SCP-579-JP

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SCP-579-JP - (2020/03/05 (木) 21:18:56) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2016/12/30 Fri 02:11:06
更新日:2024/03/27 Wed 09:01:06
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SCP-579-JPはシェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスはEuclid。
項目名は「コロポックル」。



コロポックルとは何じゃらホイ

項目名であるコロポックルとは、アイヌの伝承に登場する小人のことである。
姿を見せることを嫌う代わりアイヌの人々に好意的だったが、ある時無理やり姿を見られたことに怒り、一族郎党全て海の向こうに去ってしまったという。


概要

初めに言っておくが、このオブジェクトは間違いなく、全てのオブジェクトの中でもトップクラスにわけのわからん代物である。どれくらいわからんかというと、SCP-2165くらいわからん。
なぜかというと、実はコイツの元記事、驚いたことに概要が存在しない。

つまり、SCP-579-JPとは何ぞや? と聞かれても答えられないのである。いや、項目名の時点で見当はついているだろうが、コロポックルである。
しかし、財団世界におけるこれはどういうものか、という質問には誰も答えられない。SCP-001ですら、真偽が入り混じっているとはいえ概要とプロトコルが存在しているが、コイツにはプロトコルしか存在しない。

というわけで、ここからはそのプロトコルについて説明する。


特別収容プロトコル

前提として述べておくが、報告書が記された時点でSCP-579-JPは絶滅・消滅しており存在していない。
これに伴い関連する記録や情報も全て破壊されている。

その上で、財団の全職員は、上記の事実を認識・記憶しておかなければならず、かつ混乱を避けるため、SCP-579-JPに関する情報の口外や記録等はいかなる内容であれ、例えそれが無根拠な推測、噂であろうとも絶対禁止とされている。
許可なく情報の所持、そして流布を行った者は、追跡、特定、拘留され、レベル4/579-JPの情報漏えい罰則を処される、という念の入れようである。

さらに、後述する虚偽の説明を流布し、職員らはそれをよく読んで理解し、記憶した上で、それが全部、虚偽の情報であることを念頭に置いておかなければならない。
これらの処置は永続されねばならず、この関係からオブジェクトそのものが既に存在しないにもかかわらず、Neutralizedクラスへの分類は絶対に行われないことになっている。

では、その虚偽の説明とは何か?
それについて述べて行こう。


虚偽の説明

SCP-579-JPは、人型の生命体である。
人間の8分の1ほどしかない大きさだが、にもかかわらず彼らは器用に手足を動かし、立って歩き、言葉を話し、文明を築いた。

正しい知識を持たない人間が見ても、戯画化された、物言わぬ不動の人形にしか見えない。そしてそういう人間は、持ち上げたSCP-579-JPが脱出しても「人形」はそこにあると思い込み、やがてそれをどこかに置いて忘れ去るか、「無くした」と判断することになるのだ。

彼らの姿や振る舞いは人間と同じに見えるものの、その本当の意味を理解することは人間の価値観では不可能である。ただし、人間との交流能力を犠牲にする事でSCP-579-JPとの深い交流が可能になる。
それにより、これまでに、以下のような影響が人間にもたらされることが確認されている。


  • SCP-579-JP-甲
SCP-579-JPの「人形」でない顔を見た人間は、人間に対する相貌失認、つまり顔を認識できない症状を発症する。
例えその正確な性質を知らなくとも、正確な絵や写真を見れば同じ結果になる。


  • SCP-579-JP-乙
SCP-579-JPの言語で会話が可能になった人間は、人間に対する言語障害に陥り、あらゆる人間の言語の再教育が不可能になる。実質的に人間との会話ができなくなるのだ。
また、SCP-579-JPを正しく知覚できるか否かにかかわらず、その文字を読んだ人間は、人間の文字に対する文字認識能力を失う。文字を読むことも出来なくなってしまうのである。


  • SCP-579-JP-丙
SCP-579-JPは現在の人類が一般的に用いる数字に、未知の数字を1つ加えて計算を行う。
要するに人間にとっての2進法はSCP-579-JPにとっての3進法、人間にとっての10進法はSCP-579-JPにとっての11進法になる、という表現が恐らくいちばん近い。
彼らの計算法を理解した人間は、人間の数学を使用できなくなる。
人間の数学に基づいた金銭の勘定、時間の計測等を行うと、必ず計算間違いをするようになる。そして身の回りの計算をSCP-579-JPの方法で行うようになるのである。
普通の人間はその計算の「結果」については整合性のあるものとして認識できるが、途中の式は理解できない。更に、その計算に使われた紙や筆記具などの道具は、人間の計算に用いる事ができなくなり、コロポックルの計算式専用になってしまうのだ。
これは精密機械も例外ではない。



かつて日本人は、特定の人間を口語のみか筆談のみでSCP-579-JPと交流させる事で、常に人間の先を行く文明を持っていた彼らの技術や知恵を手に入れていた。
言い換えれば、彼らの知恵やその恩恵は、現行人類の文化や常識を上書きする、現実改変型の認識災害でもあるのだ。そのトリガーは、「コロポックルの知識や記録の結果をある程度の規模の人間が事実として認識する」ことである。
しかし、この日本人と彼らとの関係は、次の事象をきっかけに終わることになった。

  • SCP-579-JP-丁
SCP-579-JPは、我々人類が発見して「原子」と名づけたものが、どの種類においても、SCP-579-JPが知る原子に対して、大きさ、そして質量がそれぞれ約8倍となっている事を知った。
SCP-579-JPの炭素原子が人類にとっての炭素原子と同じ大きさになるにはおよそ8の3乗(8個分の縦×横×奥行き)、要するに512個分の数量が必要になる。ならば、その時の質量は8分の1の512倍、我々の炭素原子の約64倍の質量になってしまう。

己の計算が正しければ、我々人類の身体は自重によって崩壊する事を、SCP-579-JPは知ったのだ。人類の計算式ではなく、未知の数字を加えたコロポックルの計算式では、そうなるのだ。そして、この計算結果が、コロポックルの知識が大多数の人類に広まれば、この結果が上書きされ、事実として適用される。

過去の事例から、この可能性を危惧した彼らは、この事実を知らない別の個体を通して日本人へ以下の内容を打診し、それは受諾され、実行に移されることになった。

日本中に、次のような誤情報が流布されたのだ。

  • 一般の人間には、SCP-579-JPは架空の存在であると強く信じさせる通念が与えられた。
  • SCP-579-JPを学術的に追求しようとする者達には、彼らが同じ人間の少数民族だったとする学説が、現代科学では見抜けない偽装を施した証拠品とともに提示された。
  • SCP-579-JPと交流していた人々や、財団のように異常な存在を取り扱う組織や人物には、彼らが人間に滅ぼされ、絶滅したというカバーストーリーが可能な限り伝えられた。

情報の流布は成功した。
彼らを正しく知覚してその影響を受けてしまう人間は、殆どもしくは全く見られなくなった。
「正しい知識」が無ければ彼らを正しく知覚できないという状況は、その知識が無い場合だけでなく、「正しい知識」が誤情報を追記・上書きされ、歪められた場合でも成立する。

コロポックルに関する正しい情報の中に嘘が紛れ込み、どこまでがホントウでどこまでがウソか、それが判断できなくなれば、コロポックルとその情報を正しく知覚することは出来ないのだ。

彼らは記憶の消去よりも確実かつ強固に彼らの知覚を防ぐ手段として、この情報の流布を考案し、それは期待通りの効果をもたらすことになった。

この試みは、財団が日本での活動を開始する以前に行われたものである。そして当時、情報の流布は蒐集院が行っていた。財団が蒐集院を吸収合併した際、SCP-579-JPの取り扱いもまた、財団へと引き継がれることになったのである。

とまあこういうわけで、彼ら「コロポックル」は森の奥深くや土の中等の人目のつかないところへ潜むようになった。
しかし、今も我々人類が認識しないだけで、すぐそばにいるのかもしれない。

彼らはその特性上、人間の言葉で著したSCP-579-JP-丁の理論を流布することでごく簡単に人類の数を減らして住処を広げる事ができる。が、現在のところそれは実行されておらず、理由は不明。
かつて彼らは、人類を巨大な神として崇拝していたのか、それとも常識を超えた珍獣として評価していたのか?
それは、全ての情報が収容された今は不明である。

いずれにせよ、日本人、ひいては人類は、今もSCP-579-JPに保護されているのである。




補遺

以上は全て偽りの説明であり、ここまでが一連の特別収容プロトコルである。
財団がここまでして隠蔽するSCP-579-JPとは何なのか?

その真の内容は公開されないことになっている。
なぜ、概要が明かされない? 
なぜ、記録が見られない?
なぜ、彼らの情報を知ることが出来ない?

答えは一つ。


その必要がないからである。


財団の使命は確保、収容、保護。
この報告書には、SCP-579-JPが何であるかは書かれていない。彼らが既にいないということと、現状何をするべきかについてのみ記されている。
それだけでいいのだ。

オブジェクトの存在がわかり、特別収容プロトコルも確立されている。
ならば、オブジェクトの概要や性質は、極端な話わからなくとも関係ない。

SCP-444-JPを思い出してもらえればいい。
アレは知ること自体が害となる典型である。SCP-579-JPも同じである。違うのは、存在を知ること自体は問題ないこと。
同じなのは、真の情報を知ってはならない、誰も知らねば丸く収まる、ということである。



そういう意味では、欺瞞情報とプロトコルで埋め尽くし、概要をまるっと秘匿したこの報告書はなかなか上手い作りだと言えるだろう。

しかしそれでも、どうしても本当のことが知りたいというのであれば、ヒントを。

「虚偽の説明」に、[編集済][削除済][データ抹消][データ削除]、そして黒塗りの類が一切存在しないのは、なぜか?

収容すべきオブジェクトそのものがもうないのに、なぜ特別収容プロトコルを適用し続けるのか?

嘘八百の説明だと念を押しているのに、なぜそれを覚えておくよう徹底されているのか?

なぜ、オブジェクトクラスは変更されないのか?


そして、上述の「虚偽の説明」も、「実は全て本当のことだったんだよ!」というわけではない。
説明の中には、「財団に対してもコロポックルに対するカバーストーリーが適用された」とある。
だが、コロポックル達はSCP-579-JPのアイテムナンバーを与えられ、財団日本支部の収容下にある。

つまりこの時点で、何が本当で何が虚偽なのか、まったく判断が出来ないのである。
そもそもの前提条件となる「かつてコロポックルが存在した」という事実でさえ、もしかしたら本当のSCP-579-JPを覆い隠すカバーストーリーなのかもしれない。

何が真実か?
何が虚偽か?
SCP-579-JPとは、何なのか?

答えの代わりに、一つだけ覚えておこう。



SCP-579-JPは、存在しない。



この世のどこにも、影も形も、痕跡すら残っていない。



彼らは、もういない。





しかし、Euclidのオブジェクトクラスが割り当てられている、というのは動かしようのない真実。
そこを踏まえてみた場合、コロポックルについてはわからずとも、SCP-579-JPというオブジェクトに対する財団のスタンスはわかる。
特別収容プロトコルを適用して収容を継続しており、かつ「予断を許さない」Euclidクラス認定。
この事実を裏返すと、SCP-579-JPが収容違反する可能性が健在であるという別の事実が見える。

もしもその時が来たら、財団はどうするのだろうか?


同類たち

欺瞞情報やカバーストーリーを用いるのは、もはや支部を問わず財団のお家芸だが、コロポックルと似たような「認識を利用した収容措置」が取られている、あるいは説明セクションが閉じられているオブジェクトはいくつかある。

日本がコロポックルならこちらはエルフ。
認識によって勢力が広がるため、同じナンバーのジョークオブジェクトを隠れ蓑として公開している。

財団職員を片っ端から暗殺する謎の影。
認識によって存在が変化するという特性を逆手に取り、ミーマチックエフェクトを拡散して共通認識を変更することで完封に成功。

  • SCP-001「機密解除待ち[アクセス禁止]」
SCP財団の最高機密。閲覧権限を持っている職員であっても真相がわからないよう、それらしい欺瞞情報ファイルが、ご丁寧に各国支部ごとに分けてずらりと存在。コロポックルと異なり、そもそも真相なんてものが存在するのか自体不明。

  • SCP-705-KO「収容だけは絶対に行うこと」
異様に厳重なプロトコルが敷かれたKeter実体。収容違反すると地球が滅びる。
壊れた神の教会関連と思われるが、O5により全情報がブロックされており詳細不明。


追記・修正は行われません。←この情報は虚偽です。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-579-JP - コロポックル
by soilence
http://ja.scp-wiki.net/scp-579-jp

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
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