2014 FIFAワールドカップ

「2014 FIFAワールドカップ」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

2014 FIFAワールドカップ - (2017/10/12 (木) 12:22:12) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2015/04/06 Mon 19:15:34
更新日:2023/06/17 Sat 20:20:32
所要時間:約 34 分で読めます




2014 FIFAワールドカップとは、2014年6月12日から7月13日にかけて、ブラジルで開催されたFIFAワールドカップである。


概要

世界で最も注目度の高いスポーツの祭典とも言われるFIFAワールドカップ。
その丁度20回目に当たる本大会は、サッカー王国として名高いブラジルで開催された。

開催前にはスタジアムや周辺施設の建設が遅れたり、建築現場で事故による死者が出たりという騒動も(結局スタジアムの方はギリギリ間に合ったようであるが)。国内の貧困問題等を抱えながらW杯に巨費を投じたジルマ・ルセフ大統領への批判も多く、開幕戦や表彰式に姿を見せた際にはブーイングを浴びていた。

開催都市は開幕戦が行われるサンパウロや決勝戦が行われるリオデジャネイロなど計12都市。
熱帯地域や高地に属する都市も多く、出場選手にはこういった過酷な気候への対処も求められた。

試合運営面では機械によるゴール判定技術(GLT:ゴールラインテクノロジー)およびバニシングスプレー(時間経過により消滅する、フリーキックの位置・その際の壁の場所をピッチに書き示すスプレー)が導入された。

グループリーグ


FIFAランキングにより選ばれたグループ抽選におけるシード国に、コロンビア・スイス・ベルギーといった新興国が含まれていた一方、オランダ・イタリアなどヨーロッパの強豪国がシード入りを逃し、これにより多数の死の組が形成される見込みがあった。事実、本大会における組み分けは以下に記すように近年のW杯の中でも一段と厳しいものになったといえる。

グループA

1位:ブラジル 2位:メキシコ 3位:クロアチア 4位:カメルーン

開催国ブラジル以下、侮れない実力を持ったチームが組み込まれたグループ。ここについても死の組と評する声があった。
6度目の優勝を目指す王国ブラジルは地元の大きな声援を受け満を持しての登場。試合前の国歌斉唱では選手たちとスタジアム全体が一体となり、演奏が終わっても歌い続ける姿が印象的であった。

開幕戦はブラジル対クロアチア。主審を西村雄一氏が務めたことが日本では話題となった。
大会オープニングゴールはブラジルのマルセロによるオウンゴールという波乱の幕開け。更にブラジル国民期待の星・ネイマールもイエローを貰いブラジルにとっては怪しい雲行きに…かと思われたがそのネイマールがPK込みで2得点を挙げて期待に応えた。この際のフレッジが倒されたプレーがPKと判定されたことは物議を醸し、西村氏の主審としての担当は本試合のみに留まった(第4の審判として他に2試合を担当した)。
その後ブラジルはメキシコと引き分けたのち既に敗退が決まっていたカメルーンを4-1と圧倒し、前評判通りのグループ首位通過を果たした。

江藤さんらを擁し他チームにひけを取らない陣容のカメルーンであったが、大会前からボーナスを巡ってゴタゴタしたりとお家芸の内輪もめを披露。クロアチア戦ではソングがクロアチアのエース・マンジュキッチにボールと関係ないところで肘鉄を喰らわせて一発退場となったり、チームメイト同士で喧嘩をしたりということもあり、持ち味を発揮できないまま3連敗。不屈のライオンは眠れる獅子のまま大会から姿を消した。

2位争いを制したのはメキシコ。ブラジル戦ではGKオチョアが圧巻のスーパーセーブ連発により引き分けを挙げる。
第3節のクロアチアを手堅くものにし、6大会連続となるグループ突破を果たした。得失点差で2位ではあったものの、勝ち点で開催国ブラジルと並ぶという快挙であった。また前回大会のマラドーナ程ではないがエレーラ監督のリアクションも話題になった。
クロアチアはグループ敗退。エースストライカーマンジュキッチやワールドクラスの司令塔モドリッチらを擁しダークホースとして期待されていたが、1998年フランス大会で初出場にして3位に輝いて以来の旋風を巻き起こすことはできなかった。

グループB

1位:オランダ 2位:チリ 3位:スペイン 4位:オーストラリア

何と前回大会の決勝カードがグループリーグの初戦で実現(!)。そこに侮れない実力を誇るチリまでも加わった死の組その1

そのスペイン対オランダであるが、前半スペインがPKで先制するものの、オランダが主将ファン・ペルシの華麗なるダイビングヘッドで同点に追いつく。歓喜のファン・ペルシは真っ先にファン・ハール監督の下へ向かいハイタッチ、また世界中でこのダイビングヘッドを真似たポーズをする人が現れ、その中には御年93歳を迎えたファン・ペルシの祖父もいた。
後半はオランダが4点を奪って大勝。4点目はファン・ペルシがGKカシージャスのトラップミスを掻っ攫ってゴール、5点目はロッベンが自慢の快足でセルヒオ・ラモスをぶち抜いてゴールという圧巻の内容だった。

失意の前回王者スペインは続くチリ戦でも0-2の敗北(前回大会でも同グループで、2-1でスペインが勝利していた)。 3戦目を残してグループリーグ敗退が決まってしまった…。ある観客はタブレットで"ADIOS SPANA"と煽り、失意のデル・ボスケ監督は試合後間違えてチリ陣営のバスに乗りそうになった。そして皮肉にもタイミングを同じくして、チリの主将で守護神のブラーボのFCバルセロナへの移籍が報じられた。

消化試合となってしまったスペイン対オーストラリア戦では、前回大会では大活躍であったが今大会はベンチを温めていたダビド・ビジャの先制ゴールを皮切りに3-0で勝利し意地を見せた。途中で交代を告げられたビジャは涙を流し、これが代表最後の試合となった。
決勝トーナメントでブラジルと当たるのを避けるべくグループ首位が欲しいオランダとチリであったが、第3戦ではオランダが2-0でチリを下した。

中心選手ストロートマンの負傷や、DFラインに若手選手が多いこともあって、下馬評のさほど高くないオランダであったが、ファン・ハール監督の戦術や若手選手の奮闘が実り、スペインと入れ替わる形で優勝候補の一角と目されるようになる。
一方、EURO2008・2010FIFAワールドカップ・EURO2012を制し、バルセロナばりの華麗なパスサッカーで世界を席巻してきた無敵艦隊スペイン。本大会では主力選手の衰え・コンディション不良・不可解な采配などが重なり(特にブラジル出身ながらスペイン代表を選択したジエゴ・コスタがブラジルサポーターからのブーイングを浴び続けたことやそもそもチームが掲げるパスサッカーと相性が悪いのにも関わらず起用され続けたことが問題視された)、前回のイタリアに続けて前回王者のグループリーグ敗退となってしまった。この敗退により、黄金期が終焉を迎えてしまったことを否定するのは難しいだろう。
オーストラリアは3連敗と残念な成績に終わったが、オランダ戦で一時リードを奪ったりケーヒルにスーパーゴールが生まれたりと見せ場は作った。

グループC

1位:コロンビア 2位:ギリシャ 3位:コートジボワール 4位:日本

シード国コロンビアのエース・ファルカオが出場できなくなったこともあり、各国実力拮抗・展開が読めないと評されたグループ。
日本にもグループ突破のチャンスが十二分にあり、国民の期待が高まった。

我らがザックJAPANは4年前同様、初戦で本田△が先制点を挙げる幸先の良いスタート!
…だったのだが、コートジボワールが交代で母国の英雄・ドログバを投入すると空気は一変。
右サイドのクロスからのヘディングという、全く同じ形で2失点し大事な初戦を落としてしまう。
続くギリシャ戦では相手に退場者が出たアドバンテージを生かせずスコアレスドロー。ギリシャにとっては計画通りの引き分けといったところか。
コロンビア戦ではPKで先制されたのち岡崎のヘディングで追いつくも、後半に3点を失い、ここに日本代表の2014年の挑戦は終わりを告げたのであった…。
逆転負け→スコアレスドロー→1-4の大敗と、2006年ドイツW杯と似たようなパターンでの敗退だった。
欧州で活躍するメンバーも多く、前回大会以上の成績すら期待されながらの敗退。選手たちは「自分たちのサッカーができなかった」と力なく振り返ったが、この表現が一人歩きし更なる批判を生み出したようにも見える。新監督の下、新たなシステムの構築や隠れた才能のある選手の発掘がされることを期待したい。

コロンビアは10番ハメス・ロドリゲスらの活躍で3戦全勝。得点を決めた後のダンスが妙に印象に残る。日本戦の終了間際に出場した43歳のGKモンドラゴンは、ロジェ・ミラが持っていたW杯最年長出場記録を塗り替えた(ちなみに、コロンビアの主将であるDFジェペスは38歳で本大会の最年長フィールドプレーヤーであった)。
第3節・ギリシャ対コートジボワール戦は事実上の2位争いになった。ギリシャがチームの大会初ゴールで先制したのち、引き分けでもグループ突破できるコートジボワールが同点に追いついた(この際GKがゴールを喜ぶあまり芝生を食べた)が、試合終了間際にギリシャがPKを獲得、サマラスがこれを決めて劇的な勝利、ギリシャが初のグループリーグ突破を決めた。過去2大会で死の組に放り込まれてグループ敗退を喫していたコートジボワール、三度目の正直とはいかなかった。

日本に関しては世界的にはちゃんとゴミを拾うサポーターのマナーの良さの方が話題になっていただろうか。
あとは敗退に落ち込む長友を慰めるグアリンが好きになりました(2人はインテルのチームメイトである)。

グループD

1位:コスタリカ 2位:ウルグアイ 3位:イタリア 4位:イングランド

優勝経験国3チームというとてつもない死の組その2。組み分けを見て誰もが「コスタリカご愁傷様」と思ったことだろう。
イングランドは組み分け前にホジソン監督が「(高温多湿で移動距離も長く治安もあまり良くない)マナウスでは試合したくない」とフラグを立て(マナウス市長は当然この発言に不快感を示した)、結果初戦のイタリア戦をマナウスで戦うこととなった。

さて、「草刈り場」と見られていたコスタリカだが、オフサイドトラップなどを利用した組織的な守備を武器(?)に初戦のウルグアイ戦で逆転勝ち。
続くイタリア戦でも1点を守りきって勝利(イングランド戦では引き分け)、死のグループ首位通過という番狂わせを起こしてみせた。
大会前このコスタリカに3-1で勝ったチームがあるらしいゾ

サッカーの母国イングランドはイタリア戦でバロテッリの決勝ゴールにより敗れ、続くウルグアイ戦ではルーニーにW杯初ゴールが生まれたものの、前シーズンのプレミアリーグ得点王・スアレスの2発に沈み、第3節を待たずしてグループ敗退が決定した。
また、イタリア戦でスタリッジが同点ゴールを決めた際、イングランドのスタッフがゴールを喜んだ勢いで脱臼するという騒動もあった。皮肉好きなサン紙がどう反応したのかが気になる。

2位争いは第3節のウルグアイ対イタリアに委ねられた。
この試合ではイタリアのマルキージオが謎の一発レッド、続いてスアレスが(また)噛み付くも主審は噛み付かれたキエッリーニのアピールをスルー。そしてウルグアイのゴディンが頭で決めた1点が決め手となり、不運続きのアズーリは2大会連続のグループ敗退となった。問題児ながら活躍が期待されたバロテッリは前述のように初戦で決勝点を決めたが、続くコスタリカ戦では試合前に「コスタリカに勝ったらイギリス女王にほっぺたにキスしてもらいたいな」と宣ったり、相手選手に見事なシャイニングウィザードを決めてイエローを貰うなど、以降は持ち味を発揮できなかった。
第1回優勝国で前回大会4位のウルグアイは何とか2位に滑り込むが、当然スアレスには出場停止処分(10月まで)が下り、決勝トーナメントでの戦いに不安を残すこととなった。ちなみにMFガルガノのすね当てがドラゴンボール柄であったことも注目された。

グループE

1位:フランス 2位:スイス 3位:エクアドル 4位:ホンジュラス

ヨーロッパの2チームが優勢と見られたグループ。事実結果もその通りになった。

前回大会で内紛により自滅したフランスは、大会前にリベリーが負傷により出場できなくなったものの、最高のベンゼマらの活躍でホンジュラス・スイスに連勝しエクアドルに引き分け1位抜け。ホンジュラス戦では1点がオウンゴール扱いでハットトリックを逃したり、スイス戦でPKを止められたり試合終了間際のゴールが認められなかったあたりもベンゼマらしい(笑)
シード国スイスは、2戦目でフランスに2-5の大敗を喫したものの、初戦で交代策が的中しエクアドルに逆転勝ちし、3戦目はシャキリのハットトリックでホンジュラスに勝利し2位通過を果たした。エクアドル戦での決勝点は試合終了が近づいた段階で相手の決定機を防ぎそのままカウンターに入り、ベーラミが転ばされるもののすぐに起き上がってドリブルを再開、その流れで得点に繋がったという劇的なものであった。

2013年夏に南米予選でも活躍していたFWベニテスが急死するという悲劇を乗り越えて出場権を手にしたエクアドルであったが、スイス戦での逆転負けやフランス戦での主将A・バレンシアの一発退場もあり、勝ち点4を得ながらも南米勢唯一のグループ敗退チームとなってしまった。
ホンジュラスは記念すべきW杯初勝利はまたもお預けに。次回以降での奮起を期待したいところである。

グループF

1位:アルゼンチン 2位:ナイジェリア 3位:ボスニア・ヘルツェゴビナ 4位:イラン

天才メッシ率いるアルゼンチンにとってはやりやすそうなグループに。2位争いは唯一初出場のボスニアHも含め混戦が予想された。

アルゼンチンは前回大会でノーゴールに終わったメッシが4得点を挙げる活躍で3連勝し期待通りのグループ首位通過。
第2節のイラン戦では、両チーム無得点のまま後半ロスタイムに入りこのまま引き分けかと思われたところで豪快なミドルシュートを決めてみせた。
第3節のナイジェリア戦(これも前回大会でも同じグループであった)は点の取り合いの末3-2で勝利。ラベッシは「緊張しているかと思って…」とサベーラ監督に水をぶっかけた。

初出場ボスニアHは初戦でアルゼンチンに敗れたのち、続くナイジェリア戦でジェコのゴールがオフサイドと判定されるという不運に遭う。
この試合に敗れたことによりグループ敗退が決定してしまったが、イラン戦に勝利しW杯に足跡を残した。

2位争いを制したのはナイジェリア。アルゼンチン戦でGKエニェアマが試合中にメッシのほっぺたを笑顔でつつくなどやたらフレンドリーであったことも話題になった。エニェアマかわいいよエニェアマ。
イランは勝ち星を挙げられず敗退。ここまでアジア勢勝ち星ゼロという事態に…。

グループG

1位:ドイツ 2位:アメリカ 3位:ポルトガル 4位:ガーナ

前回大会でグループリーグを突破した4チームが集まったとてつもない死の組その3。優勝候補(というか最終的に優勝を果たす)ドイツは勿論、クラブで大暴れで主将も務めるクリスティアーノ・ロナウドを擁しFIFAランキング4位(当時)のポルトガルや前回ベスト8のガーナまでいる。蓋を開けてみても、各カード見ごたえのある試合展開が続いたといえよう。

ドイツ対ポルトガル戦では前回得点王のミュラーがハットトリックを挙げるなどでドイツが4-0の大勝。
ポルトガルは悪童ペペがミュラーに頭突きし一発退場したり、負傷者が続出するなど不運続きの展開となる。
また、ドイツのレーヴ監督は鼻をほじった手でCロナウドと握手を交わしていた模様。
ちなみにこの試合後、サッカー好きで知られるドイツのメルケル首相がロッカールームを訪れ、選手たちとのセルフィーに快く応じていた。
ポドルスキによると、「決勝に進出したらまた来るワ♥」と言っていたらしい。

アメリカ対ガーナ戦は過去2大会でも戦った因縁のカードで、いずれもガーナが勝利していた。
しかし本大会では試合開始早々アメリカ主将デンプシーが先制点を入れ、後半ガーナが追いつくもアメリカが勝ち越し点を挙げ三度目にしてアメリカが初勝利。デンプシーは相手選手との接触で鼻を骨折するも戦い抜き、以降の試合でもチームを牽引する。

ドイツ対ガーナ戦は前回大会でも同グループであり(結果はドイツが1-0で勝利)、ボアテング兄弟で対決する形となるこれまた因縁のカード。
ドイツが期待の若手ゲッツェのゴールで先制すると、ガーナがA・アユーと主将ギャンのゴールで逆転。
その後交代で入って間もないクローゼがコーナーからのこぼれ球を押し込みドイツが追いつく。クローゼはこの得点でロナウドのW杯通算ゴール記録に並ぶ15ゴール目を記録し、ゴール直後には輝かしき宙返り失敗を披露した。

アメリカ対ポルトガル戦はポルトガルが先制するもアメリカが2点を入れて逆転。
このまま試合終了がジリジリと近づきポルトガル敗退決定か…と思われた試合終了直前のラストプレー。
負傷の影響で本調子でなかったCロナウドのクロスからゴールが生まれ土壇場で同点になり、直後に試合終了のホイッスル。
首の皮一枚で繋がったポルトガルであったが、Cロナウドに笑顔はなかった…。

第3節。
ここまで勝ち点4同士のドイツ対アメリカ。アメリカを率いるクリンスマン監督は元ドイツ代表監督であり、レーヴ監督は当時彼の下で戦術スタッフを務めていたことから、師弟対決としても注目を集めた。
試合はミュラーのミドルシュートによりドイツが1-0で勝利したものの、後述の結果によりアメリカは2位でのグループ通過を果たし、クリンスマン監督はレーヴ監督やかつての教え子たちと笑顔で健闘を称え合った。

一方勝ち点1同士で崖っぷちのポルトガル対ガーナ。両チームにとっても大量得点での勝利がグループ突破の絶対条件であった。
しかし試合前日、ガーナ陣営に主力選手であるボアテングおよびムンタリの代表追放という事態が起こる。
試合は思わぬオウンゴールでポルトガルが先制、その後ギャンの見事なヘディングによりガーナが追いつくも、ガーナのキーパーが処理をミスしたボールをCロナウドが叩き込みポルトガルが勝ち越す。しかしドイツ戦の大敗のせいで得失点差で非常に不利な事情もあって、またもCロナウドに笑顔はなし。決定的なチャンスを決めきれず涙目な表情で座り込むCロナウドを、ガーナ選手が「まだ試合は終わってない、最後まで戦うぞ」とばかりに起こしたという場面も見られた。
そのまま2-1で試合終了。

例年グループリーグで安定したプレーを見せるドイツに続きこの激戦区を突破したアメリカは十分賞賛に値するだろう。
ポルトガルとガーナはグループリーグ敗退。要所要所で見せた輝きは激戦区に相応しいものであったが、アメリカと彼らを分けたのは負傷者や追放騒動といった予想だにしないトラブルでもあったのかもしれない。
前年のFIFAバロンドールを獲得しノリに乗っていたCロナウドは足の状態が良くなかったこともあり不本意な結果に。4年前のメッシ同様、バロンドールの呪い(大会前最後のバロンドール獲得者は優勝できない)から逃れられなかった。
また、ガーナは意外にもグループ敗退は初である。


グループH

1位:ベルギー 2位:アルジェリア 3位:ロシア 4位:韓国

若手のスターが揃うシード国ベルギーと、名将カペッロ率いる次回開催国ロシアが有利と見られていたグループ。

ベルギーは初戦でアルジェリアに逆転勝ちし、続いてロシアにも勝利して早々にグループ突破を決める。
韓国戦では主力選手を休ませた上、謎のレッドカードで10人になったもののここでも勝利した。

ロシアは少々不運であった。初戦の韓国戦ではGKアキンフェエフのファンブルにより先制を許し(結果は1-1の引き分け)、攻撃が単調だった(やたらPA外からのミドルシュートが多かった)こともありグループ突破ならず。ロシア選手がブラジルの気候に対応できなかった可能性も否めない。

ベルギーに続く2位を確保したのはアルジェリア。2戦目で韓国に4-2で勝利し、3戦目のロシアに引き分けギリシャ同様初のグループ突破である。
韓国が1勝も挙げられず敗退したことにより、アジア勢が未勝利のまま全滅したことになる。次回大会のアジア枠の行方が気になるところ。

また、試合中前述のアキンフェエフやアルジェリア選手に観客席から緑色のレーザーが当てられるという出来事があった。
このような行為は決して許されないことであり、FIFAには是非とも対策を講じてもらいたいところである。



グループリーグは前回大会同様全体的に波乱続きであった。
南米開催ということか南米勢および北中米勢の好調と、アジア勢(前述の通り全滅)およびヨーロッパ勢の不調(13チーム中7チームがグループ敗退)が目立った。



決勝トーナメント


Round of 16


ブラジル 1-(延長)- 1 チリ
(PK 3 - 2)

前回大会でも決勝トーナメント1回戦にあったカード(この時はブラジルが3-0で勝利)で、いきなり南米勢同士の対決である。
ブラジルがダビド・ルイスのゴールで先制するが、チリが敵陣でブラジルのスローインを掻っ攫うという形から同点に。
その後はチリが攻め込む展開もあったが、両者ネットを揺らすことができずRound of 16初戦からPK戦に突入。
PK戦はGKジュリオ・セザールのファインセーブもあり何とかブラジルが逃げ切った。重圧からか勝者側のネイマールも涙を流した

コロンビア 2- 0 ウルグアイ

2戦続けての南米勢同士の潰し合い。
噛み付き事件でスアレスを欠くウルグアイに対し、コロンビアが優位に試合を展開した。結果絶好調ハメスの2ゴールによりコロンビアの勝利。
特にハメスがPA手前で受けた味方からのパスを胸トラップし、そのままボレーで叩き込んだ1点目は本大会のベストゴールとして記憶されている。
(ハメス本人は日本戦で挙げたゴールの方が好きだったらしいが…)
意外にもコロンビアは初のベスト8進出である。

オランダ 2- 1 メキシコ

前半は両チーム無得点だったが後半にドス・サントスのミドルシュートが決まりメキシコ先制。
メキシコGKオチョアはこの試合でも好調でオランダの攻撃をシャットアウトし続けていたが、前回準優勝のオランダが黙ってはいなかった。
後半43分にコーナーキックから長友大好きスナイデルのミドルシュートが決まり同点。さすがのオチョアも微動だにできない弾道であった。更に後半ロスタイムにロッベンが獲得したPK(少々微妙な判定だったが…)をフンテラールが決めてあっという間に逆転。
最後の数分で試合をひっくり返したオランダがベスト8進出。メキシコはこれで6大会連続ベスト16どまりとなったが、ここまでスペクタクルなセーブを連発してきたオチョアはブラジル戦に続きマン・オブ・ザ・マッチに選出された。
ちなみに、この試合では前半と後半の途中に一度ずつ給水タイムが導入された(この試合が開催されたフォルタレザも熱帯地域に属している)。

コスタリカ 1-(延長)- 1 ギリシャ
(PK 5 - 3)

死の組でジャイアントキリングを起こしたコスタリカと、グループリーグの最後の最後で奇跡の突破を決めたギリシャという予想外の組み合わせ。
先制はコスタリカ。シュートを打った主将ルイスが味方選手の死角に入っていたらしく、GKカルネジスが動けずゴールへ。
しかし、DFドゥアルテが2枚目のイエローで退場し、コスタリカは10人での戦いを強いられ、ギリシャはここからパワープレーに入る。
そして、90分が間近に迫った段階でパパスタソプーロス(←W杯得点者で最も長い苗字らしい)が決めてギリシャ同点。
コスタリカは延長戦をGKナバスの好守などで凌ぎきり、PK戦へと縺れ込む。
ギリシャ4人目ゲガスのシュートがナバスに防がれたのに対し、コスタリカは5人全員が決め、母国初のベスト8進出をもたらした。
ベスト8には届かなかったもののW杯に足跡を残したギリシャ代表は、ボーナスの受け取りを拒否しスポーツ施設のために使うよう願い出たことも話題となった。

フランス 2- 0 ナイジェリア

前半は両チーム無得点。ナイジェリアがゴールネットを揺らすがオフサイド判定される一幕も。
後半に先制したのはフランス。コーナーからGKエニェアマが弾いた球を若手ポグバが頭で押し込んだ。ここまで好セーブとメッシとのほのぼのしたやり取りを見せていたエニェアマにもついにミスが出る。フランスは試合終了間際にも相手のオウンゴールを誘発し追加点。
前回大会の悪夢を完全に払拭する試合展開を進めたフランスがベスト8進出。ナイジェリアも得点に繋がるミス以外は健闘したといえよう。


ドイツ 2-(延長)- 1 アルジェリア

前の試合に続きヨーロッパ対アフリカという構図。初のグループリーグ突破を果たしたアルジェリアがドイツに挑んだ。
アルジェリアは1982年のスペインW杯で西ドイツに2-1で勝利しており、今回もドイツを倒すのではと期待する国民もいた。
試合はポゼッションのドイツ対カウンターのアルジェリアという構図に。ドイツはなかなかパスが通らず、幾度となくカウンターにさらされる。
が、このピンチを摘み取ったのがGK兼リベロのノイアーであった。ノイアーは躊躇なくペナルティエリア外に飛び出し、足や頭でアルジェリアの攻撃をクリアしていった。
延長戦になるとアルジェリアは足がつる選手が出るなど見るからに疲れていた。延長開始早々シュールレがヒールで決めたゴールにより遂にドイツが先制、延長後半ロスタイムにはエジルが2点目まで奪ってしまう。これで万事休すかと思いきや、アルジェリアが終了間際に1点を返した
これでドイツは9大会連続ベスト8進出。死闘を演出したアルジェリアにも賞賛の声が多く寄せられ、GKエンボリはマン・オブ・ザ・マッチに選出された。

アルゼンチン 1-(延長)- 0 スイス

シード国同士の戦いは両者決め手を欠き延長戦に突入。その延長戦でも点が入らないまま120分が経過しようとしていた。
しかし、それを目前にしてメッシのドリブル突破からパスを受けたディ・マリアが遂にゴールを挙げる。
いつものように手でハートを作るディ・マリア、失点の起点となってしまいゴールネットにもたれかかってしばらく動けないリヒトシュタイナー…その後スイスにもチャンスはあったがゴールラインを割ることができず、アルゼンチンが準々決勝に駒を進めた。
スイスのヒッツフェルト監督は本大会をもって監督業からの引退を表明していたためこれにてお役御免。お疲れ様でした。

ベルギー 2-(延長)- 1 アメリカ

Round of 16最後の一戦もまさに死闘であった。
90分の間にベルギーが30本ものシュートを浴びせるものの、アメリカGKハワードの好守に阻まれなかなか得点を挙げられない。
延長戦でベルギーは192cm100kgの体躯を誇るストライカー・ルカクを投入。疲れの色を見せ始めたアメリカに、この重戦車の如きストライカーを止める力は残っていなかった。ルカクの右サイドの突破からデ・ブルイネが遂に先制点。その後ルカク自身にもゴールが生まれ、ルカクは「愛してるよママ」とテレビカメラに熱烈なキスをした。
しかしこれで完全に終わらないのが本大会。アメリカのグリーンが1点を返し、なおもベルギーゴールに迫る。
最後はベルギーが逃げ切っての勝利。GKハワードは38本ものシュートを浴び、16本をセーブしたことからマン・オブ・ザ・マッチに選出された。





Round of 16は8試合中5試合が延長戦に縺れ込むという死闘続きの展開であった。結果、グループリーグを1位で突破した全チームがそのままベスト8に勝ち進んだ。これは1998年フランスW杯(出場国が32ヶ国に拡大)以来初のことである。
また、8試合中3試合で敗者チームのGKがマン・オブ・ザ・マッチに選出された(メキシコ、アルジェリア、アメリカ)。敗者チームからの選出自体が異例であることから、本大会がゴールキーパーの活躍が目立った大会であることを強く印象付けた。


準々決勝


ドイツ 1- 0 フランス

ここまで比較的安定した戦いを見せてきたヨーロッパ勢同士の対決。ドイツ代表内で風邪が流行したとの報道もあったが主力選手が問題なく出場した。
前半早くにフンメルスがコーナーに頭で合わせドイツ先制。その後はフランスの攻勢かはたまたドイツの守備重視か、なかなか決めきることができなかった。
ドイツGKノイアーはアルジェリア戦のような飛び出しは見せなかった代わりに(?)ファインセーブを連発。
試合終了間際、左に抜け出たベンゼマのシュートを片手で弾いた。この直後に試合終了。
これでドイツは4大会連続ベスト4進出。主将ラームがアンカーから右サイドバックに移って以来安定感が増した。

ブラジル 2- 1 コロンビア

南米チームとの対戦が続く開催国ブラジル。ここまで好調のコロンビアの挑戦を受けた。
ブラジルは前半コーナーから主将チアゴ・シウバのゴールが決まり先制。このゴールを祝福する際ネイマールがコケてるのはご愛嬌。
後半にはダビド・ルイスのフリーキックが直接決まり、センターバック2人の活躍によりリードを広げる。
その後コロンビアはハメスがPKを決めて1点返し、肩に巨大バッタを乗せつつゴールを喜んだ。ハメスは6ゴールで得点王争いの先頭に立った。
ところが試合終了間際、コロンビアDFスニガのタックルを受けたネイマールが負傷、腰椎骨折により以降の試合に出られなくなった
さらにチアゴ・シウバはコロンビアGKオスピナのゴールキックを邪魔するという謎の行動でイエロー。累積警告により準決勝の出場は不可能に。
ベスト4に進んだブラジルではあったが、次戦に大きな不安を残すこととなった。
一方コロンビアの快進撃もここまで。涙を流すハメスと彼を慰めるダビド・ルイスの姿もまた印象的であった。

アルゼンチン 1- 0 ベルギー

前半8分ディ・マリアのパスがベルギー選手に当たってゴール前のイグアインの下へ転がり、これをすかさずイグアインが決めアルゼンチン先制。
しかし、ディ・マリアの負傷交代もありベルギーが攻勢に転じ、ここまで全得点が後半25分以降に決まってるベルギーが猛攻をかける。
試合中にはアルゼンチンのサベーラ監督が決定機失敗にのけぞり倒れそうになるという一幕もあった。
最終的に両者決め手を欠きスコアは動かずアルゼンチンが逃げ切った。アルゼンチンは1990年W杯で準優勝して以来のベスト4である。

オランダ 0-(延長)- 0 コスタリカ
(PK 4 - 3)

コスタリカの組織的なDFラインとGKナバスは、ファン・ペルシやロッベンらで構成されるオランダ攻撃陣をも通さなかった。
延長戦でも決め手を欠きPK戦に突入しようかとタイミングで、オランダが奇策に出る。
キャリアで一度もPKを止めたことのない正GKシレッセンに代わり、PK戦用キーパーとでも言えようクルルを投入したのである。
いざPK戦、キッカーにファン・ペルシ、ロッベン、スナイデル、カイトと百戦錬磨のツワモノを揃えたオランダは4人全員成功。
そしてクルルは起用に応え2本のPKをストップ、ファン・ハールの策が的中したオランダがベスト4に勝ち進んだ。
ここまで快進撃を続けたコスタリカも遂に敗退。しかし強豪相手に劣らぬ戦いぶりを見せ、結果的に無敗のままブラジルを後にした。
(※PK戦で決着がついた場合は引き分け扱いになる)


グループリーグは波乱続き、Round of 16は死闘続きであったが、ベスト4の顔触れは優勝候補と目されていたチームが揃った。


準決勝


ドイツ 7- 1 ブラジル

両国のW杯での対決はこれが2度目。前回は2002年日韓大会の決勝戦であり、2-0でブラジルが優勝を掴んでいる。
ネイマールを負傷で、主将チアゴ・シウバを累積警告で欠いているとはいえ、ブラジルは団結しているように見えた。
事実、立ち上がりの約10分ほどは難敵ドイツと互角の戦いを繰り広げていたのだが…。

先制はドイツ。コーナーからミュラーが決めたこの得点は、敵味方入り乱れていたせいでダビド・ルイスがマークに向かうのが遅れてしまった、ミスというよりは事故のようなものであった。しかしこの後、ブラジルはダビド・ルイスやマルセロが攻め上がった裏のスペースを突かれ、マイコンらDF陣がドイツ選手の動きについていけず信じがたい事態が発生することになる。

前述の日韓大会決勝で涙を呑んだクローゼによりドイツに2点目が生まれる。クローゼはW杯通算16ゴールとなりロナウドの記録を抜き単独トップとなった。その後どフリーだったクロースにより3点目、直後のキックオフで自陣でボールを廻すブラジル選手にクロースが襲い掛かりあっさりパスカット、ケディラと連携し3点目の69秒後に4点目が生まれる。その後フンメルスのドリブル突破を起点にケディラが5点目を決め、ブラジルはなんと6分間で4失点を喫してしまう。
これ以上スコアが動かないまま前半終了のホイッスルが吹かれたものの、その瞬間スタジアムは大ブーイングに包まれた。

後半は決勝を見据えて省エネ気味になっている(と思われる)ドイツに対しブラジルが攻めに転じる。
しかし、点差が開いても集中力を切らさないGKノイアーの前にブラジルの攻撃はことごとく阻まれていく。
逆に交代で入ったシュールレがマークが甘いのをいいことに6点目7点目を入れ、ブラジルサポーターはドイツ選手のパス回しにオーレ、フレッジ等の選手にはボールを持つだけで容赦なくブーイングを浴びせるまでになった。
試合終了間際にはエジルが8点目を外すという情けを見せ、直後オスカルが1点を返すが焼け石に水。



7-1。



64年前のマラカナンの悲劇を払拭し、自国開催でW杯を優勝するというブラジルの悲願は、記録ずくめの大敗という最悪の形で断たれてしまった。
点差が開くにつれ、ブラジルサポーターたちは呆然とした表情になり、涙を流す女性や子供も少なくなかった。一方、ブラジルの名物サポーターがいつも応援に持ち込んでいたお手製のトロフィーを試合後ドイツ人女性に託すというほっこりするエピソードもあった。
この試合展開にはドイツ選手たちも驚いていたようで、彼らは試合終了の瞬間も決勝進出の喜びをさほど露にしなかった。

この記録的な試合は会場のミネイロン・スタジアムにちなみ"Mineiraço"(直訳すると「ミネイロンの衝撃」といった意味)、日本語では実況を担当したNHKのアナウンサーが「惨劇」と形容したことからミネイロンの惨劇と呼ばれるようになった。また日本のネット上では、試合結果でドイツ側の得点者5人の名前がスクロールしていたことから、スクロールスコアという名称もある。


アルゼンチン 0-(延長)- 0 オランダ
(PK 4 - 2)

準決勝のもう1試合は、互いにメッシやロッベンといった攻撃の核である選手にロクに仕事をさせない展開となった。
両チーム無得点のまま延長戦に突入し、オランダも今回は交代枠を使い切り点を取りに行ったが、スコアレスのまま120分が過ぎてしまった。
かくしてオランダはGKシレッセンでPKに挑むことになるが、メッシら4人のキッカーのシュートを止められず。
一方アルゼンチンGKロメロはフラールおよびスナイデルのシュートを止め、決勝進出の立役者となった。
ファン・ハール監督にとってロメロはAZ監督時代の教え子であり、皮肉にも教え子に決勝進出を阻まれる形となった。
アルゼンチンは1990年W杯で準優勝して以来の決勝進出。オランダは2大会連続の決勝進出ならず。


3位決定戦


オランダ 3- 0 ブラジル

ミネイロンの惨劇のショックから明け、チアゴ・シウバが復帰し、負傷したネイマールもユニホーム姿でベンチに登場するなど、ブラジルは良い雰囲気を取り戻しつつあるように見えた。一方のオランダは、監督や一部選手が3位決定戦の存在自体に疑問を呈しており、モチベーション面での不安があった。

試合開始から2分、波乱はすぐにやって来た。チアゴ・シウバがロッベンを倒しいきなりPKを与えてしまう。これをファン・ペルシが決めてあっという間にオランダ先制。続いて前半17分、ダビド・ルイスがクリアしたボールの先にどフリーのブリントがいた。オランダ2点目。
ブラジルの攻撃は決め手を欠き、後半ロスタイムにオランダが3点目を入れる。ゴールを決めたワイナルドゥムはマジで嬉しそう。
そしてオランダは、登録選手23人中唯一ここまで出場機会のなかったGKフォルムを投入。これによりオランダは初の登録選手全員出場を果たした。しかし、この「思い出采配」がブラジルにさらなる屈辱を与えたことは想像に難くない。

終わってみれば、3位決定戦を嫌っていた側のオランダが3位決定戦に意味を見出した試合となった。
優勝こそならなかったものの、結果的に無敗であり、23人全員出場も果たしたオランダは良い形で大会を終えた。
ファン・ハール監督はオランダ代表監督を勇退し、現在はファン・ペルシが所属しブリントも移籍したマンチェスター・ユナイテッドで指揮を執っている。

一方、またも完敗に終わってしまったブラジル。成績としてはベスト8止まりだった前回大会より上なのはあまり話題にされていない。
このようなサッカー王国の姿を見るのは例え当事者でなくても残念に思うだろう。
新監督ドゥンガの下、セレソンが今後どういった再生を見せてくれるかに期待したい。


決勝


ドイツ 1-(延長)- 0 アルゼンチン

両国のW杯における対戦成績は西ドイツ時代も含めてドイツの3勝2分け1敗。前回大会ではマラドーナ率いるアルゼンチンにドイツが4-0と大勝した。
ドイツはここまで得点者8人・17得点を挙げ、一方アルゼンチンはここまで3失点(しかも決勝トーナメントは無失点)と、「攻」のドイツ対「守」のアルゼンチンという構図と見る人もいた。

前半、クロースのクリアがイグアインに流れてノイアーと1対1になるもシュートは枠外、その後イグアインがネットを揺らすが完全なオフサイド、今度はコーナーからヘーヴェデスのヘディングがポスト直撃、後半にもメッシのシュートが枠外、延長でもドイツのクリアミスでパラシオがノイアーと1対1になるもループシュートが枠外…など、両チーム決定機を活かしきれない展開が続いた。

そんな中、優勝への扉をこじ開けたのはドイツの若手マリオ・ゲッツェであった。大会中ベンチを温める時間も多かったが、レーヴ監督から「お前がメッシより上だと世界に示してこい」、交代で下がったベテランのクローゼから「お前が決めそうな気がする」とピッチに送り出された彼は、延長後半8分、同じく途中出場のシュールレが左サイドをドリブルで駆け上がってから送ったラストパスを胸トラップしてボレー。これがGKロメロの横を通り抜けてゴールネットに突き刺さった。
交代後しばらく試合から消えかかっていたゲッツェの高い技術が、最も重要な試合で発揮されたのである。

試合終了間際にはメッシがフリーキックのチャンスを得るが、ボールはゴールの上へ。程なくしてホイッスル、ドイツが栄冠を勝ち取った
アルゼンチンは惜しくも優勝ならず。マラドーナらが1986年に栄冠を掴んで以来、メッシをもってしてもその領域に届くことはできなかった。しかし、長らく代表で結果を出せず批判されてきたこの天才が主将に就任して以来代表でも才能を開花させたこと、そして不安視されていた守備陣の奮闘―特にMFマスチェラーノの献身的なプレイも忘れてはならない。


ドイツの優勝は24年ぶり4度目、東西統一後初である。また、南米開催のW杯で初優勝したヨーロッパ勢でもある。
EURO2004でグループリーグ敗退に終わるという屈辱を味わって以来、ドイツは若手選手の育成改革が実り、前監督クリンスマンや現監督レーヴの下才能に溢れた選手が次々と陽の目を見ることになった。そのような状況で2006年W杯3位、EURO2008準優勝、2010年W杯3位、EURO2012ベスト4と上位安定ながらもタイトルにあと一歩届かない日々が続いたが、本大会では技術と走力の両方に長けた選手が揃い、テンポの速いパス回しと強固な守備で遂に栄冠を勝ち取ったのである。

来賓でもあったドイツのメルケル首相およびガウク大統領は目の前で母国の優勝を見届けられて大喜び。勝利の女神メルケルたんは選手たちをしっかりハグしたり、前述のポルトガル戦後に引き続き表彰式後のセルフィーにも快く応じておりました。
(ちなみにアルゼンチンのキルチネル大統領は体調不良によりブラジル訪問を断念していたんだとか)

ドイツ代表選手はピッチ内で恋人たちと優勝を喜び合った。というかドイツ選手の恋人がことごとく美人で羨ましすぎる爆発
あとクローゼの双子の息子がかわいい。



表彰


最優秀GK賞は文句なしにマヌエル・ノイアー。しかし今回の大会は全体的にGKが豊作であった。
一方、MVPはリオネル・メッシ。どうやらマン・オブ・ザ・マッチ最多選出という理屈があるらしいが、これに関しては否定的な意見も多い。
しかしそのような外野の議論はともかく、表彰式の間も終始落ち込んだ表情のメッシからは「MVPなんてどうでもいいんだ…俺は優勝がしたかっただけなんだ」というような彼の心情が読み取れる。

得点王はハメス・ロドリゲス(6得点)。エース・ファルカオを欠いたチームの得点源となった。ドイツのミュラーは前回大会に続き5得点を挙げたが、2大会連続得点王という初の快挙はならず。最もそんなことよりもトロフィーを掴むことが出来たという事実の方が彼にとっては重要だろう。
最優秀若手選手賞はポール・ポグバ。この賞は21歳以下の選手が対象であるため、得点王ハメス・ブラジルの星ネイマール・決勝のヒーローゲッツェ(いずれも大会開幕時点で既に22歳)らは対象外であることを付け加えておく。
FIFAフェアプレー賞を受賞したのはコロンビア。ネイマールへの一件もあり、これも否定的な意見が少なくない。





追記・修正はW杯期間中連日試合を見続けて寝不足になった方にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/