ、自分のことを省みてない今のお前は、目覚めた○○を受け入れる体制が出来ていない」

「、、、、、」

「お前が受け止めることが出来ないなら○○も戻ってはこれまい。滑走路の無い飛行機は着陸できないのと同じでな」

「、、、、、」

「まぁ飯はここにおいておくから、自分で考えな」

「、、、、、」

「おかわりは此処を出て左にまっすぐいった所に在るから、じゃあな」

「、、まって」

「ん? どした?」

「その、、、ありがと」

「いやいや、気にすんな」


、、、、あのマイがこいつを気に入ったのも分かる気がした。


まぁとりあえずご飯を食べるか。


、、、、うまい。





食べ終わったら急に眠気が襲ってきた。

ここで寝るべきか否か、、、、


「うっす」

「、、、なによ白黒」

「まぁそうとんがんなってば」

「、、、、で、何の用事よ」

「いやまぁ一つこんな話をしてやろうと思ってな」

「?」

「一晩眠ると全てがうまくいくようにこの世の中は出来ているって事をな」

「、、、何よそれ、根拠は?」

「ない」

「、、馬鹿なの?」

「実体験に基づく話だよ、大丈夫、この私を信じて今は寝ときな」


そういうと馬鹿は私の肩をポンッ、とたたき、部屋から出て行った。


、、、全てがうまくいく、か。


しょうがない、信じてやるか。

私は食事中以外、片時も話さなかった彼の右手を枕に、深い眠りに付いた。


──────────────────────

何も無い。


これが死、か、、、、


天国だの地獄だのはやはり無いようだな。


無にかえる、やはりと言えばそうだな。


だが、、、


なぜだろう、右手がすごく、温かい。


形容しがたい、温もり。


不器用でいて、包み込むような抱擁の温もり。


温かい、なぜだろう。


この温もりはひどく安心する。


この温かさだけは自分から二度とはなれないような気がして、すごく落ち着いた。









、、、、、、、、、、


「天井、、、、、」


生還、、か。


俺はどうやら生きているようだ、否、生き延びれたようだ。

此処が天国でないと言う保証は無いが。


だが全身の痛みがその不安を消してくれた。


俺は生き延びることが出来たのか、、、、

あんだけ体中に刃がつきたてられておいて生き延びられるものなのか、、


全身が歓喜で震え上がりそうな勢いだったが、激痛によってそれは止められた。

痛さは尋常じゃなかった。

やはり、よほどの重体だったのだろう。


、、、見たところ、と言うか見たまんま、今はおそらく真夜中だろう。

真っ暗な、音一つ無い病室、見ごとなまでの真夜中だった。


、、、寝るか。


する事も在るわけないし、寝たほうが治りも良いだろう。

そう思って目を閉じると、物の数秒で俺の意識は深い闇へと落ちていった。

右手にぬくもりを感じながら。





「んぅ、、、、ぁあ」


日の光で目覚めるなんて何年ぶりだろう。

ひょっとしたら初めてかもな。

目覚めは、自分が包帯だらけであることを忘れさせるかのごとく、清々しかった。


んと、、今は、八時か。

とはいえど、時間を知ったところでどうになるわけでもないが。



、、、、、右手の温もりの正体はこれ、か。



見ると、ユキが俺の右手を命綱でも持つかのごとく握ったまま、眠っていた。


だがその寝顔は、不安一色だった。

そんなユキの顔は見るに耐えかねず、俺はユキを起こすことにした。


「、、、ユキ」

「すぅ、、、すぅ、、、」

「、、、おきろ(ピチピチ)」

「すぅ、、、ん、、」

「、、、起きろっての(むにゅぅ)」

「すぅ、、、んぅ、、」


起きねえ。

しかしこいつのほっぺは感動的な感触だな。

硬すぎず、やおすぎず、まるで触られるために在るかのような。


むにゅむにゅ

「んぅ、、、」


起きない。

しゃあない、起きるまでこの新感覚を体験し続けるとするか。


むにゅぅ

「んぁ、、、ん、、」


むにょ

「う、、んぁ」



お、起きた。


ユキは寝ぼけ眼でぼぉっとしている。


しかし、今まで絶賛ぼんやり中だったユキは、俺を見ると、


「あ、あぁぁぁあぁ」


そう呻きながらベットにもたれ掛かるように笑い泣き崩れた。


「心配かけたな」

「ほんとに、、ぐずっ、、し、死んだかと、、ずぅ、、お、思ったんだから」

「、、、すまんかった」

「、、、三日も目を覚まさずにいて、どれだけ心配したと、、ぐすっ、、、思ってんのよ」

三日も目を覚ましてなかったとは、、、

「、、心配してくれて、ありがとな」

「、、、、うわぁぁぁん」

「うぉっ」


終いには大泣きしながら抱きついてきた。


、、、正直痛い、すごく痛い、でも、俺はユキを抱きしめ返すのをやめなかった。





どれほどの時間抱きしめあっただろうユキはとっくに落ち着いたようでもう泣き止んでいる。

でも、どちらもお互いを離そうとはしなかった。


「あついのね」


そんな冷めたアリスの声がするまでは。

慌てて俺らは離れたが、時すでに遅し、病室の入り口にもたれ掛かっている●●、その●●にもたれ掛かっているユキ、アリスの後ろに居る魔理沙、それとアリス、なぜだかみんなニヤニヤしている。

、、、、見てやがったな。

ユキは真っ赤、おそらく俺も真っ赤であろう。


「、、、、、どこから見てた?」

「んー、抱き合った瞬間ぐらいからだな」

代表して●●が教えてくれた。

「ほんと、暑いのね」

これはマイが、てかお前が言うな、お前が。

「まぁ後は若いお二人に任せて俺たち邪魔者は退出するとしようぜ」

「そうだな、これからお楽しみだろうし、私たちは出るとしようぜ」

「、、、、、●●、覚えときやがれよ、、、」


言い切る前に、全員消えていた、クソめ。




「えっと、、あの、○○?」

「ん? 何だ?」

「あの、、その、あの時言った言葉覚えてる?」

「、、、、、あ、あぁ」

顔はさぞかし赤いことだろう。

「、、、なら改めて言い直すわね」

「お、おぅ、てか俺から言わせてくれ」

「うん、いいわよ」

「なら、、、、、俺は、お前のことが、大好きだ、あ、loveのほうな」

「分かってるわよ、、、私も、あなたのことが大好きです、もちろんloveの方で」

「、、、、、だから、俺とこれから一緒に居てくれないか?」

「、、、喜んで」

今の俺たちは蛸よりも赤い事だろう。

「、、、そういえば、あの包み見てくれたか?」

「?」

「見てないのか、、、」

「ごめん、あなたのことでちょっと色々忙しくて」

「いや、攻めるつもりは微塵も無いがな」

「そう? ならいいわ」

「、、、、、なぁ、俺はどうするべきだろう」

「? 何が?」

「、、、俺が人間である、と言うことだ」

「、、、やっぱり戻るの?」

「いや、まぁでも別れはつげに行くかもな」

「、、、、でも戻ったら、こっちには、、、」

「いや、そこは●●に聞けば何とかなるだろう、ただな、問題はそこじゃないんだ」

「?」

「お前は魔界人であり、魔法使いだ」

「うん」

「だがな、俺はただの人間だ」

「、、、」

「俺はこのままだとほぼ確実にお前を置いて逝ってしまうであろう」

「、、、、」

「だが俺はそんなのはいやなんだ、お前と最期まで一緒に居たいんだ」

「、、、、、」

「それについて何か良い方法は無いか?っと思ったんだがな」

「、、、○○も、一緒に魔法使い、と言う種族になれば良い」

「?」

「魔法使いってのは、生まれながらにして魔法使いであるものと、人から魔法使いになるものの二通り在る」

「、、、、ほう」

「前者は、そのままだと普通に老いて、寿命を迎える。だからそれを防ぐために、捨虫の魔法と言う成長を止める魔法を自分にかけるの。そうやって成長を止められて初めて魔法使いと認められるようになる。」

「、、、意外と簡単なんだな」

「そうでもないわ、その魔法を習得するのにすごい時間がかかるの、だから昔の魔法使いには老人や老婆が多かった」

「なるほど、、、」

「でね、後者は、捨虫の魔法に加えて、魔力を己で生成できるようにする、捨食の魔法も自分にかけないといけないの」

「、、、、」

「私やマイやアリスは後者だけど、まぁ自分で言うのも何だけど、才能がすごくあったみたいで、ものの十年で習得できたの」

「普通はどれくらいかかるんだ?」

「良くて三十年、今の魔界は魔法の研究が進んでいるから、もうちょっと短くてもすむかもしれない」

「三十、、、年か。ユキがその魔法を俺にかけるってのは無理なのか?」

「無理なの、この二つの魔法は自分にしかかけられないように出来ていの」

「、、、、、でも、習得できれば、お前とともに歩めるようになるんだろ?」

「まぁね」

「なら何年でも何十年でも俺はやってやるさ、でもそれまでに老いて醜くなってしまうかもしれない、それだけは許してほしい」

「大丈夫、外見がどうであれ○○が○○である限り、私は見限ったりなんかしないわ」

「、、、、、、」

「、、、、、なんか自分で言っといてなんだけどすごい恥ずかしいわ」

「、、、、こっちもだよ」

「、、、あ、それで別れをつげに、やっぱり行くの?」

「んー、それなんだがな、あっちに手紙的な何かを送るだけで良い気がしてきたんだよ」

「、、、なによそれ」

「だからまぁそのことは気にすんなよ」

「、、、まったく、心配かけさせないでよ」

「すまんすまん」

「もう、、、、」



(ピンポンパンポーン、703号室の○○さんの恋人の、ユキさん、○○さんの恋人の、ユキさん、お連れ様がお呼びです、待合人室まで来てください、ピンポンパンポン)


、、、、あいつら、ほんとにしばいてやる、くそっ、ご丁寧に部屋の場所まで言いやがって。

「、、、、ちょっと行って来るね」

「あぁ、あ、ちょっと待てユキ」

「?」

「ちょっとこっちに来てくれ」

「どしtんむぅっ」



「、、、っぁ、、、あのときのお礼だ」

「、、、、、(顔がすさまじく真っ赤)」

「、、、嫌だったか?」

「そんなことは無いわ、でも次は私からやるからね」

「へいへい分かりましたよ」

そんなこんなでしていると、

(ピンポンパンポーン、703号室の○○さんの恋人の、黒い帽子をかぶって黒い服を着た見た目十歳ぐらいのユキさん、お連れ様がお待ちです、待合人室までおこしください)


「、、、、ちょっとあいつらしばいてくるわね」

「俺の分まで頼む」

「分かったわ」

そういうとユキはあえてか知らないが、怒りと羞恥のオーラを漂わせながら病室を出て行った。


、、、、あいつらはどうなることやら、まぁ知ったこっちゃ無いがな。


さて、一人になったことだし、ちょっと居眠りでもするかな。

帰ってくるまでの時間だからそう長くも無いだろうけど。

その後今後のことについて引き続き色々と話し合ったりよう。

魔界ライフの幕開け、か。

中々に楽しみだ。



寝るか。




最愛の少女が帰ってくる時まで。

まぁ帰ってきても寝てるかもしれないがな。


──────────────────────

「はぁ、、、、」


暇だ。


余りに暇だ。



結局あれから○○はとりあえず魔法の基礎を学ぶために学校に通い始めだした。

だから当然昼に家にいるわけも無く、こうして一人で暇を潰しているのだが。



「暇ねぇ、、、」


見事なまでに潰せてない。

あいつが来る前は私はどんなことをしていたのだろうか。
この暇を潰せることが出来ていたなんて、我ながら尊敬する。

それともあれか、人を待つから時間が長く感じられるのか。


何かすることでも見つけられれば良いのだが、、、



、、、、そういえば●●の奴は人間のままですごすつもりなのだろうか。

見たところ捨虫や捨食の術は使用してないようだし。

会得しようともしていない。

そのまま人間として過ごして人間として死ぬつもりだろうか。

、、、、聞いてみるのが一番か。


私はやっとこさ暇つぶしになりそうな目標を見つけると、その目標に向かって家を飛び出した。









「は? 人間として死ぬかだって?」

「うん」

いきなり来たかと思うとなんだ? 死ぬ? また不吉な言葉を。

「そいつは一体どういう意味だ?」

「だから、○○みたいに魔法使いになって寿命を延ばして、見たいな事はしないのかって事」

「あぁ、そういった意味ね」

「で、どうなのよ」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「何をよ」


「いや、俺が既に捨虫系の魔法は習得しているって事」


「、、、、、、、は?」

「あ、言ってなかったんだな」

「え、だってあなた普通に成長してるし魔力が体内から感じられないし、、、、」

「まぁ習得はしているが使ってないから当然だろうよ」

「、、、、なんで?」

「まぁ理由は色々在るんだよ」

「どんな理由よ」

「聞きたい?」

「焦らすな!」

「へいへい、、本当に色々理由は在るが、やはり一番大きい理由はまだ覚悟が出来てないからだろう」

「覚悟?」

「そ、なぁユキ、浦島太郎って知ってるか」

「知ってるけど、、」

「簡単に言うとな、俺ら外の人間にとって魔法使いになるってことは、浦島太郎のようになるって事なんだよ」

「、、、、」

「あっちの時間の流れから、俺達は完璧に外れてしまう」

「、、でも」

「すなわち、あっちの世界の全てを失ってしまうときが来るって事だ、浦島太郎は云百年後で一人ぼっちになってんだから、そんなに違いは在るまい」

「、、、、でも、私が言うことじゃないけど、自分のそういった物を捨ててでも愛する人を愛すって考え方は無いの?」

「捨てることをその愛する人が止めたら止めざるをえんだろう?」

「、、、、、それでも私は、、、」

「、、、○○のことか」

「、、、」

「あいつがなんていうかは分からんがな、それでも確認というか、話を聞いた方が良いとは思うぜ」

「、、、うん」


、、、、、、今にも泣き出さんばかりの落ち込みようだな。


「、、、まぁ、あれだ、人それぞれだ」

あぁ、我ながら語彙の少ないこと。

「、、、、うん、ありがと、もう帰るわ」

「お、おう、じゃな」

「うん、じゃあね」


そういうと、力なく飛んでいった。


、、、、○○によほど惚れこんでんだな、俺みたいな奴の戯言を聞いただけであんなに落ち込むとは。


まぁ、俺もいつかはつかうだろうけどな。

○○もきっと、いや、絶対使うだろうよ。


それと、一つ、ものすごい重要なことあいつに言ってなかったな。

俺らは愛する乙姫と別れた浦島太郎と違い、分かれることなく一生をともに過ごせるって事を。

、、、、まぁいっか。








時間の流れから外れる、か、、、、

やはり魔法使いになることを進めるべきではなかったのか。

今になって後悔する自分に少々腹が立つ。

もっと考えろよ、本当に。

行き場の無い怒りを抱えていると、いつの間にか家についていた。


「、、、、ただいま」

「おう、ユキ、お帰り、どこ行ってたんだ?」

「ん、ちょっとね、○○もおかえり」

「あぁ、ただいま」

「、、、、」

「、、、、何かあったのか?」

「別に、、」

「体調悪いとか」

「すこぶる健康よ」

「、、、まぁ大丈夫なら良いんだけどな」

「大丈夫よ」

「、、、んーなんだ、まぁあれだ、悩みが在るなら何時でも相談に乗るぞ」

「ありがと」


こんなときに優しくされると、ほんとに、ちょっとだけど、こう目頭が熱くなるような感じに襲われる。

あれ、ちょっと、まってよ。

もう耐え切れないと言わんばかりに、堤防は決壊した。



「!? お前泣いてるじゃないか!」

「な、何でもないわ」

「、、、話してみろよ」

「なんで、もない、わ」

「そんなわけ無いだろ、良いから話してみろって」

「で、でも、、、、ぐすっ、○○ぅ、、」

「うぉ!?」


耐え切れなくなった私は、全体重を○○に預けた。

「、、、まぁ落ち着けよ、落ち着いたら話すか話さないかだけでも教えてくれよ」






「落ち着いたか?」

「(コクン)」

「まぁ話す気があるなら話してみてくれよ」

「、、、、、、○、○は」

「?」

「○○は、向こうの世界の、全てを失っても、私と一緒に居てくれるの?」

「、、、、どういう意味だ?」

「だから、あっちの事全てを失ってでも、あっちの時間の流れから外れてでも、私みたいなのと一緒に居てくれるの?」

「なんだ、そんなことでこんなに悩んでたのか」

「そ、そんなことって、な、なによ」

「お前も馬鹿だなぁ、一緒に居るに決まってんだろ」

「で、でも」

「良いんだよ」

「あっちの物も者も全て失う事になるんだよ?」

「まぁそりゃ全てを投げ打つ事に、失ってしまう事に抵抗が無いわけじゃねえさ」

「、、なら」

「でもな、手に入れることの出来る物がそんなものがカスに見えてくるぐらい莫大なものなら話は別だ」

「、、、、それが私?」

「あぁ、お前だ」

「私にそんな価値は在ると思えないけど、、」

「価値云々の話を持ち出すな、問題なのはどっちが自分にとって必要か、だ」

「、、、でもその天秤に見合うだけの魅力は持ってないわよ」

「アホ、魅力云々も禁止だ」

「、、、じゃあどうして私をとるの?」

おいおい、理不尽にキレんなよ、、、

「じゃあどうしてお前は俺と一緒に居る道を選んだんだ?」

「それは、、、その、、、」

「それと同じだよ」

「でも、私は捨てるものが無いから、簡単にいえるけれども、、、○○は、○○の捨てるものは、、、」

「でもな、それでも俺はお前をとる、お前とともにいる道を選ぶ」

「なんでなの?」

「あーもう、惚れてんだからしょうがないだろ! お前といた方が俺は幸せなの!」

くそっ、恥ずかしいな、おい。

「、、、、、(真紅、顔が)」

「あぁっ! もうこの話は終わりだ! 終わり!」

「な!? ちょっと待ちなさいよ、どこ行くのよ!」

「外の新鮮な空気を以下云々」

「ちょっと! まだ話は終わってない!」

「いいんだよ、自己完結自己完結!」

「ちょっと待ちなさいって!」

「あーあー、聞こえなーい」


マラソンランナーもかくやのスピードで家を飛び出した。

よし、脱出は成功だ。

さぁて、晩飯になって●●が来るまでその辺ほっつき歩いて、、、、ん? ●●?

、、、、もしかするとこの話の全ての元凶はあのあほんだらけのせいなのではないか?

だがおおいにありえる、いや、寧ろ断言できてしまうほどだ。

朝あんなに嬉々として俺を送り出してくれたユキがあんな事を自ら考えだすなんて思えないしな。


よし、〆よう。


俺は固く決意をすると、目標所在地に向けて歩き出した。










んぐぅ、、、、

うぉ、もうこんな時間か。

まったく、一日は短いなぁ。

ちょっと居眠りこいたらすぐ日が暮れてしまう。

まぁユキが来るというちょいとイレギュラーな予定も入ったけどもな。



腹減ったな、、、、

まぁそろそろマイの家に行くとしますか。



ピンポーン



誰だ? こんな無神経なタイミングに来る馬鹿は、まったく。


「はい、どちらさんですか?」

「俺だ」

「おぅ○○か」

何しに来たのやら。

「上がるぞ」

「おぅ」


どす、どす、どす



足音でかいな。

、、、、なにやらご立腹のようでして。

あれかな?


「どした?」

「話が在るんだよ」

「ひょっとしなくてもユキのことか」

「あぁ、やっぱりお前か」

「まぁな、で、お前はどうするわけで?」

「その前にだ」

「?」

「大事なことを教えてくれたお礼でもしようと思ってな」

「あぁ、そんなの気にしなくても良いのに、てかいつからそんな気の聞く人になったんだよ」

「まぁまぁ、そう遠慮せずに、受け取れ!」

そういうとこぶしを振りかぶって、、、、



ごすっ!



「ぐふぅ」

「てめぇ人の恋人に余計な入れ知恵すんなっ!」

「いてえな! なにしやがる!」

「正当なお礼もとい罰だ、どあほ!」


せめて宣言の元にやれよ、不意打ちは男じゃねえぜ。


「、、、、、何か言いたげな顔してるのは気のせいか?」

「たぶんな、でだよ、お前さんはどうする?」

「決まってんだろ、こっちに残って魔法使いになってやるよ」

「ユキのためか?」

「もちのろんだ」

、、、、、こいつは

「ほぅ、、、、だがな、一つ良いことを教えてやろう」

軽率にもほどが在る

「なんだ?」

「ちょっと耳を貸せ」

「?」


パァンッ


「、、、、、、、」


状況を理解してねぇな。

にしてもまぁ平手打ちってのは此処まで綺麗に入るもんなんだな。


「ってぇな、なにしy「お前は、失わせる方の気持ちを考えたことは在るか?」

「!?」

「愛する人の人としての生きる道と全てを自分のせいで失わせてしまうかもしれない、と悩み苦しむ恋人の気持ちを考えたことは在るのか?」

「、、、、、」

「そりゃあお前は自身の判断だろうから平気だろうよ、多少の失う悲しみは愛する人と時を刻める、と言う事実を手に入れれるのだから相殺も良いとこだろうよ」

「まぁ、それはなぁ」

「だがな、彼女等は自分のせいで愛する人の今までとこれからを根こそぎ奪ってしまうと言うどうしようもない苦しみの中にいるんだよ」

「それを救ってやることが出来て初めて、俺らには魔法使いになる権利が出来る、俺はそう考えている」

「、、、、なる、ほどな」

「なるなというつもりはさらさら無い、寧ろなってやれとも言いたい」

「、、あぁ」

「だがな、軽率に自分だけで決めるのは絶対にするな、さもなくばユキは消えることの無い、愛情に比例して増える苦しみの中に一生、お前といる限りとらわれることになる、そんな彼女をお前は見たくないだろ?」

「、、、あぁ」

「はたいて悪かったな、よし、俺も今からユキの家に行こうとしてたところだ、一緒に行こうじゃないか」

「、、、おう」

「ま、悩め、大いに悩め、悩んだ末にたどり着く物は、お前にとって必ず正解だから」

「、、、殴って悪かったな」

「ん? まぁきにすな」

「、、、、お前はすごいな」

「何か言ったか?」

「別に」

「あっそぉ、俺がすごいとか聞こえたのは勘違いだったかぁ」

「、、、、えの」

「あん?」

「手前のそういうところが気にいらねぇんだよっ!」


The・後ろ回し蹴り顔面直撃型


「うぼぉぇ」

「一生悶えてろ!」


「あぁあ、俺って損な役回り、、、、」


「、、、私はそんなあなたに惚れたのよ?」

「おぉうマイ。いつからいた?」

「、、、、、、、、、あなたの他人を想う気持ちが全面的に出ているあたりから」


抽象的だな、オイ。


「、、、、、行きましょ?」

「おぅよ、もちだ」



、、、、、まぁしかし嫌いな役ではないな

うし、飯食いに行くか。



新ろだ2-146,2-148,2-151,2-161,2-152,2-208
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最終更新:2010年07月02日 23:42